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国土交通白書 2021

第3節 多様化を支える社会への変革の遅れ

■2 世界各国との比較

( 1 )女性活躍の遅れ

 女性活躍の重要性は既に広く認知されているが、我が国の状況はどうだろうか。世界経済フォーラム(WEF)が2021年に発表した「ジェンダーギャップ指数」は、国別の男女格差を数値化した調査であるが、我が国は世界 156 か国中120 位(前年は153か国中121 位)、主要先進7か国(G7)では最下位であった。このような結果となっているのは、政治分野の取組みの遅れと、いわゆる管理職の女性比率の低さに代表される経済分野の取組みの遅れが主な要因である。

 我が国においては、2015年に成立した女性活躍推進法等を通じて、女性就業者数や上場企業の女性役員数が増加し、民間企業の各役職段階に占める女性の割合が着実に上昇しているなど、管理職に就く女性が増える土壌が形成されてきている(図表Ⅰ-2-3-5)。しかし、諸外国と比較すると、女性人口に占める女性就業者の割合(51.8%)は大差ないものの、管理的職業従事者に占める女性の割合(13.3%)は低い水準である。また、上場企業の女性役員の割合は10.7%と、諸外国と比べて著しく低くなっている(図表Ⅰ-2-3-6)。

 女性の活躍推進は、多様な視点によってイノベーションを促進し、経済社会に活力をもたらすものであり、より一層取組を加速させることが必要である。

図表Ⅰ-2-3-5 民間企業の女性管理職比率、役員数の推移
図表Ⅰ-2-3-5 民間企業の女性管理職比率、役員数の推移

(注)左:常用労働者100人以上を雇用する企業に属する労働者のうち、雇用期間の定めがない者における役職者
令和2年調査より推計方法などの変更があったため、経年比較には留意が必要
右:調査時点は原則として各年7月31日現在。調査対象は、全上場企業。ジャスダック上場会社を含む
「役員」は、取締役、監査役、指名委員会等設置会社の代表執行役及び執行役
資料)左:各年6月時点、厚生労働省「賃金構造基本統計調査」より作成
右:東洋経済新報社「役員四季報」より作成

図表Ⅰ-2-3-6 女性管理職・役員比率の国際比較
図表Ⅰ-2-3-6 女性管理職・役員比率の国際比較

(注) 左:就業者は、日本以外の国は2019年の値。管理的職業従事者は、米国・オーストラリアは2018年、英国・シンガポール・韓国・フィリピン・マレーシアは2019年、フランス・スウェーデン・ノルウェー・ドイツは2020年の値。
資料)左:日本の数値は総務省「2020年労働力調査(基本集計)」、その他の国はILO”ILOSTAT”のより国土交通省作成。
右:OECDStat,「EMP11: Female share of seats on boards of the largest publicly listed companies」2020年データより国土交通省作成

( 2 )働き方の多様化の遅れ

 1.に示した通り、我が国において、就業構造や消費面での多様化は大きく進展しているが、以下の通り、働き方の面での多様化の進展は遅く、いまだ画一的であると言える。

(テレワーク利用率)

 野村総合研究所(NRI)によるテレワーク利用率調査結果によれば、「新型コロナ以前からテレワークをしたことがあり、感染拡大後もテレワークをした」と回答した人の割合は、中国(都市部)、スウェーデンは35%、米国は32%、英国、ドイツ、イタリアは25~22%であるのに対し、我が国は9%であり、「新型コロナ以前にテレワークをしたことがなかったが、今回初めてテレワークをした」と回答した人を含めた割合でも31%と、いずれも8 か国中最も低い。(図表Ⅰ-2-3-7)

図表Ⅰ-2-3-7 世界8か国におけるテレワーク利用率
図表Ⅰ-2-3-7 世界8か国におけるテレワーク利用率

資料) NRI「Withコロナ期における生活実態国際比較調査」(2020年7月)

 テレワークは育児や介護との両立や、決められた勤務地以外の場所でも働くことを可能にするなど、多様な働き方を実現するために極めて重要な手法である。このため、我が国における働き方は、諸外国と比較して多様ではなく、画一的と言える。

(副業・兼業)

 副業・兼業の普及は、働き方やキャリア形成の多様化につながる。また、一人が複数の仕事をこなすことや、新たな仕事へのチャレンジ、より高付加価値な仕事への移動により、一人当たりの労働生産性を向上することにもつながる。我が国でも、「働き方改革」を踏まえ、副業・兼業の普及促進が図られているが、総務省によると、我が国の2017年の副業者比率は4.0%にとどまっている。

(起業)

 起業は、経済の新陳代謝を活発化し、多様なビジネスを生み出す原動力となる。また、個人の働き方の面でも、既存の組織に属さない独自の働き方が可能となる。我が国の開業率は、2008年から2019年にかけて5%前後と、欧米諸国に比べて一貫して非常に低い水準で推移している。また、我が国の起業に対する意識は、他の国に比べて低い(図表Ⅰ-2-3-8)。

図表Ⅰ-2-3-8 開業率と起業意識の国際比較
図表Ⅰ-2-3-8 開業率と起業意識の国際比較

<開業率の国際比較>
日本:厚生労働省「雇用保険事業年報」のデータを基に中小企業庁が算出
米国:United States Census Bureau「The Business Dynamics Statistics」
英国・ドイツ・フランス:Eurostat
(注)国によって統計の性質が異なるため、単純に比較することはできない
資料)2021年版中小企業白書
<起業意識の国際比較>
1.グローバル・アントレプレナーシップ・モニター(Global Entrepreneurship Monitor:GEM)調査の結果を表示している。
2.ここでいう「周囲に起業家がいる」項目は、GEM調査の「起業活動浸透指数」(「過去2年間に、新しく事業を始めた人を知っている」と回答した割合)を表示している。
3.ここでいう「周囲に起業に有利な機会がある」項目は、GEM調査の「事業機会認識指数」(「今後6か月以内に、自分が住む地域に起業に有利なチャンスが訪れる」と回答した割合)を表示している。
4.ここでいう「起業するために必要な知識、能力、経験がある」項目は、GEM調査の「知識・能力・経験指数」(「新しいビジネスを始めるために必要な知識、能力、経験を持っている」と回答した割合)を表示している。
5.ここでいう「起業することが望ましい」項目は、GEM調査「職業選択に対する評価」(「あなたの国の多くの人たちは、新しくビジネスを始めることが望ましい職業の選択であると考えている」と回答した割合)を表示している。
6.ここでいう「起業に成功すれば社会的地位が得られる」項目は、GEM調査「起業家の社会的な地位に対する評価」(「あなたの国では、新しくビジネスを始めて成功した人は高い地位と尊敬を持つようになる」と回答した割合)を表示している。
資料)みずほ情報総研株式会社「令和2年創業・起業支援事業(起業家精神に関する調査)」より国土交通省作成