
国土交通白書 2023
第1節 国土交通省のデジタル化施策の方向性
コラム 買い物難民への配送支援
(条件不利地域におけるドローン物流、長野県伊那市・長崎県五島市)
■長野県伊那市(アルプス山岳地)
長野県伊那市の長谷地域では小売店舗がなく、高齢者が免許返納や独居等により、買い物が困難であることが社会福祉協議会実施の調査により判明し、課題となっていた。そこで、伊那市は道の駅を拠点として、河川上空を航路とする安全な自動運転ドローンによる物流の実現に向けて2018年から実証実験を開始し2020年に国内自治体として初めて事業化した。
平日午前11時までに注文した食品や日用品を注文者宅近隣の公民館に自動運搬し、注文者の移動なく当日に配送される。陸地輸送による自動車でのルートよりショートカットが図れることで、配送に要する時間の短縮や少量配送の減少に伴う自動車や運転手稼働の効率化も実現している。2020年8月より伊那市買い物支援サービス「ゆうあいマーケット」として開始以降、目視外飛行による物流サービスを提供している。

資料)伊那市
■長崎県五島市(離島)
五島市は、2018年度から5か年計画で「ドローンi-Landプロジェクト」事業を推進している。
本プロジェクトでは、民間企業や医療業界と連携して、五島列島の住民や医療機関などを対象に、ドローンで日用品・食品や医療用医薬品を配送する実証を実施している。
2022年度に、そらいいな(株)が実証した際に使用したドローンは、固定翼機で遠距離の飛行や日用品・医薬品の配送に適している。配送方法は、パラシュート式の箱を使用し、予め設定した場所に荷物を投下した後に、自動で配送拠点まで帰還する。
ドローン配送は、海上配送に比べて、配送にかかる時間が大幅に短縮されるとともに、船の最終便が出たあとの追加配送需要にも応えることができる。
今後、同市は、広域ドローン物流網を活用した地域の生活基盤を支援する持続可能な配送サービスの実現に向けて、必要な地域連携体制の構築などに取り組んでいくこととしている。

資料)Zipline International Inc.