国土交通白書 2023
第2節 デジタル実装の現在地と今後への期待
コラム 自動運転の移動支援への活用(スマートコロンバス、米国・コロンバス市)
米国運輸省は、交通・運輸網において将来的に予想される人口増加や物流コスト増大等の課題に対応するため、データ駆動型の政策策定や新技術を活用した交通・運輸システムの改善を目的としたプログラムを複数立ち上げており、統合されたスマートな交通システムを実現することにより交通・運輸網の課題解決を目指すスマートシティ・チャレンジ(Smart City Challenge)等の取組みを実施してきた。
米国オハイオ州の州都であるコロンバス市(人口約90万人の地方都市)を含むコロンバス地域にはオハイオ州立大学や交通研究センターなどが立地しており、自動運転車の研究開発に関する取組み等が行われているところ、スマートシティ・チャレンジの枠組みを活用し、2017年から2021年にかけてモビリティ分野のスマートシティ化を進める総合的な取組みであるスマートコロンバス(Smart Columbus)を実施した。
本取組みでは、人々の生活の質向上を目的として、レベル4の自動運転シャトルの実証実験が同市の市街地及び住宅地で行われた。
このうち住宅地での自動運転については、移動サービスの行き届いていないコミュニティに居住する住民の職場へのアクセス確保、都市内への商品運搬の促進等が課題となっていた中、2020年2月の約2週間、自動運転車により移動手段を提供する実証実験が行われた。具体的には、住宅、職場、育児施設、コミュニティといった地域の拠点と住民とを繋ぐバス路線ルートを設定し、走行中に問題が起こった際に備えてオペレーターが1名乗車し、ルートのうち約7割以上を自動運転モードで運行した。また、コロナ禍を契機にプロジェクトの内容が見直され、当該自動運転シャトルによるフードパントリー活動(食料品や日用品の無償配布)が行われた(2020年7月~2021年4月の期間、約3,600個(約130,000食)のフードパントリーボックスと約15,000枚のマスクを配布)。
また、市街地での自動運転については、自動運転車の運用・評価、オハイオ州等の自動運転展開に向けたガイドライン作成を目的として、2018年12月~2019年9月の期間、実証実験が行われた。具体的には、ダウンタウン地域の文化施設などの施設を繋ぐバス路線ルートを設定し、オペレーターが同乗して必要に応じて車両を制御することにより、約16,000回の乗車を提供し、約19,000マイルを走行した。
人間のオペレーターが同乗し、トラブルの際にはワイヤレスリモコンを使用して車両を制御する。
©Smart Columbus
【関連リンク】
Smart Columbus URL:https://smart.columbus.gov/