
国土交通白書 2022
第2節 脱炭素化による経済と環境の好循環
コラム グリーンボンドによる環境に優しい交通体系の整備例
(神奈川東部方面線)
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(以下、JRTT)では、鉄道ネットワークや海上輸送ネットワークなどの整備を行っている。事業実施に必要な資金調達のために2004年以降、機構債券を定期的に発行しているが、2017年、都市鉄道利便増進事業である「神奈川東部方面線」(注)の建設にあたり「グリーンボンド」を発行した。これは環境省グリーンボンドガイドラインに準拠したモデル発行事例の第一号案件である。
この事業により、鉄道連絡線の新設及び新駅の設置が実現すれば周辺住民の利便性が向上し、バスや自家用車から鉄道へ旅客がシフトすることが見込まれる。このように同路線へ旅客が転移することにより、二酸化炭素や窒素酸化物(NOx)の排出量削減といった環境改善効果が期待されるが、JRTTの推計では、約1,500tCO2/年の二酸化炭素排出量の削減を見込んでいる。これは、杉の木約170ha(東京ドーム約36個分とほぼ同等)を植樹した場合の二酸化炭素吸収量に相当する。
JRTTは2019年に厳格な環境基準を設けるCBIプログラム認証をアジアで初めて取得し、グリーン性とソーシャル性を兼ね備えた「サステナビリティボンド」を継続発行しており、本邦SDGs債市場において、先駆的な役割を担っている。

資料) 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
(注) 「神奈川東部方面線」は、相鉄・JR直通線、相鉄・東急直通線として、相鉄本線西谷駅からJR東日本東海道貨物線横浜羽沢駅付近までの連絡線(約2.7km)、JR東日本東海道貨物線横浜羽沢駅付近から東急東横線日吉駅までの連絡線(約10㎞)を新設し、この連絡線を利用し、相鉄線とJR線、相鉄線と東急線が相互直通運転を行うものであり、「グリーンボンド」による資金を活用し、2019年11月に一部が開業し、2023年3月に全面開業となる予定である。