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国土交通白書 2023

第2節 デジタル実装の現在地と今後への期待

コラム AIを活用した空港滑走路点検の高度化・効率化(和歌山県・南紀白浜空港)

 地方自治体等の管理による地方管理空港は、資金面でも人材確保の面でも余裕のない側面もあり、安全・安心を継続的に維持するためには、より生産性が高く効率的な維持管理が重要である。

 和歌山県にある南紀白浜空港では、AIと市販のドライブレコーダー(以下、ドラレコ)を組み合わせることで航空機の安全運航に欠かせない空港滑走路の点検及び補修を実施し、予防保全を含む維持管理の効率化・高度化に取り組んでいる。

 同空港では、全長2,000m、幅員45mの滑走路を、365日、朝夕2回、職員1名が点検車を運転しながら、落下物の有無、滑走路のひび割れや損得等を目視で点検している。

 点検車にドラレコを設置し、点検時に路面の状況をドラレコに記録し、その画像から学習を重ねたAIが亀裂、滑走路のひび割れや損傷等の異常を自動検知する技術を実用化し、2021年4月から運用を行っている。

 これにより、熟練技術者のみならず、空港勤務経験が浅い職員であっても滑走路点検を行うことが可能となり、担い手確保の面で効果があった。また、予防保全の観点では、適切なタイミングで修繕工事を行うことで、滑走路の寿命を延ばすことにより相応のコスト削減が見込まれるが、AI導入により、熟練技術者でも目視で確認できない損傷進行度の定量把握・モニタリングが可能となった。

 同空港は、和歌山県より委託を受けた(株)南紀白浜エアポートが2019年より運営しており、コロナ禍で滑走路の稼働が低かった際にAIによる機械学習を重ねて本技術の実証に取り組んできた。また、同技術の横展開に向けて、他の地方空港への応用だけでなく、2022年3月より、紀南エリアの国道42号において空港リムジンバスに設置するドラレコを用いて道路管理者の目視点検をAIが支援する実証事業も行っている。今後とも、同社では、空港インフラを活用し、地方の課題解決に向けた汎用性のあるデジタル技術の実証・実装とともに、新サービスの創出に取り組んでいくこととしている。

AIを活用した空港滑走路点検の高度化・効率化

資料)(株)南紀白浜エアポート