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国土交通白書 2021

第1節 危機による変化と課題への対応

コラム 人・地域・地球にやさしいサッカー観戦~ファジウォーカープロジェクト~

 サッカーや野球などのスポーツ観戦に行ったことのある方や、スタジアムの周辺にお住まいの方は、試合後の交通渋滞を目撃、もしくは巻き込まれた経験があるのではないでしょうか。また、無断駐車も見られ、社会問題となっています。これは自家用車での来場が多いことが要因です。ここでは、自家用車から、公共交通機関や徒歩・自転車での来場へ転換することで、交通問題を解決し、それだけでなく、人々の健康増進、地域の活性化、環境保全にも貢献する優れた取組を紹介します。

ファジウォーカープロジェクトのロゴマークと今回お話を伺った岡山大学の氏原先生
ファジウォーカープロジェクトのロゴマークと今回お話を伺った岡山大学の氏原先生

資料)ファジウォーカープロジェクト

 岡山県のプロサッカーチーム、ファジアーノ岡山は、試合当日には多くのサポーターが応援に駆けつけ、大変な賑わいをみせます。一方、スタジアム周辺では日常交通に観戦者の自家用車交通が加わり、大変な渋滞を引き起こし、地域の課題とされていました。Jリーグという地域が盛り上がる大切な資源にもかかわらず、他方では地域にネガティブな影響を与えているという印象を持つ方もいて、非常にもったいない状況でした。

 そこで、2016年に産官学のプロジェクトチーム“ ファジウォーカープロジェクト” が立ち上がりました。このプロジェクトでは、渋滞解消にとどまらず、地域の更なる発展を目標として、活動が行われています。

 このプロジェクトでは、「車で来るのはやめましょう」とは決して言っていません。サポーターを巻き込み、歩くことがクラブの応援になる、そうした“ ファジウォーカー” というブランディングとプロモーションがこのプロジェクトの特徴です。

 具体的なプロモーション活動としては、プロモーション動画の作成や、駅での広告、スタジアム内の電光掲示板でのPR等に加え、ワンショットTFPという取組を行っています。これは、自家用車で来場された方に直接声をかけ、自動車を利用しない来場方法を考えてもらう取組です。転換のきっかけを調査した結果、この取組がもっとも成果があったことがわかりました。

転換に最も貢献したワンショットTFPとは
転換に最も貢献したワンショットTFPとは

資料)ファジウォーカープロジェクト

 さらに、バス事業者と連携し、ファジバスとしてラッピングバスの運行やバス車内での広告、アプリでファジバスの運行情報提供などを行っています。

 2019年の調査では、自家用車来場者の11%の方が、来場手段を転換しており、これを年間21試合に換算すると、4,175台もの自動車数の削減に繋がっています。また、公共交通機関を利用する方は、自家用車の利用者に比べて、駅周辺で店舗への立ち寄る割合が1.2~1.9倍多くなることがわかっています。今後は地元商店街などファジロードへの賑わいをさらに高めていくことを考えています。

 試合当日には、岡山駅やスタジアムの周辺、商店街には、ファジアーノ岡山を応援するポスターや横断幕が多数掲げられ、まちを挙げてチームを応援していることがわかります。プロジェクトでは、こうした賑わいを更に高めることに加え、健康増進、地球環境の負荷低減なども期待されています。

 また、この取組は、サッカー1チームの取組ながら、全国のイベントでの渋滞対策にも参考となること等が評価され、第11回 EST交通環境大賞で奨励賞を受賞しています。地域の持続可能性、地球環境の保全の観点からも、こうした取組が全国で進むことが期待されます。

【関連リンク】

・ファジウォーカープロジェクトHP

http://yasashii-access.info/fw/

・第11回EST交通環境大賞受賞団体の決定について

http://www.estfukyu.jp/kotsukankyotaisho2019_02.html