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国土交通白書 2022

第1節 気候変動時代の暮らしを見据えた地域づくり

コラム スウェーデン、シンガポールの事例(住まい)

 諸外国においても、地域特性に応じた住まいの脱炭素化の取組みが進展している。ここでは自然エネルギーの活用に取り組むスウェーデン・マルメ、大都市でのビルの緑化に取り組むシンガポールについて紹介する。

■住宅の省エネルギー化・再生可能エネルギー利用

(スウェーデン・マルメ)

 マルメ市は、スウェーデン南西部に位置する人口約35万人の都市である。同市は、1980年代以降、造船所や他の工場などの跡地を再開発し、持続可能な低炭素地区への再生に取り組んでおり、この再生の発端となったのが、同市のウェスタンハーバー地区である。同地区は、1990年代まで造船業の影響により環境汚染の課題を抱えていたものの、現在は住宅やオフィスビルが立ち並ぶ暮らしやすい空間となっている。

 スウェーデンは、冬季の暖房に要する消費エネルギーが大きく、建物のエネルギー性能は中央政府により定められている。マルメ市は、その気候と持続可能性に関する目標の達成に向けて、政府の基準を上回る独自の建物のエネルギー性能要件を設けるといった省エネルギー対策とともに、風力など地域の自然エネルギーの活用による、再生可能エネルギーの地産地消が企図されている。具体的には、多くの建物には太陽光パネルが設置され、電力とともに熱供給が賄われており、約3,000㎡の太陽光パネルが地域熱供給ネットワークを支えている。また、ほぼ全ての住居が地域暖房を活用しており、そのエネルギーは廃棄物の焼却熱や太陽熱により賄われている。これにより、ウェスタンハーバー地区で生活する約1万人の人々は、自然エネルギーを最大限に利用した住宅で環境に配慮しつつ暮らしを行っている。今後、同市では、2030年までに市が必要とするエネルギーの100%を再生可能エネルギーで賄うことを目指している。

ウェスタンハーバー地区
ウェスタンハーバー地区

資料)copyright of the City of Malmö

■大都市での緑化

(高温多湿への対応と吸収源対策(シンガポール))

 シンガポールは、赤道に近く、高温多湿な熱帯地域にある大都市国家であり、建物からの二酸化炭素排出量が全体の20%を占めている。このため、建物の緑化は持続可能な目標の達成と気候変動への対応のために重要な戦略として位置づけられている。

 同国では国土の緑化運動が進められてきたが、建物の緑化を推進するために、建築建設庁(BCA)では、2005年にBCAグリーンマーク認証制度を開始し、熱帯気候に適応した室内環境性能やエネルギー効率等について認証を行っている。BCAによれば、2020年末時点で4,000以上の建築プロジェクトがBCAグリーンマーク基準を満たしており、基準を満たした建物の総床面積は1億2,300m2と、同国の建築ストックの総床面積の43%以上をカバーしており、快適な屋内環境と緑豊かで持続可能な建物での暮らしの実現が図られている。同国では、シンガポール・グリーンビルディング・マスタープランによって、2030年までに建物の総床面積の80%をグリーンマーク認証建物とすること等を定めており、建築物の更なる緑化を進めている。

Gardens by the Bay
Gardens by the Bay
Parkroyal Collection Pickering
Parkroyal Collection Pickering

資料)シンガポール政府観光局