
国土交通白書 2021
第1節 危機による変化と課題への対応
コラム 日本初!再生可能エネルギー100%の通勤電車
皆さんが毎日通勤通学に利用している電車が、実は二酸化炭素排出ゼロで運行していたら、少し驚きではないでしょうか。そんな驚きの取組を、東急電鉄の世田谷線が実現しています。

資料)東急電鉄株式会社
世田谷線は東京都内を運行しており、通勤通学など沿線住民の生活インフラとして利用されています。鉄道は自動車と比べて地球に優しいといわれますが、都市型鉄軌道は運行本数も多く、路線全体での二酸化炭素排出量はどうしても大きくなります。世田谷線では、2018年度のCO2排出量は約1,269tと推計されます。
世田谷線を運行する東急電鉄は、東急パワーサプライと東北電力の3社合同による取組により、水力発電および地熱発電で発電した電力の供給を受け、2019年3月末から、この再生可能エネルギー100%で発電された電力によって、世田谷線全線を運行しています。二酸化炭素排出量ゼロでの運行実現は、都市型通勤電車としては、日本初です。さらに、再生エネルギー100%であることを証明するため、全時間帯において再エネ電気の発電量が世田谷線の電力使用量を上回っていることを確認しています。(※1)また、再生可能エネルギーの多くは電力供給が不安定であることが課題ですが、本件では、水力発電と地熱発電を採用することにより、安定的な電力供給を可能としています。
この取組は、社会的インパクトの大きさや、電車という身近なインフラを通じて、再生可能エネルギーの理解と普及促進に努めたことなどが評価され、第11回EST交通環境大賞で環境大臣賞を受賞しました。
※1 「2020年4月の制度変更により、再エネ電気をはじめとした全ての非化石電源に由来する環境価値が非化石証書化されたことに伴い、世田谷線についても、2020年度より非化石証書を組み合わせた電気を採用しています」
我が国は、「2050年までに、カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現」を目指しています。そのためには、産官学が総力を挙げた取組が必要であり、世田谷線の取組をモデルケースとして、交通分野等における脱炭素の取組が広まることが期待されます。国土交通省でも、交通分野等の地球温暖化対策の取組に対し、様々な支援を行ってまいります。

資料)東急電鉄株式会社
【関連リンク】
・東急パワーサプライHP
https://www.tokyu-ps.jp/saiene/
・第11回EST交通環境大賞受賞団体の決定について
http://www.estfukyu.jp/kotsukankyotaisho2019_02.html
・国土交通省HP 鉄道分野における地球温暖化対策