
国土交通白書 2022
第2節 総合的・一体的な物流施策の推進
大綱の2つめの柱である、「②労働力不足対策と物流構造改革の推進(担い手にやさしい物流)」については、生産年齢人口の減少や、令和6年4月に迫ったトラックドライバーへの時間外労働の上限規制の適用を踏まえ、トラックドライバーや船員の働き方改革や、労働生産性の改善に向けた革新的な取組みの推進等を図っていくこととしている。
(1)物流分野における働き方改革
少子高齢化や人口減少を背景として、物流分野においても、特にトラック業界、内航海運業界を中心として高齢化が進んでおり、大量退職や、生産年齢人口の減少に伴う人材確保が困難になることへの対応が引き続き必要となる。
トラック運送事業については、平成30年12月に成立した改正貨物自動車運送事業法に基づき、令和2年4月に告示した「標準的な運賃」の浸透を図るなど各種施策に取り組むとともに、「自動車運送事業の働き方改革の実現に向けた政府行動計画」に基づき、物流の効率化、取引環境の適正化等を推進している。
内航海運業については、令和3年5月に成立した「海事産業の基盤強化のための海上運送法等の一部を改正する法律」に基づき、労務管理責任者の選任制度の創設等により船員の労務管理の適正化を推進するとともに、オペレーターに対して船員の労働時間を考慮した適切な運航計画の作成を義務付けること等により、船員の働き方改革を推進した。
(2)高度化・総合化・効率化した物流サービス実現に向けた更なる取組み
物流分野における労働力不足、多頻度小口輸送の進展等に対応し、物流事業の省力化及び環境負荷低減を推進するため、関係者が連携した物流の総合化・効率化に関する幅広い取組みを支援することを旨とした物流総合効率化法に基づき、共同輸配送、モーダルシフト、輸送網の集約等を内容とする合計312件(令和4年3月31日現在)の総合効率化計画を認定し、運行経費等補助や税制特例措置等の支援を行った。また、物流事業者や荷主等の連携による物量の平準化及び荷姿やデータ仕様の標準化等を推進することにより、積載効率の向上や事業者間連携の円滑化等を図ることとしている。また、我が国における物流のあるべき将来像を検討するため「フィジカルインターネット実現会議」を令和3年10月から開催し、令和4年3月に、令和22年までのロードマップを策定した。

出典)林野庁HP計算式より国土交通省作成
【関連リンク】
「ホワイト物流」推進運動
URL:https://white-logistics-movement.jp/
トラガール促進プロジェクト
URL:https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/
船員の働き方改革
URL:https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_tk4_000026.html
『輝け!フネージョ★』プロジェクト
URL:https://www.mlit.go.jp/maritime/maritime_tk5_000060.html
(3)地域間物流の効率化
複合一貫輸送等の推進に向け、港湾・貨物駅等の物流結節点の整備等を進めている。これまで鉄道貨物輸送力増強事業を行った施設整備を活用することで、更なる鉄道貨物輸送の効率化が期待される。このほか、北九州港等で海上輸送と他の輸送モードとの連携強化のため、複合一貫輸送ターミナルの整備等を実施している。また、トラック輸送の効率化に向けて、基幹的な道路ネットワークを整備する。

(4)都市・過疎地等の地域内物流の効率化
「流通業務市街地の整備に関する法律」に基づき令和3年3月末までに20都市、29箇所の流通業務市街地注2の整備が行われ(うち27箇所が稼働中)、流通業務施設の適切かつ集約的な立地により都市の流通機能の向上及び道路交通の円滑化を図っている。
路上荷さばき駐車を削減するため、駐車場法に基づく駐車場附置義務条例に荷さばき駐車施設を位置付けるよう地方公共団体に促している。令和3年3月末現在で、88都市において、一定規模以上の商業施設等への荷さばき駐車施設の設置を義務付ける条例が適用されている。
また、大規模建築物が物流を考慮した設計となるよう、物流を考慮した建築物の設計・運用の手引きを周知し、その活用を促進している。
このほか、交通流対策として、渋滞ボトルネック箇所への集中的対策、交差点の立体化、開かずの踏切等の解消を図るとともに、「都市の低炭素化の促進に関する法律」に基づき共同輸配送の促進等のソフト施策を併せて推進している。
さらに、過疎地等において、物流総合効率化法の枠組みを活用し、路線バスを利用した宅配便の貨客混載事業を認定するなど地域の持続可能な物流ネットワークの構築の取組みを推進している。また、平成29年9月の制度改正以降、過疎地域における旅客運送と貨物運送の事業の「かけもち」による荷物の集配が開始されるなど、生産性向上を可能とする取組みを進めている。
トラックドライバー不足が深刻化する中、再配達の削減に向けては、これまで国や関係事業者等が連携し開催してきた「宅配事業とEC 事業の生産性向上連絡会」や「置き配検討会」における検討なども踏まえ、オープン型宅配ボックスや置き配などの推奨を図ってきており、今後もこうした多様な受取方法を推進する。
特に新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、非接触・非対面による受取方法である宅配ボックスや置き配の活用などがクローズアップされている。このため、令和2年3月に公表した「置き配の現状と実施に向けたポイント」に基づき、置き配の普及や運用の改善に努める。また、接触や対面機会を極力減らしたラストワンマイル配送に係るモデル的な取組みの構築・普及を推進するべく、令和2年度3次補正において非接触・非対面型のB to C配送モデルについて実証事業を通じた検証と、優良事例等の横展開を実施した。
小型無人機(いわゆるドローン等)は、離島や山間部等おける物流網の維持や買物における不便を解消するなど、地域課題の解決手段として期待されている。令和2年度には「過疎地域等における無人航空機を活用した物流実用化事業」を創設し、令和3年度までの2箇年において、全国30地域の事業を採択するとともに、同年6月に公表した「ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドラインVer.2.0」も活用しながらドローン物流の社会実装を推進した。
- 注2 トラックターミナル、倉庫等の物流関連施設が集約的に立地した大規模物流拠点として、高速道路インターチェンジ周辺部等の適地に建設された市街地