
国土交通白書 2024
第2節 未来につながる変革と持続可能で豊かな社会を目指して
コラム フェローシップ・プログラムによる移住・定住の促進(米国・デトロイト市)
ミシガン州のデトロイトは、世界の自動車産業の中心地として栄えたアメリカの都市である。1970年代以降、生産拠点の移転や外国自動車の輸入により、市の発展を支えてきた自動車産業が低迷し、デトロイトは、雇用の喪失とともに人口減少に見舞われ、1970年代に約150万人もあった人口も2010年には約70万人まで減少していた。
才能のある若者の流出に対応すべく、非営利団体チャレンジ・デトロイトは、全国からデトロイトに若者を呼び込み、人材育成を通じて定住を促すフェローシップ・プログラムを2012年より開始している。
プログラムの募集は、毎年30人程度、デトロイトを含む全国の学士号以上を取得した若者を対象に行っている。参加者は、プログラム期間の1年間、デトロイト又はデトロイト都市圏に居住しながら、毎週月曜日から木曜日は、市内の大企業や中小企業等の受入企業での勤務を通じて、キャリアアップを図ることができる。毎週金曜日は、市内の非営利団体が直面している課題を同団体と協力しながら解決するプロジェクトに取り組むことにより、実践を学びながら地域貢献を果たす機会を得ることができる。
プロジェクトに関わる非営利団体は毎年変わり、2023年度のプロジェクトの一つでは、求人や職業訓練に関する情報を提供する団体Detroit at Work(デトロイト・アット・ワーク)のサービス向上をテーマに、参加者たちは、キャリアポータルサイトの再設計に向けた戦略づくり、求人や職業訓練に対する市民の認知度を高めるためのコミュニケーションガイドの作成等に取り組んだ。
チャレンジ・デトロイトは、設立以来、350人以上のプログラム修了生を輩出している。2023年度のプログラム修了生の約8割は、デトロイト市外に在住していた若者であり、プログラム終了後も約8割のプログラム修了生がデトロイトにとどまっている。


資料)Challenge Detroit