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国土交通白書 2022

第2節 脱炭素化による経済と環境の好循環

■2 経済と環境の好循環に向けた政府の動向

 我が国における二酸化炭素排出量削減と経済成長の両立に向けて、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定したとともに、「地域脱炭素ロードマップ」、「地球温暖化対策計画」、「エネルギー基本計画」を策定し、これらの戦略等に基づき、取組みを推進している。

図表Ⅰ-1-1-15政府全体の動きと国土交通省の取組み
図表Ⅰ-1-1-15 政府全体の動きと国土交通省の取組み

資料)国土交通省

(地球温暖化対策計画における温室効果ガス削減目標)

 現行の地球温暖化対策計画(2021年10月)は、2050年カーボンニュートラル、2030年度削減目標等の実現に向けて改定された政府の総合計画であり、目標達成に向けた部門別の道筋を示している。2030年度の削減率(2013年度比)は、家庭部門は66%、運輸部門は35%、業務その他部門は51%であり、目標達成に向けては一層の取組み強化が求められる。また、主な対策として、住宅・建築物の省エネルギー対策、産業・運輸部門のイノベーション支援、分野横断的取組みとして脱炭素先行地域での地域脱炭素の推進が位置付けられている。

図表Ⅰ-1-1-16地球温暖化対策計画における削減目標(エネルギー起源二酸化炭素排出量)
図表Ⅰ-1-1-16 地球温暖化対策計画における削減目標(エネルギー起源二酸化炭素排出量)

資料)環境省「地球温暖化対策計画(概要)」より国土交通省作成

 地球温暖化対策計画で示された「2030年度46%削減目標」は、原油換算にして、6,240万klの削減である。これを部門別にみると、家庭部門は1,208万kl(19%)、運輸部門は2,306万kl(37%)、業務その他部門は1,376万kl(22%)である。

 このうち、例えば、家庭部門におけるわたしたちの暮らしに直結する「新築住宅における省エネルギー性能の向上」及び「既存住宅の断熱改修」のみで全体の約5%(削減量344万kl)を占めており、個人の住まい方にも密接な関わりがあるといえる。

 また、運輸部門における、「次世代自動車」は全体の16%(削減量990万kl)を占めており、次世代自動車の普及促進も重要な課題であるといえる。

図表Ⅰ-1-1-17地球温暖化対策計画における2030年度46%削減目標の原油換算
図表Ⅰ-1-1-17 地球温暖化対策計画における2030年度46%削減目標の原油換算

資料)国土交通省

(2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略)

 2021年6月、政府は2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略を具体化した。気候変動への対応について、経済成長の機会と捉え、積極的に対策を行うことにより、産業構造や社会経済の変革をもたらし、経済と環境の好循環を目指すものである。具体的には、予算、税制、規制改革・標準化、民間の資金誘導など、政策ツールを総動員するとともに、グローバル市場や世界のESG投資注4を意識し、国際連携を推進することとし、自動車・蓄電池産業、住宅・建築物・次世代電力マネジメント産業、物流・人流・土木インフラ産業、洋上風力・太陽光・地熱産業、船舶産業、航空機産業等を含む14分野に計画的に取り組むこととしている。

 特に政策効果が大きく、社会実装までを見据えて長期間の継続支援が必要な領域において、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業に対して、革新的技術の研究開発から社会実装までを継続して支援するべく、2021年3月、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に2兆円の「グリーンイノベーション基金」を造成した。審議会での議論等を通じて、洋上風力、水素、燃料アンモニア、船舶分野などのプロジェクトの組成を進めている。

(国土交通省環境行動計画等)

 現行の地球温暖化対策計画の策定を受け、国土交通省では、2021年12月「国土交通省環境行動計画」を策定し、脱炭素社会の実現に向けて、2030年度までに取り組むべき国土交通行政の方向性を示している。

 また、2021年5月に改定した、第5次社会資本整備重点計画(社会資本整備審議会計画部会)や第2次交通政策基本計画(交通政策審議会計画部会)、同年6月に策定した、国土の長期展望(国土審議会計画推進部会)等においても、脱炭素化に向けた方向性を示している。

  1. 注4 ESG投資とは、投資の意思決定に環境、社会、ガバナンスの要素を取り込み、リスク管理を向上させ、持続可能で長期的なリターンをあげることを目指す投資手法をいう。