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国土交通白書 2021

第4節 交通政策の推進

■3 MaaS等新たなモビリティサービスの推進

 MaaS注1は、ICTやAI等の技術革新やスマートフォンの急速な普及を背景に、公共交通の分野におけるサービスを大きく変える可能性がある。交通結節点の整備等のフィジカル空間の取組とも連携することで、既存の公共交通の利便性の向上や、地域や観光地における移動手段の確保・充実に資するものであり、その普及により、自らの運転だけに頼ることなく、移動しやすい環境が整備されることが期待できる。国土交通省及び経済産業省では、新たなモビリティサービスの社会実装を通じた移動課題の解決及び地域活性化を目指し、地域と企業の協働による挑戦を促すプロジェクトである「スマートモビリティチャレンジ」を令和元年度から開始し、全国各地での実証実験を支援するとともに、最新の知見の共有や地域の関係者の連携を深めることを目的に、令和2年度にはコロナ禍の影響を踏まえオンラインでのシンポジウムを開催した。

 国土交通省では「都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会」中間とりまとめ(平成31年3月)を踏まえ、令和元年度には地域特性に応じたMaaSのモデル構築を進めるための、先駆的な取組みを行う19地域を、2年度には交通以外の分野と連携し、地域課題の解決に寄与することが見込まれるモデルプロジェクトを36事業選定し、支援を行った。さらに、MaaSの普及に必要な基盤づくりとして、AIオンデマンド交通といった新型輸送サービスの導入支援や交通機関におけるキャッシュレス決済の導入支援を実施した。

 また、経済産業省においては、先駆的に新しいモビリティサービスの社会実装に取り組む地域に対して、令和元年度には、事業計画策定や効果分析等を行うため、「パイロット地域分析事業」を13地域で選定し、2年度には、事業性向上・社会的受容性向上のポイント、地域経済への影響、制度的課題等を横断的に分析するため「地域新MaaS創出推進事業」を16地域で選定し、ベストプラクティスの抽出や横断的な課題の整理等を行った。

 MaaSを提供するためには、フィジカル空間における交通結節点の整備等、多様な交通モードの接続の強化を推進するとともに、交通事業者等によるデータが円滑に連携されることが重要となる。このため、国土交通省では令和元度に「MaaS関連データの連携に関するガイドライン」(令和3年4月改訂)を策定し、データ連携に係る環境整備を推進している。

 また、交通事業者におけるデータ整備を促進させるため、バス及びフェリー・旅客船については、「標準的なデータフォーマット」を策定しており、当該フォーマットに基づいた交通関連データ等のデータ化支援を行った。また、MaaSにおいては複数の交通事業者間において、柔軟に運賃等を設定し、さらに目的地における観光・小売・医療・福祉・教育等の交通以外の幅広い分野における関係者との連携を促進することが重要であることから、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」の改正法(令和2年5月成立)に基づく、「認定新モビリティサービス事業計画」及び当該計画に基づく交通事業者の運賃設定に係る手続きをワンストップ化する特例措置や、幅広い関係者の協議・連携を促進するための「新モビリティサービス協議会(MaaS協議会)」の活用を図っていく。

 今後は、MaaSによる付加価値をさらに高めるため、モビリティと幅広い分野との連携を深め、地域課題の解決に資するMaaSのモデル構築及び横展開を推進するとともに、交通機関におけるキャッシュレス化や交通情報のデータ化等のMaaSの基盤づくりを行い、早期の全国普及を目指す。

【関連リンク】

国土交通省 日本版MaaSの推進

URL:https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/japanmaas/promotion/

図表Ⅱ-2-4-4 地域におけるMaaSプロジェクトの推進
図表Ⅱ-2-4-4 地域におけるMaaSプロジェクトの推進
  1. 注1 MasS(マース:Mobility as a Service)…スマホアプリ又はwebサービスにより、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス。新たな移動手段(AIオンデマンド交通、シェアサイクル等)や関連サービス(観光チケットの購入等)も組み合わせることが可能。