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国土交通白書 2021

第2節 総合的・一体的な物流施策の推進

■2 国内における効率的・持続的な物流システムの構築のための施策

 環境への負荷の低減を図りつつ、我が国産業の競争力強化及び物流の生産性向上に資するよう、国内における効率的・持続的な物流網構築のための取組みを進めている。

図表Ⅱ-6-2-6
図表Ⅱ-6-2-6

( 1 )地域間物流の効率化

 複合一貫輸送等の推進に向け、港湾・貨物駅等の物流結節点の整備等を進めている。これまで鉄道貨物輸送力増強事業を行った施設整備を活用することで、更なる鉄道貨物輸送の効率化が期待される。このほか、北九州港等で海上輸送と他の輸送モードとの連携強化のため、複合一貫輸送ターミナルの整備等を実施している。

 また、トラック輸送の効率化に向けて、基幹的な道路ネットワークを整備する。

( 2 )都市・過疎地等の地域内物流の効率化

 「流通業務市街地の整備に関する法律」に基づき、令和2年3月末までに20都市、29箇所の流通業務市街地注4の整備が行われ(うち27箇所が稼働中)、流通業務施設の適切かつ集約的な立地により都市の流通機能の向上及び道路交通の円滑化を図っている。

 路上荷さばき駐車を削減するため、駐車場法に基づく駐車場附置義務条例に荷さばき駐車施設を位置付けるよう地方公共団体に促している。令和2年3月末現在で、88都市において、一定規模以上の商業施設等への荷さばき駐車施設の設置を義務付ける条例が適用されている。

 また、大規模建築物が物流を考慮した設計となるよう、物流を考慮した建築物の設計・運用の手引きを周知し、その活用を促進している。

 このほか、交通流対策として、渋滞ボトルネック箇所への集中的対策、交差点の立体化、開かずの踏切等の解消を図るとともに、「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づき共同輸配送の促進等のソフト施策を併せて推進している。

 さらに、過疎地等において、物流総合効率化法の枠組みを活用し、路線バスを利用した宅配便の貨客混載事業を認定するなど地域の持続可能な物流ネットワークの構築の取組みを推進している。また、29年9月の制度改正以降、過疎地域における旅客運送と貨物運送の事業の「かけもち」による荷物の集配が開始されるなど、生産性向上を可能とする取組みが進められている。

 トラックドライバー不足が深刻化する中、再配達の削減に向けては、これまで国や関係事業者等が連携し開催してきた「宅配事業とEC 事業の生産性向上連絡会」や「置き配検討会」における検討なども踏まえ、オープン型宅配ボックスや置き配などの推奨を図ってきており、今後もこうした多様な受取方法を推進する。

 特に新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、非接触・非対面による受取方法である宅配ボックスや置き配の活用などがクローズアップされている。このため、令和2 年3月に公表した「置き配の現状と実施に向けたポイント」に基づき、置き配の普及や運用の改善に努める。また、高機能型宅配ボックスの実証事業を補正で実施した。更に、接触や対面機会を極力減らしたラストワンマイル配送に係るモデル的な取組の構築・普及を推進するべく、今後、3次補正における実証事業を実施する予定である。

( 3 )高度化・総合化・効率化した物流サービス実現に向けた更なる取組み

 物流分野における労働力不足、多頻度小口輸送の進展等に対応し、物流事業の省力化及び環境負荷低減を推進するため、関係者が連携した物流の総合化・効率化に関する幅広い取組みを支援することを旨とした物流総合効率化法に基づき、共同輸配送、モーダルシフト、輸送網の集約等を内容とする合計255件(令和3年3月31日現在)の総合効率化計画を認定し、運行経費等補助や税制特例措置等の支援を行った。また、物流事業者や荷主等の連携による物量の平準化及び荷姿やデータ仕様の標準化等を推進することにより、積載効率の向上や事業者間連携の円滑化等を図ることとしている。

図表Ⅱ-6-2-7 令和3年3月末までに認定した総合効率化計画の実績と効果
図表Ⅱ-6-2-7 令和3年3月末までに認定した総合効率化計画の実績と効果

( 4 )新技術(IoT、BD、AI等)の活用による“物流革命”

 物流分野における新技術の活用は、物流の在り方を根底から覆し、革命的な変化をもたらすものである。

 小型無人機(いわゆるドローン等)は離島や山間部などの過疎地域や、都市部での荷物配送等における活用が期待されている。令和2年度は環境省と連携し、ドローン物流を3年以内に実用化することなどを要件とする「過疎地域等における無人航空機を活用した物流実用化事業」において、全国13地域の事業を採択し、ドローン物流の社会実装を推進した。

 トラックの後続無人隊列走行は、ドライバー不足の解消等、生産性向上に大きな効果が期待されている。このため、平成30年1月から、後続車両が有人の隊列走行について新東名での実証実験を開始するなど、技術開発等に取り組んでおり、令和3年2月には、新東名高速道路において、後続車無人隊列走行を実現した。

( 5 )物流分野における働き方改革

 少子高齢化や人口減少を背景として、物流分野においても、特にトラック業界、内航海運業界を中心として高齢化が進んでおり、大量退職や、生産年齢人口の減少に伴う人材確保が困難になることへの対応が引き続き必要となる。

 トラック運送事業については、平成30年12月に成立した改正貨物自動車運送事業法に基づき、令和2年4月に告示した「標準的な運賃」の浸透を図るなど各種施策に取り組むとともに、「自動車運送事業の働き方改革の実現に向けた政府行動計画」に基づき、物流の効率化、取引環境の適正化等を推進している。

 船員については、船員の働き方改革等を進めるため、使用者による労務管理責任者の選任制度の創設等を内容とする「海事産業の基盤強化のための海上運送法等の一部を改正する法律案」を今国会に提出した。

【関連リンク】

トラガール促進プロジェクト

URL:https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/

動画

高速道路におけるトラックの後続車無人隊列走行技術を実現しました[1]技術説明(再掲)

URL:https://www.youtube.com/watch?v=cdLg6QbErms

動画

高速道路におけるトラックの後続車無人隊列走行技術を実現しました[2]走行時の様子(再掲)

URL:https://www.youtube.com/watch?v=GZf19fC_DPw

  1. 注4 トラックターミナル、倉庫等の物流関連施設が集約的に立地した大規模物流拠点として、高速道路インターチェンジ周辺部等の適地に建設された市街地