
国土交通白書 2024
第2節 未来につながる変革と持続可能で豊かな社会を目指して
コラム 健康と社会的交流を促す高齢者複合施設(シンガポール)
シンガポールでは、高齢化が急速に進んでおり、2010年には約10人に1人であった65歳以上の高齢者が、2020年には約6人に1人、2030年には約4人に1人になると予測されている。
シンガポール政府は、2015年、活動的で健康的な高齢社会の実現を目指す「高齢化を成功裏に迎えるための行動計画(Action Plan for Successful Ageing)」を策定した。
これを背景に、住宅開発庁主導の下、複数の政府機関により、住まいや買い物、食事、医療、コミュニティ施設が1か所で完結する一体型の高齢者複合施設「カンポン・アドミラリティ」を建設した。同施設は、ユニバーサルデザインを採用した高齢者向け公営住宅104世帯に加え、医療施設、高齢者向け施設が完備されている。
地上1階の施設利用者で賑わうコミュニティプラザでは、地域の芸術や文化活動等のイベントが定期的に開催されており、高齢者がほかの住民と交流する場が提供されている。
施設内に併設されているアクティブ・エイジング・センターは、高齢者が交友関係を広げたり、プログラムに参加したり、ケアサービスの情報や紹介を受けたりするための窓口となっている。また、デイケア、認知症デイケア、虚弱高齢者向け通所リハビリテーション・サービス等の様々なサービスを提供している。
また、世代間交流を促すため、保育所が併設されており、高齢者は、子どもへの読み聞かせや工作等のボランティア活動への参加を通じ、子どもたちと交流を深めることができる。
2023年には「高齢化を成功裏に迎えるための行動計画」が改定された。これに続き、生活環境を改善することでアクティブ・エイジングを推進し、介護を必要とする高齢者への支援を強化するための国家プログラムである「Age Well SG」が始動した。これらの一環として、シンガポール政府は、地域社会で高齢化を支えるインフラ強化に取り組んでいる。
シンガポール政府としては、このような「カンポン・アドミラリティ」をモデルとした一体型の高齢者複合施設の建設を更に進めていくことを目指しており、2027年には同国西部のチョア・チュー・カン町の公営住宅の敷地内にも建設が予定されている。


資料)Housing & Development Board、NTUC Enterprise