国土交通省ロゴ

国土交通白書 2024

第1節 国土交通分野の現状と方向性

コラム 公共交通を軸としたまちづくり(栃木県宇都宮市)

 宇都宮市は、首都圏の北の拠点都市として発展を続けており、過度に自動車に頼らずに、各拠点で医療、子育て支援等、様々なサービスを享受できる、「ネットワーク型コンパクトシティ」の形成を推進している。

 同市は、市街地が郊外に拡大することにより、中心市街地の密度低下を招くとともに、公共交通が脆弱なため通勤時及び帰宅時の道路渋滞が慢性化する課題に直面していた。そこで、基幹となる公共交通として輸送力に優れたLRT(Light Rail Transit)の整備を開始し、中心市街地のJR宇都宮駅東口から東部地域の産業拠点である清原工業団地と芳賀・高根沢工業団地を結ぶルートを2023年8月26日に開業した(芳賀・宇都宮LRT「ライトライン」)。

 ライトラインの特徴として、様々な公共交通機関をつなぎ、利用しやすくするための乗換施設であるトランジットセンターが5つあり、中でも清原地区市民センター前のトランジットセンターは、ほかのトランジットセンターの中でも大きく、乗換可能な手段も豊富で、LRTからバス、LRTからタクシー等の乗換えがスムーズに行えるほか、無料の駐車場や駐輪場もあり、多くの人が利用可能である。

 ライトラインの運営は、公設型上下分離方式を採用している。具体的には、宇都宮市・芳賀町が、軌道整備事業者として、軌道施設や車両を整備・保有し、維持管理の責任を持ち、宇都宮ライトレール(株)が、軌道運送事業者としてそれらを借り受け、運行サービスを提供している。

 開業後の利用状況は、開業から半年で、約227万人(当初予測の約1.2倍)で、平日は、通勤や通学での利用を中心に、当初需要予測と同程度の1日当たり約12,000人~13,000人、土休日は、沿線のイベントや商業施設に向かう方々を中心に、当初需要予測の約2倍超となる1日当たり約9,000人~13,000人が利用している。また、沿線地域の交通利便性が向上したことで魅力が高まり、地価の上昇が目立った。

 そのほか、バス路線の再編にも取り組み、トランジットセンターを起終点として、各地域の暮らしの拠点や産業拠点とを結ぶバス路線等の新設を行い、再編後の平日1日当たりの運行本数が121本増加するなど、運行サービスの向上を図っている。

 また、地域を面的にカバーする地域内交通の整備にも取り組み、決まった時間・ルートを運行する定時定路型や、予約に応じて自宅と事前に設定した目的地を結ぶデマンド型により運行しており、ライトライン沿線の地区では、開業に併せて、ライトラインの停留場を目的施設に設置するなど、公共交通の乗継ぎの利便性向上を図っている。

 今後は、2025年度内にJR宇都宮駅西側の整備区間(JR宇都宮駅から教育会館付近までの5km)の特許申請を行い、2030年代前半の開業に向けて検討を進めており、将来的には観光地である大谷エリアまでの延伸も検討している。

 同市は、人口減少・高齢社会においても、子どもから高齢者まで誰もが豊かで便利に安心して暮らすことができ、夢や希望がかなうまちの実現を目指している。

<芳賀・宇都宮LRT>
ライトライン

ライトライン

車内の様子

車内の様子

資料)宇都宮市