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国土交通白書 2023

第1節 国土交通省のデジタル化施策の方向性

■5 インフラ分野のデジタル化施策

(1)現状と今後の方向性

 国土交通省が所管するインフラ分野において、社会ニーズに対する施策展開を従来の「常識」にとらわれず柔軟に対応していくことが重要である。

 特に建設業では、就業者の高齢化が進行し、近い将来高齢者の大量離職が見込まれることから、建設業の魅力向上を図り若年層の入職促進を含めた担い手確保への取組みを一層強化するとともに、デジタル化による課題解決を図っていくことが求められる。

 陸海空のインフラ整備・管理など社会資本整備の担い手として国民の安全・安心を守るとともに、より高度で便利な行政サービスを提供すべく、関係者との連携・協調によりインフラ分野のデジタル化を推進していく。

 これまで、「インフラ分野のDXアクションプラン」を策定し取組みを進めており、今後、ネクストステージとして、本格的な挑戦に取り組んでいくこととしている。具体的には、「インフラ分野のDX」を「デジタル技術の活用でインフラまわりをスマートにし、従来の『常識』を変革」するものであると位置づけるとともに、関連する手続などいつでもどこでも気軽にアクセスでき、コミュニケーションをよりリアルに行え、現場にいなくても現場管理が可能となるよう、取り組んでいく。

 また、「インフラの作り方」の変革、「インフラの使い方」の変革、「データの活かし方」の変革を分野網羅的に、業界内外や産学官も含め、技術の横展開、シナジー効果の期待など、組織横断的に進めていくこととしている。「インフラの作り方」の変革とは、インフラ建設現場(調査・測量、設計、施工)の生産性を飛躍的に向上させるとともに、安全性を向上させ、手続等の効率化を実現することである。「インフラの使い方」の変革とは、インフラ利用申請のオンライン化に加え、デジタル技術を駆使して利用者目線でインフラの潜在的な機能を最大限に引き出すとともに、安全で持続可能なインフラ管理・運用を実現することである。「データの活かし方」の変革は、「インフラまわりのデータ」を誰にでもわかりやすい情報形式で提供するとともに、オープンに提供することで、新たな民間サービスが創出される社会を実現することを目指していく。

 国土交通省が所管するインフラは多岐にわたり、分野横断的・組織横断的な取組みを推進していくこととしており、ここでは特に、建設現場の生産性向上の取組み、次世代道路システム構築の取組み等を中心に記述する。

(2)今後の施策展開

①建設現場の生産性向上の取組み

(「i-Construction」(ICT施工))

 建設業の生産性向上は必要不可欠である中、国土交通省では、働き手の減少を上回る生産性向上を図るため、2016年度より建設現場においてICT活用等を進める「i-Construction」を推進している。

 「i-Construction」のトップランナー施策の一つであるICT施工は3次元設計データを活用することで、UAVやレーザースキャナを用いた3次元測量や自動制御されるICT建設機械等で施工の効率化を図るものである。2021年度末時点で直轄工事においては公告件数の約8割で実施されるなど普及が進んでいるが、その一方で中小建設企業への普及はまだ途上にあることから、ICTアドバイザー制度や講習・研修の実施による人材育成支援、小規模工事に適用できる基準類の作成等に取り組んでいる。今後はデジタルツイン等の最新のデジタル技術も駆使して、ICTによる作業の効率化からICTによる工事全体の効率化を目指し、ICT施工StageⅡとして更なる生産性の向上を図っていく。

図表Ⅰ-2-1-11 ICT施工StageⅡ
図表Ⅰ-2-1-11 ICT施工StageⅡ

資料)国土交通省

(建設機械施工の自動化・自律化)

 現場の生産性向上に資する技術の一つとして、建設機械施工の自動化・自律化・遠隔化の取組みも進めている。2021年度に設置した「建設機械施工の自動化・自律化協議会」及びその下部組織であるワーキンググループにおいて、行政機関や建設施工関係の有識者・業界団体等の多様な関係者の参画のもと、自動・自律・遠隔施工の安全ルールや技術開発の協調領域の検討、自動・自律・遠隔施工機械の現場実証や新たな施工方法に対応する施工管理基準の策定に向けた検討等を進めている。今後も引き続き、自動・自律・遠隔施工技術の普及に向けた取組みを実施していく。

図表Ⅰ-2-1-12 建設機械施工等の自動化・自律化技術の導入、安全ルール等の策定
図表Ⅰ-2-1-12 建設機械施工等の自動化・自律化技術の導入、安全ルール等の策定

資料)国土交通省

(BIM/CIM)

 BIM/CIM(Building/Construction Information Modeling, Management)とは、建設事業で取扱う情報をデジタル化することにより、関係者のデータ活用・共有を容易にし、建設生産・管理システムの効率化を図るものである。2023年度からすべての直轄土木業務・工事(小規模なもの等は除く)にBIM/CIMを適用することを原則化し、視覚化による効果を中心に未経験者で取組み可能な内容を義務項目に、高度な内容を推奨項目に設定し、業務等の難易度に応じた効率的な活用を目指している。今後は、より高度なデータ活用に向け解決すべき課題を、プロジェクトチーム等で検討していく。

図表Ⅰ-2-1-13 直轄土木業務・工事におけるBIM/CIM適用の原則化
図表Ⅰ-2-1-13 直轄土木業務・工事におけるBIM/CIM適用の原則化

資料)国土交通省

②道路システムのデジタル・トランスフォーメーション「xクロスロードROAD」の推進

 近年、技術者不足や厳しい財政状況などの制約がある中で、インフラの効率的な維持管理を可能とする新技術の開発及び活用が必要とされている。一方で、社会全体のデジタル化が喫緊の課題となっており、政府としてデジタル田園都市国家構想といった政策が進められているところである。こうした中で道路分野においても、道路利用サービスの質を高め、国民生活や経済活動の生産性の向上を図るため、道路の調査・計画や工事、維持管理、道路利用者の利便性向上など様々な場面におけるデジタル・トランスフォーメーションを「xROAD(クロスロード)」と名付け、取組みを推進している。

 今後、道路管理者の業務の高度化のみならず、道路の利用者に安全・安心、そして利便性を確保することを目的に、道路利用者や現場の声、民間の技術や様々な知見も取り入れつつ、「安全(Safe)で、賢く(Smart)使えて、持続可能(Sustainable)な」道路の実現に向けて取り組んでいく。

図表Ⅰ-2-1-14 xROADの主な取組み
図表Ⅰ-2-1-14 xROADの主な取組み

資料)国土交通省