
国土交通白書 2024
第2節 未来につながる変革と持続可能で豊かな社会を目指して
コラム ドローンによる災害時対応(大分県)
大分県は、県土の約7割が森林であり、山地が多い地形が特徴である。九州北部地方は、梅雨期にかけて降水量が全国で最も多い地域のひとつであり、台風通過に伴う大雨の影響を受けやすい地域である。このような地勢的特徴から、同県の土砂災害警戒区域の数は、全国で6番目に多く、山崩れや地すべり等、山地に起因する災害が、毎年のように起こっている。災害によって道路が寸断され、外部からのアクセスが途絶し、孤立集落が発生した際の救援作業は、徒歩で行われてきたが、時間がかかることが課題となっていた。
このような中、同県は「大分県版第4次産業革命“OITA4.0”」注1の推進の一環として、ドローンを含む先端技術の開発や地域での活用を進めてきた。同県は、2017年度にドローン産業の振興を目的として「大分県ドローン協議会」を立ち上げ、産学官の連携により、研究開発、人材育成、補助事業に取り組むとともに、災害時の調査や救援物資配送を含む地域課題の解決に向けたドローン物流事業の実証実験に取り組んできた。さらに、同県と同協議会は、2023年3月にドローンを活用した被災状況の調査を実施する協定注2を締結した。これにより、早期に被害状況の全容把握が可能となるとともに、災害対応の高度化や救援活動の迅速化につながる仕組みを構築した。
こうした動きの中、2023年6月に九州地方を襲った豪雨によって、由布市湯布院町の山間において孤立世帯が発生した。その際、協定に基づくドローンによる緊急被災状況調査を行うとともに、県内事業者と連携の上、発災直後の救援物資輸送を行った。救援物資輸送に使用した機体は、物資運搬に特化したモデルとなっている。また、機体の前方と下方にはカメラが搭載されており、送信機画面で確認しながら、目視外飛行を行うことができる。
こうした災害時のドローン活用により、土砂災害で陸路が遮断され、雨で防災ヘリが出動できない状況においても、被害状況の早期把握及びその後の災害対策につながり、救援活動の早期化や救援者の作業軽減が可能と判明した。具体的には、2023年6月の災害時では、孤立世帯までの道路や橋が、土砂等の影響で通行できず、迂回を要するため、徒歩では2時間かかるところ、ドローンでは3分で救援物資の配送を行っている。また、孤立世帯に無線電話等を届けることで、被災者との通信連絡手段の確保につながった。
今後も、同県は、地域課題解決に向けたドローンを活用した取組みを継続的に行っていくこととしている。


資料)大分県
- 注1 大分県版第4次産業革命“OITA4.0” とは、「先端技術を活用する第4次産業革命の流れを大分県にも取り込んでいくことにより、先端技術を活用した新しい製品やサービスを数多く生み出し、県内産業の振興を図るとともに、本県の製造業やサービス業など産業の構造転換を進め様々な地域課題の解決を目指す取組」(大分県長期総合計画「安心・活力・発展プラン2015(2020改訂版)」:182)。
- 注2 「災害時におけるドローンによる緊急被災状況調査に関する協定」