国土交通白書 2025
第1節 担い手不足等によるサービスの供給制約
ここでは、国土交通分野における担い手側の供給量に関する将来推計や需給ギャップ注22の分析等について記述する。
①建設業における将来推計と需給ギャップ
(建設技術者数・建設技能労働者数の将来推計)
国勢調査を基にしたコーホート変化率法注23を用いて、将来の建設技術者数・建設技能労働者数が推計されている注24。この将来推計に基づくと、建設技術者数は、2020年以降、5年ごとに約1.5~3.0%ずつ減少する見込みとされている注25。
建設技能労働者数は、2020年以降、おおよそ5年ごとに約7~8%ずつ減少し、その減少率は徐々に大きくなる見込みとされている注26。年齢階層別に見ると、足下の2025年には約半数を50歳以上が占め、その後もその割合は変わらないことから、高齢化が深刻化する見込みとされている。
資料)一般財団法人建設経済研究所
資料)一般財団法人建設経済研究所
(建設技術者数・建設技能労働者数の需給ギャップ)
将来推計の結果に基づく建設技術者数の需給ギャップについて、図表Ⅰ-1-1-36では、経済成長率が実質2%程度注27の場合に、「2020年基準」パターン注28においては、2030年度、2035年度で供給不足が生じると示されている。ただ、「生産性向上」パターン注29においては、労働需要が減り、すべての年度で需給ギャップは解消すると示されている。
しかし、建設技能労働者数の需給ギャップについて、図表Ⅰ-1-1-37では、「2020年基準」パターンと「生産性向上」パターンの双方で、2030年度、2035年度にも不足が解消されないと示されており、更なる生産性の向上、担い手の確保が求められる。
※供給人数の将来推計に関して、建設技術者が大幅に減少した時代を含んだ変化率(2005→ 2010年、2010→ 2015年及び2015→ 2020年の変化率の平均値)を用いたケース
資料)一般財団法人建設経済研究所
※供給人数の将来推計に関して、直近の2015→ 2020年の変化率を用いたケース
資料)一般財団法人建設経済研究所
②物流分野における将来推計と需給ギャップ
(物流輸送の将来推計)
物流分野については、「物流革新に向けた政策パッケージ」(2023年6月2日我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議)等において、何も対策を講じなければ、輸送力が2024年度には約14%、2030年度には約34%不足する可能性が示されている。
資料)国土交通省
(需給ギャップの解消に向けた取組方針)
物流の「2024年問題」については、2023年6月の「物流革新に向けた政策パッケージ」に基づく官民での取組の成果等により、2024年度の試算における約14%の輸送力不足を概ね解消できたため、2025年度に入ってからも物流の機能を維持できている。
他方、2030年度には34%の輸送力不足が見込まれていることから、その解消に向けた更なる施策を具体化するため、2025年5月に「2030年度に向けた総合物流施策大綱に関する検討会」を設置し、2026~2030年度の次期「総合物流施策大綱」の策定に向けた検討を開始したところである。
資料)国土交通省
③地域公共交通(バス)における将来推計と需給ギャップ
(バス運転手の将来推計と需給ギャップ)
地域公共交通において、特に担い手不足が大きな問題となっているバスの運転手数については、2021年には11万6千人のところ、2030年には9万3千人にまで減少するとされている注32。この将来推計に基づくと、2022年の輸送規模を維持したと仮定した上で、時間外労働の上限規制の影響を考慮した場合、2030年には、必要人員が3万6千人(必要人員全体の28%)不足する見込みであると示されている。
資料)公益社団法人日本バス協会「国土幹線道路部会ヒアリング資料」
既に、路線バス会社においては、担い手不足等が影響し、約8割の会社が2023年中に減便・廃止を行っている状況である。また、2008年度(平成20年度)から2023年度(令和5年度)にかけて、路線の廃止延長は、バスが約23,193km、鉄軌道が約625kmとなっている。
資料)帝国データバンク、国土交通省
④地方公務員数における将来推計と需給ギャップ
(地方公務員数における需給ギャップ)
地方公務員数については、2024年2月のデジタル行財政改革会議において、需要の減少以上のペースで供給が減少する見込みであることが示されている。この推計に基づくと、地方公務員の必要数(需要)に対する地方公務員のなり手(供給)を示す充足率(供給÷需要)は、2045年には全国平均で8割程度に低下する見込みとされている。
(出典)(株)日本総合研究所「地方公務員は足りているか―地方自治体の人手不足の現状把握と課題―(2021年)」
資料) 内閣官房「デジタル行財政改革会議(第4回)資料」
- 注22 担い手側に関する将来の需要量及び供給量の過不足をいう。
- 注23 各年齢層における就業者数の変化率が将来にわたって維持されるものと仮定して、将来の各年齢層の就業者数を推定する手法。
- 注24 一般財団法人建設経済研究所「建設経済レポートNo.76(2024年3月)P207~P250」より。
- 注25 ここでは建設技術者が大幅に減少した時代を含んだ変化率(2005→2010年、2010→2015年及び2015→2020年の変化率の平均値)を用いたケースを示す。
- 注26 ここでは直近の2015→2020年の変化率を用いたケースを示す。
- 注27 需要人数算出の基となる中長期的な経済成長率は、実質2%程度を考慮している。
- 注28 単位建設投資額に必要となる建設技術者数を、建設投資額による建設技術者数(需要)と、建設技術者の実数(供給)が2020年度において合致していると仮定して算出するパターン。
- 注29 2035年度までに15%生産性が向上(2020年度比)すると仮定して算出するパターン。
- 注30 内閣官房「我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議」(2024年2月)にて決定した「2030年度に向けた政府の中長期計画」。
- 注32 公益社団法人日本バス協会「国土幹線道路部会ヒアリング資料(令和5年10月5日)」より。