
国土交通白書 2024
第2節 未来につながる変革と持続可能で豊かな社会を目指して
コラム 自家用有償旅客運送の取組み(島根県邑南町)
島根県中部に位置する邑南町は、人口約9,700人の町であり、高齢化率は45.5%と、全国的に見ても高齢化が急速に進む一方で、若年者比率は減少傾向が続いている。中でも阿須那地区と口羽地区からなる羽須美地域は、高齢化率が55%を超えており、人口減少が大幅に進んでいる。そのような同地域では、少子高齢化・人口減少の進展による利用者の減少を受けて、住民の交通を支えてきたJR三江線が2018年3月に廃止された。これを受け、同年4月に町営のバス路線が新設されたものの、人口減で利用者を確保できず、事業継続が困難となり、2020年3月に廃止された。また、同地域にはタクシー事業者がおらず、高齢者の買い物や通院といった生活交通の確保が大きな課題となっていた。
このような中、2017年3月に「羽須美地域の交通を考える会」が立ち上がり、2018年7月には、同会に参加していた地域住民により「NPO法人はすみ振興会(デマンド交通事業部門)」を設立、2019年4月に自家用有償旅客運送「はすみデマンド」が導入された。2020年4月には、廃止された三江線代替交通が運行していた区間も運行可能となり、羽須美エリア全域に、予約制のドアツードアの交通サービスが整備された。
デマンド交通の導入により、自宅への送迎が可能となったことから、高齢者の移動の負担が大幅に軽減した注1。2019年の年間運行回数は約1,800回で、令和2年度の年間運行回数は約2,800回であった。利用者の8割以上が通院目的で利用しており、利用者からは、羽須美地域以外の医療機関にも通院したいという要望が挙がっている。
今後は、住民が地域外へも移動できるよう、バスターミナルを備えた交通拠点を整備することとしている。また、はすみデマンドを活用した貨客混載を実施できるような仕組みを構築することにより、移動が難しく、日常の買い物に不便を感じている高齢者を支えることが期待されている。

資料)特定非営利活動法人はすみ振興会
- 注1 登録運転手は、国土交通省の運転者認定講習「交通空白地有償運送運転者講習」を受け、自家用車を使い自宅を含む羽須美地域内を送迎する。