
国土交通白書 2023
第4節 社会資本の老朽化対策等
(1)社会資本の老朽化対策
我が国においては、高度経済成長期以降に集中的に整備されたインフラの老朽化が深刻であり、今後、建設から50年以上経過する施設の割合が加速的に進行していく。老朽化が進むインフラを計画的に維持管理・更新することにより、国民の安全・安心の確保や維持管理・更新に係るトータルコストの縮減・平準化等を図る必要がある。
このため、平成25年11月、政府全体の取組みとして、計画的な維持管理・更新等の方向性を示す基本的な計画である、「インフラ長寿命化基本計画」が取りまとめられた。
この基本計画に基づき、国土交通省が管理・所管するインフラの維持管理・更新等を着実に推進するための中長期的な取組みの方向性を明らかにする計画である「国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)」を平成26年5月に策定し、メンテナンスサイクルの核となる個別施設毎の長寿命化計画である「個別施設計画」の策定促進や、インフラの大部分を管理する地方公共団体への技術的・財政的支援などを実施してきた。
さらに、令和3年6月に策定した第2次となる「国土交通省インフラ長寿命化計画(行動計画)」に基づき、損傷が軽微な段階で補修を行う「予防保全」に基づくインフラメンテナンスへの本格転換、新技術等の普及促進によるインフラメンテナンスの生産性向上、集約・再編等によるインフラストック適正化などの取組みを推進し、インフラが持つ機能が将来にわたって適切に発揮できる、持続可能なインフラメンテナンスの実現を目指していく。
(2) 地域インフラ群再生戦略マネジメントの推進
平成25年を「社会資本メンテナンス元年」として位置づけ、メンテナンスサイクルの確立など様々な取組みを行ってきた。平成30年には、国土交通省所管分野における社会資本の将来の維持管理・更新費の推計を行い、将来、維持管理・更新費の増加は避けられないものの、「事後保全」から「予防保全」に転換することにより、今後30年間の累計で約3割縮減できる見込みを示した。このことから、今後、予防保全への転換を進めることにより費用の縮減・平準化を図り、持続的・効率的なインフラメンテナンスを推進することが重要である。
しかし、特に小規模な地方公共団体において、体制面・予算面に課題を抱え、予防保全への転換が不十分な状況も見受けられる。そのような状況を踏まえ、令和4年12月に社会資本整備審議会・交通政策審議会技術分科会技術部会において、今後のメンテナンスのあり方に関する提言『総力戦で取り組むべき次世代の「地域インフラ群再生戦略マネジメント」~インフラメンテナンス第2フェーズへ~』が取りまとめられた。
提言では、各地域の将来像を踏まえ、複数・広域・多分野のインフラを「群」として捉え、総合的かつ多角的な視点から地域のインフラを戦略的にマネジメントする「地域インフラ群再生戦略マネジメント」という考え方を示している。提言を踏まえ、様々な主体と連携し、持続可能なインフラメンテナンスの実現に向けて取組みを進めていくこととしている。
また、産学官民が一丸となって総力戦でメンテナンスに取り組むプラットフォームとして平成28年に設立された「インフラメンテナンス国民会議」の参画数は令和5年3月末時点では2,756者に達している。4年4月には、地方公共団体における効率的・効果的なインフラメンテナンスの推進を後押しするため、メンテナンスに高い関心を有する市区町村長で構成する「インフラメンテナンス市区町村長会議」が設立された。今後、先進的な取組み事例の共有、メンテナンスの今後の方向性に関する意見交換、社会に対するメッセージの発信といった取組みを通じて首長のイニシアティブにより市区町村におけるインフラメンテナンスの取組みを強力に推進していくことが期待される。
(3)新技術等の導入促進
社会インフラの維持管理における業務効率を飛躍的に高めるため、維持管理に資する革新的技術の研究開発・現場実証を促進させ、戦略的に新技術の社会実装を進める。具体的には新技術の導入を促進するため令和3年3月末に新技術導入の手引き(案)を公表しており、それらの普及・促進を進めている。
また、国民会議では、設立以来、シンポジウム・セミナーの開催や、自治体等の施設管理者が抱える技術的な課題(ニーズ)と民間企業等が保有する技術(シーズ)のマッチング等、インフラメンテナンスの技術導入を支援するイベントを全国で実施している。さらに、インフラメンテナンスに係る優れた取組みや技術開発を表彰するため平成28年に創設した「インフラメンテナンス大賞」について、第6回では195件の応募から37件の表彰を選定し、令和5年1月に開催した表彰式を通じて好事例の横展開を図った。
また、道路分野においては、行政の技術開発ニーズを踏まえた新技術について、研究開発から現場への活用まで積極的に推進している。具体的には、道路分野に携わる広範な研究者の技術研究開発を支援する新道路技術会議において、行政ニーズに応じた研究を中心に支援し、その中でも活用が期待される研究開発については、新技術導入促進計画に位置づけ、必要な技術基準類の整備を迅速化する等、現場実装を推進していく。橋梁・トンネル・舗装・土工について、点検支援技術性能カタログの充実等の取組みを推進するとともに、直轄国道の定期点検(橋梁・トンネル・舗装)においてカタログ掲載技術の一部の活用を原則化するなど、新技術を積極的に活用し、点検業務の効率化・高度化を図る。また、これら点検や、補修・補強への新技術・新材料の活用に対し、道路メンテナンス事業補助制度において優先的に支援する。