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国土交通白書 2021

第3節 多様化を支える社会への変革の遅れ

■3 コロナ禍による変化

( 1 )働き方の変化

(テレワーク利用増加)

 全国の就業者のうち、2020年4~5月時点でテレワークを利用していた人の割合は25%まで上昇し、12月には16%となっている(図表Ⅰ-2-3-9)。4~5 月の大幅な上昇は、緊急事態宣言の発出による一時的なものだったが、その後も引き続き3 月よりも高い利用率であり、ある程度テレワークが定着してきているものと思われる。また、東京圏のテレワーク利用率は、12 月時点で26%となり、全国平均と比較して10%ポイント高くなっている。

図表Ⅰ-2-3-9 全国及び東京圏の平均テレワーク利用率(2020年)
図表Ⅰ-2-3-9 全国及び東京圏の平均テレワーク利用率(2020年)

資料) 大久保敏弘・NIRA 総合研究開発機構(2021)「第3回テレワークに関する就業者実態調査報告書」

(今後のテレワーク動向)

 コロナ禍収束後も見据えた今後のテレワーク利用の方針について企業に尋ねたアンケートの結果によれば、拡大が18%、維持が53%で、拡大・維持が7割を占める結果となった(図表Ⅰ-2-3-10)。また、現状のテレワーク利用度別の回答を見ても、利用度によらず維持するという回答が最も高い。このことから、今後もテレワークの利用が拡大・維持され、テレワークによる働き方の多様化は継続すると思われる。

図表Ⅰ-2-3-10 今後のテレワーク利用方針
図表Ⅰ-2-3-10 今後のテレワーク利用方針

(注)東京都内に本社を置く上場企業に対する調査
資料)国土交通省

( 2 )住まい方、レジャー等の変化

(住まい方)

 国民意識調査において、コロナ禍前と現在の二地域居住・地方移住に対する関心の有無を尋ねたところ、関心のある人の割合は、コロナ禍前は9.2%だったのに対し、現在は12.9%とコロナ禍により関心が高まっていることが分かった。また、テレワークの利用日数別での回答結果を見てみると、テレワークをしていない人で関心がある人の割合は10.5%であるのに対し、テレワークを週に1~3日している人は20.6%、週に4日以上している人は17.1%と、テレワーク経験者の方が、二地域居住・地方移住への関心が高い(図表Ⅰ-2-3-11)。

図表Ⅰ-2-3-11 二地域居住・地方移住への関心
図表Ⅰ-2-3-11 二地域居住・地方移住への関心

資料)国土交通省「国民意識調査」

(レジャーの変化)

 また、国民意識調査において、コロナ禍前と現在のワーケーション・ブレジャーに対する関心の有無を尋ねたところ、関心のある人の割合は、コロナ禍前は8.1%だったのに対し、現在は19.1%と、約5人に1人が関心を持っていることが分かった。また、テレワークの利用日数別での回答結果を見てみると、テレワークをしていない人で関心がある人の割合は16.2%であるのに対し、テレワークを週に1~3日している人は30.9%、週に4日以上している人は23.8%と、テレワーク経験者の方が、ワーケーション・ブレジャーへの関心が高いことが分かった。このように、テレワーク普及により、働き方・住まい方等の多様化が加速すると見込まれる(図表Ⅰ-2-3-12)。

図表Ⅰ-2-3-12 ワーケーション・ブレジャーへの関心(テレワーク利用日数別)
図表Ⅰ-2-3-12 ワーケーション・ブレジャーへの関心(テレワーク利用日数別)

資料)国土交通省「国民意識調査」

( 3 )東京一極集中の傾向変化

 東京圏の転入出は、バブル崩壊後の一時期を除き、転入超過が継続している。東京一極集中は、労働力や資本の集中等により、東京、そして我が国の国際競争力を高めている一方で、過度に人や機能が集中することは、大規模自然災害が発生した場合のリダンダンシーの確保や、国土全体の適正かつ有効な利用の観点から、弊害もある。

 この東京一極集中の傾向について、新型コロナウイルスの感染拡大以降、変化が見られる。各都道府県の転入者数から転出者数を差し引いた転入超過数は、近年、東京都は他の道府県と比べ突出して多くなっており、2019年は、神奈川県や埼玉県の約3倍の82,982人となっていた。しかし、2020年は、31,125人へと大幅に縮小し、両県とほぼ同規模の転入超過数である(図表Ⅰ-2-3-13)。

図表Ⅰ-2-3-13 都道府県別転入超過数(2019年、2020年)
図表Ⅰ-2-3-13 都道府県別転入超過数(2019年、2020年)

資料)総務省「住民基本台帳人口移動報告」

 東京都の転入超過数を月別にみると、緊急事態宣言が発出された4月に前年に比べて半数以下に縮小した後、5月は、外国人を含む移動者数の集計を開始した2013年7月以降で初の転出超過となった。その後、6月に転入超過となったものの、新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が増え始めた7月に再び転出超過となり、以降6か月連続で転出超過となっている。12か月移動平均でみると、東京都の転入超過は2020年の3月まで緩やかに拡大していたが、4月以降、縮小傾向に転じている(図表Ⅰ-2-3-14)。転換期となった4月から12月までを合計すると、東京都は16,938人の転出超過となっている。

図表Ⅰ-2-3-14 東京都の転入超過数の推移(2017年1月~2020年12月)
図表Ⅰ-2-3-14 東京都の転入超過数の推移(2017年1月~2020年12月)

資料)総務省「住民基本台帳人口移動報告」

 ただし、東京都からの転出先は、転出超過数の85.5%を埼玉県、神奈川県及び千葉県の3県が占めており、東京都の近隣県が中心となっている(図表Ⅰ-2-3-15)。

図表Ⅰ-2-3-15 東京都の転入超過数、転出超過数(2019年、2020年)
図表Ⅰ-2-3-15 東京都の転入超過数、転出超過数(2019年、2020年)

資料)総務省「住民基本台帳人口移動報告」

 東京都の転出超過が続いている要因としては、テレワークの定着に伴い、通勤する必要性あるいは回数が低下していること等により、都心から近隣県の郊外への住み替えの動きが起きていることが考えられる。

 住み替えに関する調査によると、2020年9月調査では、住み替えの検討のきっかけとして「在宅勤務になった」を挙げる人が17%となっており、5月調査より9%増加している(図表Ⅰ-2-3-16)。また、新型コロナウイルス感染症拡大による住宅に求める条件の変化は、「仕事専用スペースがほしくなった」が5月調査と同様に最も多く、次いで「通信環境の良い家に住みたくなった」となっている。

図表Ⅰ-2-3-16 住み替え検討のきっかけ、住宅に求める条件
図表Ⅰ-2-3-16 住み替え検討のきっかけ、住宅に求める条件

(注1) 左図1:前回調査では「在宅勤務になった」という選択肢
右図1:前回調査では「冷暖房効率に優れた住宅に住みたくなった」という選択肢
(注2)※:今回調査から選択肢に追加した項目(前回調査では選択肢には入っていない)
(注3)左図、右図どちらも首都圏の結果を抜粋している
資料)第2回コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査/(株)リクルート調べより国土交通省作成

 また、住宅の「広さ」と住宅と駅までの「距離」の重視意向は、「部屋の広さ」を重視する意向が高まっており、コロナ禍前の2019年12月調査時に比べると11%増加している(図表Ⅰ-2-3-17)。 通勤時間の意向は2019年12月調査時と比べると、「勤務先から徒歩・自転車で15分以内」の割合が減少している。

図表Ⅰ-2-3-17 住宅の重視意向
図表Ⅰ-2-3-17 住宅の重視意向

(注)左図、右図どちらも首都圏の結果を抜粋している
資料)第2回コロナ禍を受けた『住宅購入・建築検討者』調査/(株)リクルート調べより国土交通省作成