
国土交通白書 2024
第2節 未来につながる変革と持続可能で豊かな社会を目指して
コラム 移住・定住促進(七ヶ宿町)
宮城県七ヶ宿町は、宮城県の最南西部に位置している。総面積263.1km2のうち約90%を山林が占めており、1960年に5,177人だった人口は、2024年には1,241人まで減少している。さらに、高齢者人口割合は全国及び宮城県と比較して高い数値(2020年に46.2%)となっており、高齢化が著しい地域である。近年は、集落を維持していくための担い手確保が大きな課題となっている。
そうした中、同町では、移住・定住を促進する取組みとして「七ヶ宿町地域担い手づくり支援住宅」、「お試し住宅事業」等、若者世帯向けを中心とした多様な移住・定住策を推進しているほか、町の魅力をアピールし、住宅や生活環境の相談に積極的に応じる取組みによって、移住希望者とのマッチングに力を注いでいる。
中でも2015年から始まった「七ヶ宿町地域担い手づくり支援住宅」は、先進的な取組みであり、新築戸建て住宅に20年以上住めば、無償でその住宅及び土地が譲渡される。対象はおおむね40歳未満の夫婦で、中学生以下の子どもがいる世帯としており、戸建て住宅が月々家賃3万9千円で提供される。また、住宅には20年以上居住することが条件となっている。また、設計段階から打合せに参加ができ自由に間取りを決めることができる(3~4LDK程度)。
ほかにも同町では、町内2か所にお試し住宅を用意(最長30泊)しており、移住前に七ヶ宿町での暮らしを体験できる。また、新築やリフォームにかかる費用を最大300万円で補助する制度、賃貸住宅の家賃を最大2万円助成する制度等を実施している。
こうした、子育て世代や若者の移住・定住を目指した様々な取組みにより、同町では子育て世帯の移住が増加しており、1985年度から1990年度の5年間で約7.4%上昇していた同町の高齢化率は、2015年度から2020年度の5年間では、1%以下まで上昇が緩和されている。
今後、同町は、手厚い子育て支援施策注1を引き続き推進することにより、町内で安心して子どもを産み育てられる環境を充実させることに取り組んでいく。また、核家族が増えてきている子育て世代の孤立化を防ぐため、産後ママたちの交流会や子育て支援センターの活動を活発化させていくこととしている。さらには、移住者同士や移住者と地元住民との交流の場となる住民交流会事業を企画することにより、子育て世代や若者の移住・定住につながることが期待されている。

資料)七ヶ宿町
- 注1 子育て応援支援金として第1子30万円、第2子50万円、第3子以降70万円の支給や3歳までの紙おむつ費助成等