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国土交通白書 2021

第2節 地域活性化を支える施策の推進

■5 広域ブロックの自立・活性化と地域・国土づくり

( 1 )対流促進型国土形成のための国土・地域づくり

 地域の活性化及び持続的な発展を図るため、地域の知恵と工夫を引き出しつつ、総合的に施策を展開することが重要である。そのため、国土形成計画(全国計画及び広域地方計画)に基づき、対流を全国各地でダイナミックに湧き起こしイノベーションの創出を促す対流促進型国土の形成を目指し、重層的な国土構造、地域構造の形成を図りつつ地域の特性に即した施策展開を図っている。また、地域活性化のための官民連携による戦略や民間活動を支える基盤整備の推進に対する国の支援、多様な主体の協働による自立的・持続的な地域づくりを進めるための施策について取り組んでいる。

①広域的地域活性化のための基盤整備の推進

 自立的な広域ブロックの形成に向け、広域にわたる活発な人の往来又は物資の流通を通じた地域の活性化を図るため、令和2年度においては、35府県が、2~3府県ごとに協働して33の共通目標を掲げ、延べ74の府県別の広域的地域活性化基盤整備計画を作成しており、同計画に基づくハード・ソフト事業に対して、交付金を交付した。

②官民連携による地域活性化のための基盤整備推進支援事業

 官民が連携して策定した広域的な地域戦略に資する事業について、民間の意思決定のタイミングに合わせ、機を逸することなく基盤整備の構想段階から事業実施段階への円滑かつ速やかな移行を図るため、令和2年度においては、地方公共団体が行う概略設計やPPP/PFI導入可能性検討といった事業化に向けた検討に対して、24件の支援を行った。

③多様な主体の協働による地域づくりの推進

 地方部における多様な主体の協働による自立的・持続的な地域づくりを促進するため、地域づくり活動を生み育てるための多様な主体が連携した支援体制の構築を推進している。

④連携中枢都市圏等による活力ある経済・生活圏の形成

 一定規模以上の人口・経済を擁する都市圏においては、経済成長のけん引、高次都市機能の集積・強化及び生活関連機能サービスの向上の実現を目指す「連携中枢都市圏」の形成を促進している。

 対象の都市圏は、地方圏の政令指定都市・中核市(人口20万人以上)を中心とした都市圏であったが、まち・ひと・しごと創生総合戦略(2015改訂版)において、一定の条件の下、隣接する人口10万人程度以上の2つの市を中心とした都市圏(複眼型)も追加され、令和2年4月1日時点で合わせて34圏域が形成された。

( 2 )地域の拠点形成の促進等

①多様な広域ブロックの自立的発展のための拠点整備

 「多極分散型国土形成促進法」に基づく業務核都市において、引き続き、業務施設の立地や諸機能の集積の核として円滑に整備が実施されるよう、必要な協力を行っている。さらに、「筑波研究学園都市建設法」に基づき、科学技術の集積等を活かした都市の活性化等を目指し、筑波研究学園都市の建設を推進しているほか、つくばエクスプレス沿線で都市開発が進む中、研究学園都市の特性を活かした環境都市づくりに取り組んでいる。また、「関西文化学術研究都市建設促進法」に基づき、文化・学術・研究の拠点形成を目指すため、「関西文化学術研究都市の建設に関する基本方針」を踏まえ、関係省庁、地方公共団体、経済界等との連携のもと、関西文化学術研究都市の建設を推進している。

②集落地域における「小さな拠点」づくりの推進

 人口減少や高齢化の進む中山間地域等では、買物、医療等の生活サービス機能やコミュニティ機能が維持できなくなりつつある地域がある。このため、小学校区等複数の集落を包含する地域において、必要な機能や地域活動の拠点を歩いて動ける範囲に集め、周辺の集落との交通ネットワークを確保した「小さな拠点」の形成を推進している。

 具体的には、遊休施設を活用した生活サービス機能等の再編・集約について支援するとともに、関係府省とも連携して普及・啓発等の取組みを推進している。

③国会等の移転の検討

 「国会等の移転に関する法律」に基づき、国会等の移転に関連する調査や国民への情報提供等、国会における検討に必要な協力を行っている。

( 3 )所有者不明土地への対応

①所有者不明土地の利用の円滑化等に向けた取組み

 所有者不明土地が全国的に増加していることに鑑み、平成30年に制定された、所有者不明土地を地域住民のための事業に一定期間使用できる制度の創設、所有者探索の合理化等を講じる「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(以下「所有者不明土地法」という。)」の円滑な施行のため、地域福利増進事業に関するガイドライン注1の周知や各地方整備局等に設置した「所有者不明土地連携協議会」による市町村等への支援を実施した。また、地域福利増進事業等に係るモデル的な取組みについて、事業を実施しようとする者による所有者の探索、事業計画の策定、地域の合意形成等への支援を実施するとともに、支援した事例のノウハウ、他地域への普及・横展開を促進した。また、所有者不明土地法の制定と合わせて公表した、公共事業における事業認定の円滑化のための「事業認定申請の手引き」 注2について、令和元年6月に第2版を公表し、2年3月には庁舎、学校等の公共建築物について認定事例注3を取りまとめ・公表した。

②所有者不明土地の解消・発生抑制に向けた取組み

 所有者不明土地の解消・発生抑制に関しては、所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議で決定された「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」 注4に基づき、関係行政機関の緊密な連携の下で推進することとしており、令和2年に必要な制度改正を行うこととされた。

 これを受け、適正な土地の利用及び管理を確保する施策を推進するとともに、地籍調査の円滑化・迅速化等を一体的に措置するため、2年3月27日に「土地基本法等の一部を改正する法律」が成立し、

・土地基本法において、土地所有者等の土地の適正な「利用」「管理」に関する責務(登記等権利関係の明確化、境界の明確化)を明らかにし、国・地方公共団体の講ずべき施策について、所有者不明土地の発生の抑制及び解消並びに円滑な利用及び管理の確保が図られるように努めるものとする旨を規定

・土地政策全般の政府方針として閣議決定による土地基本方針を創設

・国土調査法等において、所有者探索のための固定資産課税台帳等の利用等の調査手続の見直しや、地域特性に応じた効率的調査手法の導入等を行う

等の改正が行われた。

 2年5月26日には、改正土地基本法で規定された新たな基本理念、土地所有者等の責務、基本的施策で定める内容に基づき、関係省庁が一体性を持って人口減少時代に対応した土地政策を講じることができるよう、今後講じていくべき当面の施策を示す土地基本方針が策定され、今後は、その更新を通じて、防災・減災の観点からも重要な所有者不明土地対策、管理不全土地対策等の個別施策を着実に展開していくこととされた。

 今後は、所有者不明土地法の施行から3年が経過し、見直しの時期になることに向けて、所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議で決定された「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」 注5や「所有者不明土地等問題 対策推進の工程表」 注6に基づき、

・所有者不明土地の円滑な利活用を図るための仕組みの拡充

・管理不全土地の適正管理を図るための仕組み

・低未利用土地の円滑な利活用を図る仕組み

・民法等の改正内容を踏まえた所有者不明土地等に対する行政の関与の仕組み

等を検討し、3年12月頃を目途にとりまとめ、必要となる法案の次期通常国会への提出を目指すこととしている。