国土交通白書 2021

コラム 3D都市モデルが新しい世界を創る―Project PLATEAU（プラトー）の取組

　国土交通省都市局では2020年度より「まちづくりのデジタルトランスフォーメーション」として、「Project PLATEAU」と銘打って、実世界（フィジカル空間）の都市を仮想的な世界（サイバー空間）に再現する3D都市モデルの整備を進めています。また、これを活用した都市計画・まちづくり、防災、都市サービス創出等の実現を目指し、推進しています。

　2020年度の事業として全国56都市の3D都市モデルの整備を完了し、開発したユースケース44件を公開しました。その中から2件、取組をご紹介します。

【2020年度実施したユースケース】

①≪防災≫立体的都市構造の把握を通じた防災対策の高度化

　近年、令和2年7月豪雨をはじめ、豪雨災害により甚大な被害がもたらされています。激甚化・頻発化する自然災害に対しては、平時から災害リスクを認識したうえで、河川氾濫時の危険箇所や避難場所についての正確な情報を提供することがなにより重要であり、各市町村において「ハザードマップ」の周知に向けた取組が進められています。

　一方で、現在のハザードマップは、2次元の地形図に洪水浸水想定区域を重ねる形で作成されており、地図に不慣れな子供などには分かりづらい場合があることから、浸水のリスク等をより視覚的にわかりやすく発信することが重要です。

　そこで今回、Project PLATEAUでは、3D都市モデルの3次元（高さ）の特性を生かして災害ハザード情報をわかりやすく表示する取組を行いました。具体的には、全国40都市程度を対象に、洪水浸水想定区域図等を3D化し3D都市モデルに重ね合わせることで、災害ハザード情報をより直感的・視覚的に理解しやすい形で表現するほか、福島県郡山市などでは、洪水浸水想定の結果と3D都市モデルの属性情報（高さ、形状、構造、階数等）を組み合わせることにより、垂直避難可能なビルを抽出・可視化するなど、3D都市モデルを用いた防災対策の高度化を試行しました。

②≪都市活動モニタリング≫カメラ、センサー等の新技術を活用した都市活動の可視化

　昨今、新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐために、人と人との距離を保つソーシャルディスタンスの確保が重要な要素となっています。Project PLATEAUでは、栃木県宇都宮市において、まちなかの固定カメラ映像を解析し、人と人が十分な距離を保てているかを判定する技術を用いて、ソーシャルディスタンシングの確保状況の可視化と統計データを蓄積する技術の検証を実施しました。この実証実験により、まちなかでの平日・休日での時間帯別の混雑状況や来街者の行動を把握することができるため、イベントの開催や都市内回遊性、感染拡大防止等の取組への活用が見込まれています。

【今後の取り組み】

　前述した3D都市モデルデータとユースケースについては、2020年度中に一定の成果を得たと考えていますが、今後はこれらの動きをさらに全国に広げていく方針です。そこで、Project PLATEAUでは情報発信の一環として、特設ウェブサイト（https://www.mlit.go.jp/plateau/）を開設し、3D都市モデルのビューアーである「PLATEAU VIEW」、各種ユースケース紹介、これまでの取組を集約した各種ドキュメント（3D都市モデルの製品仕様書・作業手順書、利活用マニュアル、活用事例集など）やソースコードなどをオープンデータ化しています。地方公共団体や民間企業をはじめとする多様なプレイヤーが3D都市モデルの整備や、これを活用したユースケース開発へ参画できることを狙いとしており、今後も機能の拡充を図っていく予定です。

　また、官民の知見を結集して3D都市モデルの発展を図るため、スマートシティ官民連携プラットフォームの下に地方公共団体や民間企業、研究者で構成する「3D都市モデルの整備・活用促進に関する検討分科会」を設置し、2021年3月24日に第1回を開催しました。今年度以降も、幅広い分野の方々と共に検討を重ねていく予定です。

　Project PLATEAUでは、今後も3D都市モデルの社会実装に向けてデータ整備の効率化・高度化を図り、より一層のユースケースを開発し、オープンデータ化することにより、それらが、官民を問わず、ひろく国民への一般利用が進められることを期待しています。