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国土交通白書 2021

第4節 デジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れと成長の停滞

■2 DXの重要性と我が国におけるDXの現状

 人口減少・高齢化が進展する中で、生産性を向上させるには、DXによる業務の効率化、サービスの高度化などが重要である。

( 1 )我が国のデジタル競争力

 生産性を向上させるためにはDXが重要である。このため、これまで我が国においてもDXが推進されてきた。しかし、我が国におけるDXは、他の先進国と比較してまだまだ遅れている。

 スイスのビジネススクール国際経営開発研究所(IMD)が発表している世界デジタル競争力ランキングによると、我が国は、調査対象国63か国中27位、主要先進7か国中6位である(図表Ⅰ-2-4-7)。このランキングは、デジタル技術の利活用能力を知識、技術、将来への準備の3項目で評価しているが、その中の個別項目である「国際経験」、「機会と脅威」、「企業の機敏性」、「ビッグデータの活用と分析」において、我が国は63か国中63位と最下位である。以上のことから、我が国のデジタル競争力には強化の余地が残されていると言える。

図表Ⅰ-2-4-7 世界デジタル競争力ランキング
図表Ⅰ-2-4-7 世界デジタル競争力ランキング

資料)IMD「世界デジタル競争ランキング2020」より国土交通省作成

( 2 )我が国のこれまでのデジタル化

 経済産業省は、企業がDXを実現していく上での課題整理と対応策検討を行い、報告書を公開している。その中で、DXの本質は、ITシステムのみならず企業文化(固定観念)を変革し、事業環境の変化に迅速に適応し続けることであるとしている。しかし、我が国の現状は、老朽化・複雑化・ブラックボックス化した既存システム(レガシーシステム)の維持管理(ラン・ザ・ビジネス)にIT予算の約8割が割かれており、戦略的なIT投資に資金・人材が割かれていないと指摘している。我が国では、ユーザ企業がシステム開発をベンダー企業に発注するケースが多く、また汎用パッケージでもカスタマイズを好むユーザ企業が多いため、ノウハウがユーザ企業に残りづらいことが、システムのブラックボックス化の要因とされている。さらに、今後、この維持・保守コストの高騰や、IT人材の不足等による経済損失リスクも懸念されている。

( 3 )デジタルを利用した顧客サービス

 IT専門調査会社であるIDC Japanの「DX動向調査 国内と世界の比較結果」によると、我が国の企業のDXの適用業務のうち、「IT/情報システム」と「業務オペレーション」、「戦略策定」「マーケティング」で比較的高い(図表Ⅰ-2-4-8)。一方、「顧客エクスペリエンス」は、世界と比べて、15ポイント以上低い。このことから、我が国はデジタルを活用し顧客満足度を向上する商品・サービスの高度化・刷新が遅れていると言える。

図表Ⅰ-2-4-8 企業におけるDXの適用業務
図表Ⅰ-2-4-8 企業におけるDXの適用業務

資料)IDC Japan プレスリリース「デジタルトランスフォーメーション動向調査 国内と世界の比較結果を発表」(2020年12月22日)