
国土交通白書 2023
第3節 産業の活性化
(1)旅客自動車運送事業
バス事業(乗合・貸切)、タクシー事業については、新型コロナウイルス感染症の拡大等により、輸送人員・運送収入が大きく減少し、厳しい経営状況が続いている。
また、長引くコロナ禍において全国的に運転者が不足しており、バス・タクシー合わせて2年で約4万人の運転者が減少した。このままでは、今後需要が回復する中で供給が追いつかなくなるおそれがある。
こうした運転者不足を解消するため、令和4年度補正予算において、二種免許取得支援を含む人材確保支援を実施することとした。これまでも氷河期世代を対象とした二種免許取得支援は存在したが、運転者不足に正面から取り組むために国土交通省が事業者に対して二種免許取得にかかる費用を直接支援するのは今回が初めてである。具体的には、事業者が負担する二種免許取得費用に加え、人材確保セミナーの開催経費やPR資料の作成等の広報業務等についても補助対象としており、不足する人員を事業者が確保するために必要な支援を行うこととしている。
また、自動車運送事業の給与水準は他産業に比べて低く、職業としての魅力を高めるためにも賃金を上げていくことが重要である。令和4年において、バスについては7事業者で、タクシーについては8地域で運賃改定を実施し、賃金引上げに向けた取組みを進めている。特にタクシーでは、東京特別区・武三(武蔵野市・三鷹市)地区において約15年ぶりに運賃改定が実施され、運送収入が増加し、運転者の賃金引上げや利用者の利便性を高めるための投資余力の確保につながっている。
【関連データ】
・乗合バスの輸送人員、営業収入の推移
・貸切バス事業の概況
・タクシー事業の現状
(2)自動車運転代行業
自動車運転代行業は、飲酒時の代替交通手段として活用されており、令和4年12月末現在、総事業者数7,836者となっている。近年の動向としては、利用料金について、各都道府県に対して条例で最低利用料金を設定することが可能である旨の通知を発出したところである。
(3)貨物自動車運送事業(トラック事業)
トラック事業者数は長期にわたり増加していたが、平成20年度以降は約62,000者とほぼ横ばいで推移している。中小企業が99%を占めるトラック運送事業では、荷主都合の長時間の荷待ち等によるドライバーの長時間労働、荷主に対して立場が弱く適正な運賃が収受できないなどの課題がある。このため、29年7月から、荷待ち時間の削減に向けその実態を把握すること等を目的として、荷主都合による荷待ち時間を記録することをトラック事業者に義務付ける措置を講じたほか、運送の対価である「運賃」と運送以外の役務の対価である「料金」の範囲を明確化するため、同年8月に標準貨物自動車運送約款等の改正を行い同年11月に施行し、取引環境の適正化等に向けた取組みを推進している。
また、平成30年12月に成立した改正「貨物自動車運送事業法」に基づき、①規制の適正化、②荷主対策の深度化、③標準的な運賃の告示制度の導入等の所要の措置を講じているところであり、引き続きトラック運送業の魅力的な労働環境の整備に向けた取組みを推進する。
(4)自動車運送事業等の担い手確保・育成
ヒト・モノの輸送を担っている自動車運送事業等は、日本経済及び地域の移動手段として重要な社会基盤産業であるが、担い手不足が深刻化している。
自動車運送事業においては、職場環境改善に向けた各事業者の取組みを「見える化」するための運転者職場環境良好度認証制度の普及を推進しているほか、業種別にさまざまな対策に取り組んでいる。バス・タクシーについては、運転者不足への対応が喫緊の課題であり、賃金引上げ実現に向けた運賃改定の円滑な実施や二種免許取得支援の導入等により、人材確保に取り組んでいる。トラックについては、荷主や消費者等も巻き込んだ「ホワイト物流」推進運動や「標準的な運賃」の更なる普及浸透等に取り組んでいる。自動車整備については、「自動車整備の高度化に対応する人材確保に係る検討WG」を設置し、産学官が協力して人材確保・育成に取り組んでいる。