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国土交通白書 2024

第2節 未来につながる変革と持続可能で豊かな社会を目指して

コラム 被災地における短時間での住空間の提供((株)LIFULL ArchiTech)

 我が国の自然災害が激甚化・頻発化する中で、被災地では、被災者の住まいを確保するため、仮設住宅の建設が必要となる場合がある。建設用地の確保、建設資材の確保や運搬、労働力の確保等から、建設されるまで数ヶ月程度を要するのが一般的である。

 このような中、(株)LIFULL ArchiTech では、被災地に短時間で住空間を提供できる「インスタントハウス」を開発している。

 「インスタントハウス」の設営に重機は不要であり、設置したい場所に防炎性のテントシートを固定し、送風機でシートを膨らませ、内側から断熱性のある液状の硬質発泡ウレタン材を吹き付け、乾燥させるだけで完成する。仮設住宅の場合、通常、着工から3週間から4週間程度要するが、「インスタントハウス」は1棟当たりわずか3時間から4時間程度で完成し、施工したその日から活用できる。

 テントシートは、スーツケースに納まる大きさであり、小型トラック1台でも60棟分を運搬できるため、道路復旧が進んでいない被災初期でも被災地への搬入が可能である。

 建築基準法上は工作物の扱いだが、震度6強の地震にも耐えることができ、風雨、強風、積雪等の外的要因の影響も受けにくく、災害時には仮設住宅としてだけでなく、医療救護室や断熱を要する備蓄倉庫、子どもやコミュニティの休憩所等にも活用できる。

 2023年2月に発生したトルコ及びシリアにおける地震では、トルコのアンタキヤ市に被災地支援として「インスタントハウス」3棟を設置し、復興業務を行う同市のスタッフや関係者のワークスペース兼宿泊スペースとして活用された。令和6年能登半島地震では、被災地に25棟が設置され、避難所で子どものケアスペース、感染者隔離スペース、支援団体の休憩所等に活用されている。

 同社は、被災地での施工経験を活かし、日常生活でも災害時でも役立つ、備えない防災「フェーズフリー」として、日本国内及び世界中の被災地に「インスタントハウス」を普及させることを目指している。

<インスタントハウスの施工工程>
<インスタントハウスの施工工程>

資料)(株)LIFULL ArchiTech