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国土交通白書 2024

第1節 国土交通分野の現状と方向性

コラム 農山村における交通・物流の連携(北海道上士幌町)

 上士幌町は、人口約5,000人弱、東京23区全体の面積を上回る広さを有し、農業・酪農をはじめ第1次産業や公共牧場、温泉、鉄道遺産等、観光資源も豊富に有する町である。

 少子高齢化・人口減少が進み、担い手不足等により交通サービスが維持できないおそれだけでなく、市街地と農村地域間の物流では、荷物の量に比して配送時間が膨大に発生するなど非効率な状態が続いていた。

 上士幌町には、「上士幌セントラルベルト構想」(コンパクトシティ)に基づき、徒歩圏内に町役場をはじめ、こども園等の公共施設エリア、スーパーマーケット等の商業エリアが配置されており、近隣の自治体との間を運行する路線バス等の乗り場が集約された「上士幌交通ターミナル」が整備されている。また、交通・物流に係る実証実験やデータを収集し、町民のニーズを見える化することにより、効率的なサービス提供の実現に向けた取組みを行っている。

 旅客輸送の面では、2022年12月より自動運転バスの定期運行を開始しており、「レベル4」の自動運転移動サービスの実現に向けて、信号協調による交差点安全走行や、路車協調システムの実証に取り組んでいる。2024年度中に、一部区間でのレベル4実施を目指すとともに、温泉街等の観光資源を有するぬかびら地区と市街地をつなぐ約20kmについて、高速自動運転が可能な車両の実証走行を検討している。

 物流の面では、農村部への配送手段として、トラックによる配送に加えて、ドローンを用いた空路での配送を活用する「空陸ハイブリッド配送」の実現を目指しており、2023年12月に、国土交通省により新設された「レベル3.5」飛行によるドローン配送が、日本国内で初めて行われた。ドローン配送導入により、従来トラックで運んでいた荷物を約半分近く減らすことが可能となるため、トラックによる配送効率を上げる効果が得られる。

 また、福祉バスを委託している地元の交通事業者が空いているときに、町内の交通・物流リソースを最大限活用するため、貨客混載の実証も進めている。

 今後、自動運転バス、ドローン共に、システムによる管理が可能となるレベル4を実現し、中山間地域でのデジタルを活用した持続可能なまちづくりを進めていく。同町の事例が横展開されて、ほかの自治体にも次々に導入されることで、システムの普及・共通化が進むと、各自治体の負担するコストは下がるため、導入を検討する自治体が更に増加するといった好循環が生まれることが期待される。

<農山村における交通・物流の取組み>
自動運転バス:かみしほろアルマ

自動運転バス:かみしほろアルマ

ドローン配送の様子

ドローン配送の様子

資料)上士幌町