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国土交通白書 2021

第2節 自然災害対策

コラム 気候変動を踏まえた海岸保全対策への転換

 平成30年台風第21号は、大阪湾における第二室戸台風の観測記録を超える最高潮位を観測しました。また令和元年房総半島台風や令和元年東日本台風は広範囲の豪雨、暴風に伴う高波・高潮により甚大な被害をもたらしました。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」による第5次評価報告書(平成25年)では、気候システムの温暖化には疑う余地がなく、大気と海洋は温暖化し、雪氷の量は減少し、海面水位は上昇していること、更に、21世紀の間、世界全体で大気・海洋は昇温し続け、世界平均海面水位は上昇が続くであろうことなどが報告されています。近年の水害は、今後の気候変動に伴う高潮等の水災害の頻発化・激甚化を懸念させるものです。

 海岸分野においては、これまでも気候変動適応策について検討を進めてきたところですが、将来の気候変動影響をどのように海岸保全施設の計画・設計に反映させるかという点が課題でした。ハード・ソフトの気候変動適応策をより一層具体化するため、国土交通省は、農林水産省と共同で、「気候変動を踏まえた海岸保全のあり方検討委員会(検討会)」を設置し、海岸保全の前提となる外力の考え方や気候変動を踏まえた対策等について検討、令和2年7月に「気候変動を踏まえた海岸保全のあり方 提言(提言)」をいただきました。

 これまでの海岸保全は、既往最高潮位、又は我が国における既往最大の高潮被害を引き起こした伊勢湾台風と同等の台風が最悪経路を通った場合における潮位等に基づき対策を進めてきました。気候変動影響により、今後は現在の計画を上回る高潮や高波が来襲する頻度が増加すること等が想定されるため、提言においては海岸保全の取組においても、過去のデータに基づくものに加え、気候変動によって将来変化することが想定される現象を予測し、気候変動による影響を明示的に考慮することとされています。

海岸における気候変動による外力変化イメージ
海岸における気候変動による外力変化イメージ

■基本方針の変更ポイント

1.過去の高潮や高波等のデータに加え、気候変動影響を考慮した将来予測に基づき、海岸の防護水準を設定すること

2.海岸管理者だけでなく、関連する施設管理者や都市計画部局、背後地の地域住民と連携し、土地利用との調整、都市計画等、ハード面の対策とソフト面の対策を組み合わせた総合的な対策を行うよう努めること

3.海面上昇により侵食されるおそれがある砂浜に対して、継続的なモニタリングと、将来変化の予測に基づき対策を実施する「予測を重視した順応的砂浜管理」を推進すること

 今後、新たな基本方針を踏まえ、全国の沿岸における気候変動適応策の推進を支援していきます。

【関連リンク】

気候変動を踏まえた海岸保全のあり方検討委員会

https://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/hozen/index.html

海岸保全基本方針

https://www.mlit.go.jp/river/kaigan/main/coastplan/index.html