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国土交通白書 2021

第1節 危機による変化と課題への対応

コラム 旅行に行かずに旅行に行く!?~オンライン観光の可能性~(まいまい京都様、FUJITAYA KYOTO様、阿寒バス株式会社様へお話を聞いてきました!)

 オンライン観光をご存じですか?新型コロナウイルス感染症によって、観光業は大変な打撃を受けています。しかし、ピンチをチャンスに、直接行けないなら、オンラインで観光すればいいじゃない!と様々なオンライン観光コンテンツが登場しています。コロナを乗り越える起爆剤となるか。ここでは、コロナ時代に立ち向かう3社へのインタビューを元に、オンライン観光の実態や可能性をご紹介します!

①まいまい京都

 日本、いや世界でも有数の観光都市である京都。まいまい京都では、2011年から住民が自ら京都を案内するまち歩きツアーを行っています。「まいまい」とは「うろうろする」という京ことばだそうです。ガイドさんが独自の視点で愛をもって京都を案内してくれます。

 今回コラムを執筆するにあたり、まいまい京都の以倉代表に話を伺いました。

 まいまい京都もコロナで大きな打撃を受けました。しかし、ピンチをチャンスととらえ、2020年4月よりオンライン企画を開始すると、話題になり多くの方が参加されました。7月に開催した二条城のオンラインツアーでは、参加費2,500円で約900名の参加があったそうです。

 まいまい京都では、ガイドの人柄・個性を大事にし、イベント内容の充実・コンテンツの磨き上げに力を入れてきたそうです。これがまいまい京都が人気を博している大きな理由だと思われます。これまで積み上げてきた良いコンテンツ(ガイドの人柄、施設との関係も含む)があったからこそ、オンライン観光でも多くのお客さんを集めることができました。ただし、オンライン観光では、普段は見ることができない場所を案内することで更なる付加価値を提供できた一方、機材の手配や、現地の電波状況といった苦労もあったようです。

 2020年に比べて、オンライン旅行の需要は減った(もしくは、格安のオンライン旅行が増えすぎた)印象もあり、これからはリアルの観光需要が高まると予想されるため、オンラインのコンテンツは残しつつ、これまでと同様にリアルコンテンツの充実・リアルな体験の提供をしていきたいとのことです。

 “場所ではなく人に会いに行きたい”、“現地の生活を体験したい”、“オンラインを活用して普段は見ることができない場所を見たい” など、現在では観光に対して多様なニーズがあります。多様な観光ニーズに対応するためにも、地域の観光資源・観光コンテンツの磨き上げが大切です。そうした取組が進むことで、観光業が盛り上がり、地域の活性化にも繋がるのではと思います。まいまい京都では、ノウハウのある都市観光に力を入れ、各地のコンテンツを充実させることで、観光業を盛り上げていきたいとのことでした。

まいまい京都以倉代表
まいまい京都以倉代表
オンライン観光の様子
オンライン観光の様子

資料)まいまい京都

②FUJITAYA、FUJITAYABnB Bike&Yoga

 FUJITAYAでは、オンライン宿泊を行っています。宿泊なのにオンライン??一体どういうことでしょうか。FUJITAYAを経営する株式会社Feel Japanの藤田代表にお話を伺ってきました。

 FUJITAYAではこれまでゲストハウスとして、海外からのお客さんと日本をつなぐ場所、情報を交換する場所を提供してきました。FUJITAYAのオンライン宿泊とは、ZOOMを使って、ゲストハウスとしての交流の場を提供するものです。オンライン宿泊の中では、京都を紹介する映像を流すなど、実際に旅行に来てもらうためのPRもしていますが、それ以上に、お客さん同士で話ができるように、“交流の場” を意識しているそうです。

 FUJITAYAは、インバウンドが中心でしたので、2020年3月にはかなりキャンセルが発生し、4月以降は売り上げがほぼゼロという状態になりました。しかし、そんな状態だからこそ、交流の場の価値、人や地域との繋がりの価値があるのではないか、さらにそれはオンラインで提供できるのではないかと考え、オンライン宿泊を始めました。

 FUJITAYAはこれまでも地域とのつながりを大切にしてきました。例えば、海外からの客さんと一緒に銭湯に行く、近所のローカルな居酒屋に案内する等です。海外からのお客さんは寺社仏閣だけでなく、ローカルな現地での生活を体験したいと思っている方が多いそうです。地域と連携することで、お客さんの満足度が上がるだけでなく、地域の活性化にも繋がり、さらには再訪のきっかけにもなります。コロナ禍で改めてこれを感じたそうです。

 また、FUJITAYAではワーケーションにも力を入れており、3月に親子ワーケーションイベントを開催したそうです。その際にも、地元の農家さんと共同でいちご狩り体験を行いました。大人は畑の一角に机を広げてテレワークを行い、子供たちはいちご狩りをして楽しんだようです。さらに会社の研修や新規事業創出ワーケーションなどをしてもらおうと準備しているそうです。「コロナ禍の今だからこそできること、リアル復帰に向けてやるべきことはたくさんある。人との繋がり、地域とのつながりを大事にしていきたい。」とおっしゃっていました。

FUJITAYA藤田代表
FUJITAYA藤田代表
FUJITAYAオンライン宿泊の様子
FUJITAYAオンライン宿泊の様子

資料)株式会社Feel Japan

③阿寒バス

 阿寒バスではZoomを使ったバーチャルなバスツアー「どこでもバスツアー」を提供しています。ツアーは1回90分で、事前に撮影・編集した動画とリアルタイムの配信を組み合わせた構成になっています。動画はこのツアーのために撮影したもので、景勝地で散策路を進んでいく様子や展望台からの景色など、実際に現地で観光しているかのような目線が味わえます。リアル配信では、現在活躍中のバスガイドさんが、あたかも観光バスに乗っているかのように、観光案内をしたり、歌を歌ったり、楽しいクイズを出題したりします。また、参加者には、バス型の特製段ボールに入った道東の特産品が事前に届き、それを味わいながら、バーチャルなバスツアーを楽しむことができます。

 阿寒バスでは、コロナ禍の影響で観光貸切バスの運行がほぼゼロとなり、売上げも約半分にまで落ち込み、非常に厳しい状況となりました。このような中、「コロナ収束後、実際に道東を訪れてもらうきっかけになってほしい」との期待を込めて、オンラインツアーを開始しました。オンラインツアーに関しては、まだまだ集客に課題があるものの、ツアー参加者へのアンケートからは、「実際に現地へ行ってみたいという気持ちが高まった」、「動画で訪れていた市場で実際に買い物をしたいと思った」など、高い満足度と観光意欲が高まった様子が伺えます。また、リピーターも多いそうで、ツアーには摩周湖、釧路湿原、阿寒湖の3種類のコースがありますが、中には3ツアー全てに参加されたリピーターの方もいたそうです。

 オンラインツアーでは、コロナ禍によって観光を控えている方だけでなく、足腰が弱く観光を諦めていた方、北海道から遠方の方、離れた家族と一緒に参加したい方など、様々な方が参加でき、実際のバスツアーの雰囲気を味わうことができます。団体での貸切や海外への展開、旅前の下調べといった要望もあり、阿寒バスではオンラインに対して、オンラインツアーならではの需要が一定程度あると見込んでいます。

 閑散期には仕事が一気に減るバスガイドという仕事においても、オンラインツアーで平準化できると見込んでおり、今後も継続してオンラインのコンテンツに取り組んでいきたいとおっしゃっていました。

特製バス型段ボール
特製バス型段ボール
阿寒バスのオンラインツアーの様子
阿寒バスのオンラインツアーの様子
阿寒バス 香川代表取締役とバスガイド・従業員の方々
阿寒バス 香川代表取締役とバスガイド・従業員の方々

資料)阿寒バス株式会社

 これらの事例に共通することは、それぞれのツアーの楽しさ、面白さをオンラインでも味わえるように工夫していることです。もちろんそれはリアルの観光には及ばないかもしれません。しかし、オンラインは時間的、距離的制約が少なく、手軽であるという利点があります。オンライン観光で魅力的な体験ができるのなら、オンラインの手軽さがある分、需要は多いのではないでしょうか。オンライン観光とリアル観光がお互いの需要を喚起する相乗効果も期待できます。

 オンライン観光に興味を持たれた方は、この機会にぜひ参加してみてください!そして、リアルの観光も楽しんでください!

【関連リンク】

・まいまい京都HP

https://www.maimai-kyoto.jp/

・FUJITAYA KYOTO HP

https://fujitaya-kyoto.jp/

・FUJITAYA BnB

https://fujitayabnb.jp/

・阿寒バス株式会社 HP

http://www.akanbus.co.jp/