国土交通白書 2021
第2節 社会資本の老朽化対策等
( 1 )社会資本の老朽化対策
我が国のインフラは、その多くが高度経済成長期以降に整備されており、今後、建設から50年以上経過する施設の割合は加速的に増加する見込みである(図表Ⅱ-2-2-1)。老朽化が進むインフラを計画的に維持管理・更新することにより、国民の安全・安心の確保や維持管理・更新に係るトータルコストの縮減・平準化等を図る必要がある。
このため、平成25年11月、政府全体の取組みとして、計画的な維持管理・更新等の方向性を示す基本的な計画として、「インフラ長寿命化基本計画」がとりまとめられた。
国土交通省では、この基本計画に基づき、国土交通省が管理・所管するインフラの維持管理・更新等を着実に推進するための中長期的な取組みの方向性を明らかにする計画として、予防保全の考え方を導入した「国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)」を他省庁に先駆けて26年5月に策定した。
この行動計画に基づき、個別施設毎の長寿命化計画(以下「個別施設計画」という。)を核として、点検・診断、修繕・更新、情報の記録・活用といったメンテナンスサイクルを構築するとともに、インフラの大部分を管理する地方公共団体への技術的・財政的支援などを実施してきた。また、将来の維持管理・更新費の推計により、損傷が軽微な段階で補修を行うことで施設を長寿命化させる「予防保全」の考え方に基づく取組みの必要性・有効性を周知するとともに、より効率的なメンテナンスを実施するための新技術の開発・導入の推進、社会情勢や地域構造の変化に応じた集約・再編等の取組の促進などを実施してきた。
これらの取組を踏まえ、令和3年5月に決定予定である第2次の「国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)」では、「予防保全」に基づくインフラメンテナンスへの本格転換による維持管理・更新等に係るトータルコストの縮減や、新技術等の普及促進によるインフラメンテナンスの高度化・効率化等を進め、インフラが持つ機能が将来にわたって適切に発揮できる、持続可能なインフラメンテナンスの実現を目的としているところである。
国土交通省では、行動計画に基づき引き続き老朽化対策について、戦略的に取り組んでいく。
( 2 )メンテナンス産業の育成・拡大
平成25年を「社会資本メンテナンス元年」として、戦略的・計画的なインフラメンテナンスの取組が着実に進められている。
社会資本メンテナンス戦略小委員会(第三期)において30年には、国土交通省所管分野における社会資本の将来の維持管理・更新費の推計を行い、将来、維持管理・更新費の増加は避けられないものの、「事後保全」から「予防保全」に転換することにより、今後30年間の累計で約3割縮減できる見込みを示した。令和2年より、地方公共団体のインフラ維持管理における民間活力活用や新技術導入の促進をテーマとして議論を行っている。さらに、来るべき大更新時代に備え、「単純更新」から「機能向上型更新」へのパラダイムシフトを目指すこととし、当面、河川機械設備を対象に、河川分科会河川機械設備小委員会において更新のあり方について具体的な検討を開始した。
また、多様な産業の技術やノウハウを活用し、メンテナンス産業の育成・活性化を図るため、産学官民が一丸となって知恵や技術を総動員するプラットフォームとして「インフラメンテナンス国民会議」が平成28年に設立されている。令和2年にはこの会員数が2,000者を突破し、3年3月末時点では2,296者に達している。あわせて、国民会議の場を活用した新技術の導入を促進するため、平成31年に「インフラメンテナンス新技術・体制等導入推進委員会」を設置し、モデル自治体において実施した新技術マッチングの現場試行の成果を元に、令和3年には新技術導入の手引き(案)を作成した。
インフラメンテナンスに係る優れた取組みや技術開発を表彰するため平成28年に創設した「インフラメンテナンス大賞」について、令和2年(第4回)から経済産業大臣賞を新たに創設し、計7省による合同開催となった。第4回では288件の応募から35件の表彰を選定し、3年1月に開催した表彰式を通じて好事例の全国展開を進めた。
さらに、2年12月11日に閣議決定された「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づき、予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けて、早期対応が必要な施設への集中的な老朽化対策の加速化を図っていくこととした。
今後は、以上の取組み等を充実させ、メンテナンス産業の育成・活性化によって、着実かつ効率的なインフラメンテナンスの実現や地域活性化を図っていく。
( 3 )新技術等の導入促進
社会インフラの維持管理における業務効率を飛躍的に高めるため、「革新的社会資本整備研究開発推進事業」等の制度を活用し、維持管理に資する革新的技術の研究開発・現場実証を促進させ、戦略的に新技術の社会実装を進める。
道路分野においては、点検支援技術性能カタログの充実等の取組を推進し、新技術を定期点検に積極的に活用することで、点検業務の効率化・高度化を図る。また、橋梁の床版やトンネルの覆工などに活用可能な新技術や新材料について、その性能確認等を行う第三者機関を選定し、新技術・新材料の導入に必要な技術基準類の整備を迅速化する。これら点検業務への新技術の活用や、床版等への新技術・新材料の活用に対し、道路メンテナンス事業補助制度において優先的に支援する。