
国土交通白書 2023
第1節 国土交通省のデジタル化施策の方向性
コラム 海上輸送を支える造船業のデジタル化(DX造船所、国土交通省)
四面を海に囲まれる我が国では、海上輸送が貿易量の99.5%を担っており、海運・造船をはじめとする海事産業は、我が国の国民生活や経済活動を支え、経済安全保障を支える社会インフラである。特に、造船業は、海運事業者が調達する船舶の大半を建造するとともに、高性能・高品質な船舶の安定的な供給を通して、安定的な海上輸送の確保に貢献しているほか、艦艇・巡視船の建造・修繕を通じ、我が国の安全保障を支える重要な役割を担っている。
一方で、我が国の造船業は、自動運航やカーボンニュートラルなどの新たな社会ニーズに応えつつ、諸外国との熾烈なコスト競争にも直面しており、デジタル化を通じた抜本的な生産性の向上やビジネスモデルの変革(デジタル・トランスフォーメーション)が不可欠である。国土交通省は、造船所がデジタル・トランスフォーメーションを実現するための技術開発や実証を支援している。具体的には、建造中の計画変更や手直し発生を減らすため、バーチャル空間上に船主、造船所、舶用メーカー等が集まり機器の配置などを調整できるメタバースの構築を目指すものや、設計工程における上流(基本設計)から下流(生産設計)までの3D設計情報の連携を目指すもの、運航・気象情報のビッグデータを学習し、最適な運航支援や船舶の開発設計を行うことで新たなビジネスモデルを目指すものなど、造船業のDX実現に向けた重要なテーマを幅広く支援している。今後、その成果を業界全体に普及させるとともに更に発展させて我が国造船業の国際競争力の強化を目指す。
<船舶の開発・設計・運航におけるDXのイメージ>

資料)国土交通省