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国土交通白書 2023

第1節 国土交通省のデジタル化施策の方向性

■4 物流分野のデジタル化施策

(1)現状と今後の方向性

 物流業界では、2024年度からのトラックドライバーへの時間外労働の上限規制適用を控え、担い手不足が今後更に深刻化することが懸念されるほか、カーボンニュートラルへの対応も求められており、生産性の向上が喫緊の課題である。こうした課題解決に向けて、2021年6月に閣議決定された「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」注13も踏まえつつ、物流施設における機械化・自動化やドローン物流の実用化、物流・商流データ基盤の構築などの「物流DX」や、その前提となる物流標準化をより一層強力に推進していく。

 機械化・デジタル化により物流のこれまでのあり方を変革する「物流DX」により、他産業に対する物流の優位性を高めるとともに、我が国産業の国際競争力の強化につなげることとしている。具体的には、既存のオペレーション改善・働き方改革の実現を図ることや、物流システムの規格化、倉庫や配送業務における自動化・機械化、デジタル化により、物流業務の生産性向上を図っていく。

 上述の「総合物流施策大綱」では、今後の物流が目指すべき方向性の一つとして、「物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化」を挙げている。これまでの物流のあり方を変革するに当たり、機械化・デジタル化により既存のオペレーションを改善し経験やスキルの有無だけに頼らない、ムリ・ムラ・ムダがなく円滑に流れる物流、「簡素で滑らかな物流」の実現を目指していく。

(2)今後の施策展開

①ドローン物流による輸配送の効率化に向けた取組み

 ドローンを活用する局面としては、宅配便・郵便のほか、買い物支援、医薬品配送、農林水産物輸送等が考えられ、特に過疎地域等において、非効率なトラックや船舶の輸送の代替配送手段として、ドローン物流の社会実装が少しずつ進んでいる。また、2022年12月には、ドローンの有人地帯における補助者なし目視外飛行(レベル4飛行)が可能となったことから、ドローン物流の更なる発展が期待されている。ドローン物流の社会実装をより一層推進していくためには、ドローン物流に関する課題を抽出・分析し、その解決策や持続可能な事業形態を整理することが必要であることから、2023年3月には、これまでのレベル3飛行に加えてレベル4飛行も対象に、ドローン物流サービスの導入方法や配送手段などに関する具体的な手続を整理した「ドローンを活用した荷物等配送に関するガイドラインVer.4.0」を公表した。今後、徐々に人口密度の高い地域に拡大し、より多くの機体の同時飛行が可能となることから、持続可能な事業形態としてのドローン物流の社会実装をより一層推進していく。

図表Ⅰ-2-1-10 ドローンにおける飛行レベル
図表Ⅰ-2-1-10 ドローンにおける飛行レベル

資料)内閣官房

②港湾物流等におけるデジタル化に向けた取組み

 港湾物流手続は、特定の民間事業者間や事業者グループ内での電子化は進んでいるものの、港湾物流に関わるいずれの業種においても、約5割の手続が依然として紙、電話、メール等で行われているのが現状である。結果として、情報を電子化するための再入力作業や、情報や手続状況の電話での問い合わせなど、非効率な作業が発生している。また、同様の手続であっても民間事業者毎に書類様式・項目や接続方法が異なるため、これらに個々に対応する必要が生じている。

 これらの課題を解決する手段として、民間事業者間の港湾物流手続を電子化することで業務を効率化し、港湾物流全体の生産性向上を図ることを目的としたプラットフォームであるサイバーポート注14を構築し2021年4月から運用を開始し、利用促進に取り組んでいる注15。今後、港湾物流・港湾管理・港湾インフラの3分野のデータを連携させることにより、港湾利用情報等を活用した効率的なアセットマネジメントの実現、災害発生時の早期の被災状況把握、インフラ利用可否情報の提供及び港湾工事等における利用者間調整の円滑化といった多くのシナジー効果の創出を目指す。

 また、我が国では生産年齢人口の減少による、港湾労働者不足や、大型コンテナ船の寄港増加に伴うコンテナターミナルの処理能力不足が課題となっている。これら課題の解決のため、コンテナターミナル全体のオペレーションの改善や、荷役機械の高度化、港湾労働者の安全性の向上等を目的として、港湾における技術開発を推進していく必要がある。このため、「ヒトを支援するAIターミナル」に関する取組みを深化させ、更なる生産性向上や労働環境改善に資する技術開発を推進する「港湾技術開発制度」を2023年度より創設した。

 このほか、2024年度からのトラックドライバーの時間外労働の上限規制等により、労働力不足の問題が顕在化する中、情報通信技術等を用いた内航フェリー・RORO船ターミナルの荷役効率化等を図る次世代高規格ユニットロードターミナルの形成に向けた取組みを推進している。これらの取組みを通じて、我が国港湾の生産性向上、国際競争力の強化を図っていく。

動画

【関連動画】

港の物流をもっと効率的に!サイバーポートでつながる港の未来。

URL:https://www.youtube.com/watch?v=mqlkKAJiq0M

  1. 注13 【関連リンク】総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)
    https://www.mlit.go.jp/seisakutokatsu/freight/content/001409564.pdf
  2. 注14 【関連リンク】サイバーポート① https://www.mlit.go.jp/kowan/kowan_00002.html
    【関連リンク】サイバーポート② https://www.cyber-port.net/
  3. 注15 導入実績をみると、2021年10月1日には52社であったが、2023年3月1日には399社まで導入が拡大している。
    サイバーポートを導入することで、業務時間の削減やIT投資の節減、手続の待ち時間の短縮のほか、在宅勤務の促進にもつながるなど導入効果は大きい。港湾行政手続情報等の電子化(港湾管理分野)、施設情報等の電子化(港湾インフラ分野)とあわせて、2023年度中の三分野一体運用を目指してシステムの機能改善、利用拡大を進めている。