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国土交通白書 2023

第2節 新しい暮らしと社会の姿

コラム 生活サービスを「共助」で育むサステナブルなまち
(香川県三豊市、ベーシックインフラ構想)

 三豊市は、人口約6万人弱であり、瀬戸内海に面する日照条件のよい香川県の市である。2006年に7つの町が対等合併し、市域が広く中心市街が存在せず、自家用車を中心とした移動に依存している。他の市町と同様に人口減少、少子高齢化や市場規模の縮小などにより、採算性が無くなったサービスが地域から撤退しており、住民生活を支えるサービスが不足し、安心で便利な暮らしが支えられなくなることが懸念されている。

 このような中、人口減少時代に即した新たなあり方として、単一のサービスを個別で考えるのではなく、デジタルを活用し、市民、行政、地域企業が連携した新たな「共助」によるサービスで暮らしを支えることとしている。

 市は、2022年4月より、「ベーシックインフラ構想」を掲げ、地域で既にサービスを提供している事業者などがアイデアを出し合い、人材・設備などをシェアすることで事業運営の効率化を図りつつ、地域住民が豊かに暮らせるサービスを提供する事業実施に取り組むことにより、生活の土台となるサービスの維持を支え、安心・便利な暮らしを支えるべく取組みを進めている。具体的には、2022年10月より、データ連携基盤の構築に取り組み、これを基盤とした交通、教育、健康、土地の有効活用などの新サービスの実証・実装に取り組んでいる。

 例えば、市では、中高生の通学や免許返納後の高齢者が利用できる日々の移動手段が少ない中、地域企業等が協力し合い、新たなまちの交通を考えるべく、2022年に複数の地域企業の出資により設立された暮らしの交通(株)がAIオンデマンド交通を運行し、サブスクリプション型のサービスを提供している。

 これにより、学生の通学など教育面や高齢者の買い物など生活面等が支えられるとともに、父母ヶ浜を中心に増大する観光客(2022年度約50万人)の移動手段としても活用され、地域の活力の面でも支えられている。

 今後、取得された乗降データなど移動ニーズの他分野への活用、また、各種サービスと交通サービスを掛け合わせた暮らし全般サービスとしてのサブスクリプション化なども視野に取り組んでいる。

 このほか、市では、例えば移動支援を行った免許返納後の高齢者の健康データを取得・分析し、地域交通が与える健康への影響を検討して施策反映に活かすなど、分野横断したデータの利活用に向けた実証事業を実施している。

 このような官民が連携した様々な取組みの実施により、2022年には、三豊市への移住者が約300人と香川県内で高松市に次いで多い水準となった。今後も、「健康、教育、脱炭素」を重点として三豊市での暮らしの高質化を図るべく、データを活用しつつ「共助」により、行政の地域課題の解決、民間サービスの創出、市民の利便性向上に向けて持続的に取り組んでいくこととしている。

<ベーシックインフラ構想により目指す効果>
<ベーシックインフラ構想により目指す効果>
<三豊市父母ヶ浜>
<三豊市父母ヶ浜>

父母ヶ浜(SNSを通じて観光スポットとなった海岸)

資料)三豊市観光交流局

【関連リンク】三豊市ベーシックインフラプロジェクト
URL:https://basicmitoyo.jp/