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国土交通白書 2021

第2節 自然災害対策

コラム 土砂災害対策における最先端の取組み

 国土交通省では、防災・減災、国土強靭化について、デジタル化・スマート化による効率化・高度化を図るため、ICTの利活用を推進しています。以下に土砂災害対策におけるICTを活用した取組みを紹介します。

①ICTを活用した「SMART SABO」による被災地緊急調査

 「SMART SABO」とは、ICT(情報通信技術)を活用した砂防調査・管理効率化ツールです。平成26年8月の豪雨や平成30年7月西日本豪雨災害等の土砂災害の発生を契機に土砂災害発生後の緊急災害対策派遣隊砂防班(以下、「TEC-FORCE砂防班」という。)による被災地緊急調査を支援する目的で開発されたものです。スマートフォンやタブレッド等のモバイル端末を使用し、目的地への誘導、移動軌跡の取得、調査の記録及び報告書作成、災害対策本部等の拠点と現地調査状況のリアルタイムでの情報共有化を行うことで、TEC-FORCE砂防隊員の安全性や調査の迅速性の向上が図れます。今後、UAV等のICT機器の「SMART SABO」デバイス化やAIによる崩壊地面積等の自動計測等により、さらなる安全性向上と緊急調査の効率化の検討にも取り組んでいきます。これからも改良を重ねることで、毎年多発・激甚化する土砂災害発生直後の緊急調査の更なる効率化等を図り、より一層の地域住民の安全・安心の確保に寄与してまいります。

スマートフォン等のモバイル端末を活用した「SMART SABO」
スマートフォン等のモバイル端末を活用した「SMART SABO」

②地すべり災害対応におけるCIMモデルの活用

 国土交通省は土砂災害により被災した地方自治体への技術支援を実施しています。応急対策や警戒避難体制の構築などに関する助言をする際、CIMの活用を推進しています。

 令和2年7月豪雨により長崎県佐世保市で発生した大規模な地すべりに対する技術支援では、UAV空中写真からCIMモデルによって作成したバーチャルな災害現場を土木研究所の土砂災害専門家が様々な角度から事前分析し、現地入りする前から地すべりの発生原因や応急対策の検討を開始することで、現地で確認すべきポイントを絞ることができ、調査着手の前倒しによる迅速かつ効率的な技術支援が可能となりました。

 現地では、調査結果の説明や技術的な助言の際に活用したCIMモデルの「見える化」効果により、応急対策や住民説明を行う県や市の職員の理解が深まり、迅速な応急対策工事の実施や避難の際の過度な不安の解消につながりました。

図.CIMモデルによるバーチャル災害現場の再現
図.CIMモデルによるバーチャル災害現場の再現
写真.CIMモデルを活用した事前確認状況
写真.CIMモデルを活用した事前確認状況

【関連リンク】

土砂災害を防ぐ新技術 https://www.mlit.go.jp/river/sabo/sabou_singijutu.html