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国土交通白書 2022

第2節 気候変動時代のわたしたちの暮らし

■1 脱炭素化に向けた人々の意識

 2050年カーボンニュートラルに向けて、企業活動や行政のみならず、日々の暮らしにおける脱炭素の取組みが重要である。これは、わたしたち一人ひとりの行動や意識にも関わってくることから、脱炭素に関する国民意識調査注3を行った。

(脱炭素化と生活の質に関する人々の意識)

 国民意識調査によれば、日常生活において、脱炭素に向けた行動を3人に1人が実施していると答えており注4、その理由・背景については、「一人一人の行動が重要だと思うから」が最も高く、「地球温暖化による大雨や熱帯夜の増加など悪い影響を懸念しているから」とともに半数以上の人の行動理由となっていることがわかった。また、「地球温暖化は人類の活動によるものであり、私自身も脱炭素に向けた取組みを実践しなければならない」との考え方に約6割注5の人が賛同しており、脱炭素への取組みに対して、過半数の人が義務を感じていると考えられる。また、同調査によれば、「脱炭素に向けた取組みは、暮らしを豊かにする」との考え方に賛同する人は40%、賛同しない人は40%であった一方で、「脱炭素に向けた取組みは、暮らしを不便にする」との考え方に賛同する人は37%、賛同しない人は45%であった。脱炭素に向けた取組みが個人の暮らしや生活の質に与える影響については、人々の意識が分かれていると考えられる。

 また、国際比較調査によると、気候変動対策はおおむね生活の質を向上させる機会であるとの考え方に賛同した人は多くの国で過半数を超えているが、日本では少数派にとどまり注6、異なる傾向となった。

(脱炭素化と生活の質との両立に向けて)

 脱炭素化に向けた取組みと暮らし向きや生活の質との関係については、人々の意識に差異があることがわかる。他方、脱炭素化に向けて多くの人々が長期的かつ継続的に取り組んでいくためには、日々の生活に脱炭素の視点が効果的かつ持続的に取り込まれていくことが必要である。今後、脱炭素化と同時に、二酸化炭素排出削減以外の付加価値(快適、健康、安全・安心など)が創出されることにより、生活の質の向上と活力ある地域社会の実現を図ることが重要である。

  1. 注3 国民意識調査の概要は、第Ⅰ部第2章第2節3コラム「地域の生活環境と地域住民の生活の質」参照。
  2. 注4 行動していると答えた人の属性は、29歳以下の若年層や60歳以上の高齢者層、大都市に居住する人ほど取組み割合が高くなっている。
  3. 注5 そう思う、ややそう思うと答えた人の合計は57%。
  4. 注6 World Wide Views on Climate and Energyによる調査(76か国対象、2015年)によると、気候変動対策は概ね生活の質を向上させる機会であるとの考え方に賛同した人は約66%であり、国別にみると、日本(17%)に対し、主要国ではフランス(81%)、イタリア(81%)、デンマーク(79%)、インド(75%)、カナダ(73%)、アメリカ(67%)、中国(65%)であった。