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国土交通白書 2023

第1節 国土交通省のデジタル化施策の方向性

コラム 人型ロボットによる鉄道の架線メンテナンスに向けて
(汎用人型重機、㈱人機一体ほか)

 鉄道の高所架線メンテナンスは、墜落や感電等の危険性が高い作業である。作業時間は深夜に限られ、さらに夏は暑く冬は寒い屋外での作業を強いられる過酷な職場環境のため、作業員不足が懸念されている。こうした状況の中、作業員の高所における危険作業・重作業の身体的負担を低減すること等を目的に、西日本旅客鉄道(株)(以下、JR西日本)、日本信号(株)、及び(株)人機一体は、JR西日本の所有する鉄道架線について、メンテナンス作業時の高所における点検、部材交換作業、重量物運搬、塗装・伐採作業等を人手に代わって遂行する「汎用人型重機」を共同で開発している。

 この汎用人型重機による作業現場では、高所作業車の地上付近(ブーム根元)に設けられた室内コックピット(操作機)にいるオペレータが、ブーム先端の汎用人型重機を遠隔操作し、高所作業を行う。これによって、作業員は危険な高所に昇る必要がなくなり、重量物運搬作業からも解放される。また、この汎用人型重機(作業機)と操作機との同期が円滑に行われ、作業機が受ける力・重さ・反動等の感覚が操作機を介してオペレータにフィードバックされることで、複雑な人型重機を自在に操れる直感的な操作性も重視されている。

 このような遠隔操作可能な大型の汎用人型重機について、(株)人機一体は、鉄道分野を嚆こう矢し として建設現場等の汎用施工ロボットとしても活用が拡大することにより、作業性や生産性の向上のみならず、働き方改革の観点からも、社会基盤をメンテナンスする現場作業員が、危険な作業や長時間労働などを伴う職業ではなく、強大な力を自由自在に操る高度技能者(ロボットオペレータ)へと変わることを見据えて取り組んでいる。

 同社は、将来的には、「先端ロボット工学技術を駆使した汎用人型重機が当たり前に闊歩し、社会基盤が高度に維持され、持続的成長を享受できる世界」を目指し、取り組むこととしている。

<人型ロボットの例(汎用人型重機)>
<人型ロボットの例(汎用人型重機)>
<汎用人型重機の操作機>
<汎用人型重機の操作機>

資料)JR西日本(西日本旅客鉄道(株))