
国土交通白書 2024
第1節 国土交通分野の現状と方向性
コラム 交通モードの切替えによる地域の足の確保(宮城県気仙沼市ほか)
気仙沼市の海岸沿いを走行するJR気仙沼線は、2011年3月、東日本大震災の津波により、気仙沼駅・柳津駅間の沿岸部の線路が流失し、運行不可能となった。鉄路復旧の代替手段として、2012年8月から気仙沼駅・柳津駅間で運行を開始したのが、JR気仙沼線BRT(Bus Rapid Transit)である。主に通勤・通学として年間約30万人に利用されており、BRTとしての復旧後も、日常生活に密着した地域の基幹交通を担っている。
気仙沼駅・柳津駅間55.3kmのうち約50kmはBRT専用道であることから、速達性が維持され、遅延時間5分未満の運行が9割以上と、定時性も確保されている。また、専用道から離れた市立病院構内へ乗り入れるといった柔軟なルート設定や、混雑状況に合わせた輸送力の調整が可能であり、地域の声を反映した柔軟な運行サービスが提供されている。
一方で、震災前には7万人であった同市の人口は、現在は6万人を割り込み、沿線地域でも人口減少が進む中、BRTを運行する東日本旅客鉄道(株)(以下、JR東日本)では、少子高齢化の進行によるさらなるドライバー不足を懸念し、2018年度より、BRT専用道の一部区間における、自動運転の実証実験に取り組んでいる。
自動運転区間は、一般道との交差が少ない柳津駅・陸前横山駅間のBRT専用道約4.8kmで、自動運転バスには、障害物を検知するカメラやセンサーが搭載されているほか、走行路面2m毎に敷設された磁気マーカーを、車両の磁気センサーで検知することにより、電波の届かないトンネルを含む専用道上においても、高精度な自車位置推定を実現し、正確な自動運転を可能としている。このような技術により、2022年12月から、ドライバーの監視が必要な自動運転レベル2、最高速度時速60kmでの営業を開始している。
また、2024年3月、JR気仙沼線BRTの自動運転バスは、柳津駅・陸前横山駅間において、特定の条件下で自動運転車レベル4として、日本で初めて最高速度時速60㎞での認可を受けており、今後、JR東日本では、有人での自動運転レベル4の運行実現を目指すとともに、陸前横山駅から水尻川アプローチまでの自動運転区間の延伸(自動運転区間計15.5km)を進めていくこととしている。


資料)東日本旅客鉄道(株)