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国土交通白書 2023

第2節 国際交渉・連携等の推進

■3 各分野における多国間・二国間国際交渉・連携の取組み

(1)国土政策分野

 アジア各国等において、政府関係者、国際機関等様々なステークホルダーをネットワーク化し、会議、ウェブサイト等により国土・地域政策に係る課題や知見を共有する仕組みである「国土・地域計画策定・推進支援プラットフォーム(SPP)」の第5回会合を、令和5年2月にネパールにおいて、ネパール政府、国連人間居住計画(UN-Habitat)福岡本部と共催した。本会合では、各国の国土計画の実効性や気候変動への対応にかかる課題等について議論したほか、開催国であるネパールの国土計画に関するブレインストーミングや、各国の報告に基づくケーススタディを実施した。

【関連リンク】

国土・地域計画策定・推進支援プラットフォーム(SPP)

URL:https://spp-pr.com/conferences/index.html

(2)都市分野

 国際的な不動産見本市である「MIPIM」(令和5年3月フランス・カンヌ開催)において、日本の都市開発・不動産市場のPRを行い、シティセールス等を図っている。

 タイでは、同国運輸省の要請を受け、クルンテープ・アピワット中央駅周辺(バンスー地区)における都市開発推進について、現地JICA専門家を通じて技術協力を行うとともに、令和4年度には国土交通省、独立行政法人都市再生機構、タイ王国運輸省、タイ国有鉄道の4者で、2年度に交換した事業推進に関する協力覚書の更新(2年延長)を行い今後の協力継続を確認した。

 カンボジアでは、令和3年にプノンペン都から、地元ディベロッパーが進める「ING City」プロジェクトへの日本企業参画について提案を受け、日本企業と当該地元ディベロッパーとのビジネスマッチングイベントを4年11月に開催した。

 また、我が国企業の海外展開促進を図るため、独立行政法人都市再生機構による調査やセミナー等の取組みを行っている。令和4年度はオーストラリアにおいて、平成30年に同国ニューサウスウェールズ州と交換した覚書に基づき、令和8年開港予定の西シドニー国際空港周辺地域におけるエアロトロポリス開発計画について、日本企業を対象とした現地セミナーを開催した。

 さらに、J-CODE(海外エコシティエコシティプロジェクト協議会)による案件形成推進等の取組みを支援している。

(3)水分野

 水問題は地球規模の問題であるという共通認識のもと、国際会議等において問題解決に向けた議論が行われている。令和4年4月には、熊本市で第4回アジア・太平洋水サミットが開催され、岸田内閣総理大臣をはじめとするアジア太平洋地域31カ国の首脳級・閣僚級のほか、国内外からオンラインも含めて約5,500人が参加し、「持続可能な発展のための水~実践と継承~」をテーマに水に関する諸問題の解決に向けた議論がなされた。首脳級会合では、岸田総理より気候変動適応策・緩和策、基礎的生活環境の改善に資する質の高いインフラ整備を通じた日本の貢献策「熊本水イニシアティブ」が発表され、参加国首脳級の決意表明である「熊本宣言」が採択された。国土交通省からは、斉藤国土交通大臣、中山国土交通副大臣(当時)、加藤国土交通政務官(当時)が開会式や首脳級会合に出席したほか、各セッション・分科会に登壇し、アジア太平洋地域の水問題の解決に向けた国土交通省の貢献可能な取組み、健全な水循環の維持・回復を図ることは社会の持続可能性、強靭性、包摂性を保つ上で最も重要な要素の一つであること、継続的な生態系調査やグリーンインフラの推進の重要性などを発信した。

 それに加え、水資源分野では、独立行政法人水資源機構を事務局とし関係業界団体や関係省庁からなる「水資源分野における我が国事業者の海外展開活性化に向けた協議会」を活用して相手国のニーズや課題を把握し、治水機能やCO2削減に資する発電を含む利水機能の向上を図るダム再生事業の案件形成に向けた調査を行うなど、水資源分野の案件形成に向けた取組みを実施した。

(4)防災分野

 世界の水関連災害による被害の軽減に向けて、災害予防が持続可能な開発の鍵であるという共通認識を形成するため、我が国の経験・技術を発信するとともに、水災害予防の強化に関する国際連帯の形成に努めている。また、相手国の防災課題と日本の防災技術をマッチングさせるワークショップ「防災協働対話」をインドネシアやベトナム、ミャンマー、トルコで実施している。現在、既存ダムを有効活用するダム再生や危機管理型水位計などの本邦技術を活用した案件形成を進めているところである。また、国立研究開発法人土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)では、統合洪水解析システム(IFAS)や降雨流出氾濫(RRI)モデル等の開発、リスクマネジメントの研究、博士課程及び修士課程を含む人材育成プログラムの実施、UNESCOやアジア開発銀行、及び世界銀行のプロジェクトへの参画及び国際洪水イニシアチブ(IFI)事務局としての活動等を通じ、水災害に脆弱な国・地域を対象にした技術協力・国際支援を実施している。また、砂防分野においては、イタリア、韓国、スイス及びオーストリアと砂防技術に係る二国間会議を開催しているほか、JICA専門家の派遣等や研修の受入を通じて土砂災害対策や警戒避難、土地利用規制などの技術協力を行っている。

(5)道路分野

 世界道路協会(PIARC)の各技術委員会等に継続的に参画し、国際貢献に積極的に取り組んでおり、令和2年からは4年間の戦略計画がスタートし、加盟国による調査研究が進められている。

 また、日ASEAN交通連携の枠組みの下、ASEAN地域における橋梁維持管理の質の向上を目指した「橋梁維持管理技術共同研究プロジェクト」に取り組んでおり、令和4年7月に専門家会合を開催し、同年10月に日ASEAN交通大臣会合にて成果物として「橋梁維持管理技術参考資料」が承認された。

【関連リンク】

国際機関への参画(1)世界道路協会(PIARC)

URL:https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/kokusai/sankaku/index02.html

(6)住宅・建築分野

 国際建築規制協力委員会(IRCC)、日米加建築専門家会合(BEC)等への参加など、建築基準等に係る国際動向について関係国間での情報交換を行った。また、カンボジアからの要請を受け、建築物の構造安全や火災安全に関する建築技術基準の策定支援に取り組んでいる。

(7)鉄道分野

 令和4年度も、インド高速鉄道に関する合同委員会や日英鉄道協力会議の開催、JICA専門家の派遣を通じた技術協力など、二国間での連携に向けた取組みを実施している。

(8)自動車分野

 平成27年の第13回日ASEAN交通大臣会合にて承認された、「自動車基準・認証制度をはじめとした包括的な交通安全・環境施策に関する日ASEAN新協力プログラム」に基づく取組みとして、アジア地域官民共同フォーラムを開催する等により、アジア地域における基準調和・相互認証活動、交通安全・環境保全施策などについて情報交換を行っている。

(9)海事分野

 海事分野では、IMOにおける世界的な議題への対応の他、局長級会談等を通じた二国間協力、CSG会議(海運先進国当局間会議)や日ASEAN交通連携を通じた多国間協力の取組み等を実施している。

 令和4年9月のCSG会議において、我が国から、パナマ運河の新料金体系やスエズ運河の通航料改訂について問題提起を行い、海運先進国間の連携を呼びかけた。

 我が国は、ASEAN等新興国・途上国に対する海上保安能力向上や公共交通インフラの整備として巡視船や旅客船等の供与を行っており、令和4年6月にはフィリピンに対して大型巡視船2隻、同年11月にはサモアに対して新造貨客船を供与した。この他、平成29年10月より、マラッカ・シンガポール海峡の共同水路測量調査への専門家派遣等、技術協力を実施している。

 また、日ASEAN交通連携協力プロジェクトの一環として、ASEAN域内の内航船等において低環境負荷船を普及促進させるため、「ASEAN低環境負荷船普及戦略」に基づき、令和4年9月の海上交通WGにおいて、ASEAN各国の具体的取組み等を共有した。

 さらに、東南アジアでの浮体式洋上風力発電のニーズが高まっている中、我が国の優れた海事技術である洋上浮体技術の海外展開に取り組んでいる。

(10)港湾分野

 我が国の質の高い港湾技術の発信、世界の様々な港湾技術に関する最新の知見の取得、技術基準等の海外展開・国際標準化の推進のため、国際航路協会(PIANC)や国際港湾協会(IAPH)等と協調し、各種研究委員会活動に積極的に参画している。特に、PIANC、IAPHには、日本から副会長を輩出し、政府自らその会員となり各国の政府関係者等との交流を行っている。

 また、港湾分野の脱炭素化の推進のため、令和4年3月、日米間のカーボンニュートラルポート(CNP)に関する初めての具体的な協力として、日米CNPワークショップを開催した。さらに、同年8月にサンフランシスコで開催された第5回日米インフラフォーラムでは、日米両国の官民関係者が参加し、両国港湾のCNP取組み状況や最新技術の知見について意見交換を行った。

(11)航空分野

 令和4年4月には、EUとの間で「航空業務に関する日本国と欧州連合構成国との間の協定の特定の規定に関する日本国と欧州連合との間の協定」について、同年11月には、クロアチア共和国政府との間で日・クロアチア航空協定について、それぞれ実質合意に至るなど、航空分野における条約の締結に向けた進展が見られた。

 また、令和4年7月に韓国で開催された第57回アジア太平洋航空局長会議において、航空安全、航空保安、航空管制等に関するアジア太平洋地域各国の取組みについて意見交換を行ったほか、同年9月にはICAOの第41回総会に参加した各国政府代表団との間で14件の個別会談を実施、12月には、フランス航空当局との間で3年ぶりの作業部会を開催、シンガポール航空当局との間で対話を開催し協力覚書を締結するなど、コロナ禍において中断していた多国間・二国間における航空当局間の連携強化に取り組んでいる。

(12)物流分野

 日中韓物流大臣会合における合意に基づき、北東アジア物流情報サービスネットワーク(NEAL-NET)の加盟国・加盟港湾の拡大等、日中韓の物流分野における協力の推進について中韓と議論を進めた。令和4年11月及び5年3月には日中韓物流課長級会合を開催し、3年に開催された第8回日中韓物流大臣会合で採択された共同声明及び行動計画の進捗状況や、第9回日中韓物流大臣会合に向けた今後のスケジュールについて意見交換を行った。

 また、ASEANとの関係では、令和5年1月にタイ、同年2月にインドネシアとの間で物流政策対話を開催し、両国政府の物流関連政策や物流課題等について情報交換を行った。さらに、同年3月にはASEAN各国の物流担当の行政官との間で日ASEAN物流専門家会合を開催し、日ASEAN交通連携の下で推進しているプロジェクトの進捗について各国と議論を進めた。

(13)地理空間情報分野

 ASEAN地域等に対し、電子基準点網の設置・運用支援等を行っている。具体的にはインドネシアを対象に、電子基準点の利活用に関する調査検討業務を実施し、インドネシアの状況調査、政府関係者の理解促進に取り組んだ。

(14)気象・地震津波分野

 気象庁は、世界気象機関(WMO)の枠組みの下、気象観測データや予測結果等の国際的な交換や技術協力により各国の気象災害の防止・軽減に貢献しており、令和5年1~2月にアジア各国の国家気象水文機関の専門家を東京に招いて、気象レーダーの整備・運用等に関するワークショップを開催した。

 また、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)政府間海洋学委員会(IOC)の枠組みの下、北西太平洋における津波情報を各国に提供し、関係各国の津波防災に貢献している。

 さらに、国際協力機構(JICA)等と協力して、開発途上国に対し気象、海洋、地震、火山などの様々な分野で研修等を通した人材育成支援・技術協力を行っている。

(15)海上保安分野

 海上保安庁は、世界海上保安機関長官級会合、北太平洋海上保安フォーラム、アジア海上保安機関長官級会合といった多国間会合や、二国間での長官級会合、連携訓練等を通じて、捜索救助、海上セキュリティ対策等の各分野で海上保安機関間の連携・協力を積極的に推進している。

 また、シーレーン沿岸国における海上保安能力向上支援のため、国際協力機構(JICA)や公益財団法人日本財団の枠組みにより、海上保安庁Mobile Cooperation Team(MCT)や専門的な知識を有する海上保安官を専門家として各国に派遣しているほか、各国の海上保安機関等の職員を日本に招へいし、能力向上支援に当たっている。

 また、海上保安政策に関する修士レベルの教育を行う海上保安政策プログラムを開講し、アジア諸国の海上保安機関職員を受け入れるなどして各国の連携協力、認識共有を図っている。

図表Ⅱ-8-2-1 ジブチ沿岸警備隊に対する能力向上支援
図表Ⅱ-8-2-1 ジブチ沿岸警備隊に対する能力向上支援