国土交通白書 2025
第1節 国土交通分野における施策の新展開の萌芽
省人化・省力化技術の利活用に関する取組として、少ない人員でもサービス供給が維持できるよう新技術等の導入を促進している。取組内容は、「技術で人を代替」、「技術で作業効率の向上」、「技術が資格・作業能力を補完」の大きく3つの分類に分けられる。
(技術で「人を代替」)
建設分野では、人に代わり自動で鉄筋結束作業を行うロボットの導入が進められている。
物流分野では、物流施設の機械化を目指し、倉庫に届いた荷物を配送先別に自動で仕分け出荷口に搬送する機械や伸縮自在のベルトコンベアによるトラックからの荷卸し作業の機械化が進められている。
(技術で「作業効率の向上」)
物流分野では、ダブル連結トラックの活用により、大型トラック1台で通常の2台分の輸送が可能になり、生産性向上が図られている。
また、ドローン物流の多数機同時運航の事例では、1人の操縦者により5機のドローンを全国4地点で同時運航させる実証に成功している。
(技術が「資格・作業能力を補完」)
建設分野では、国土交通省が推進するi-Construction 2.0の事例として、現場において自動施工を導入し、重機免許を持つオペレーターの操作を不要化している。
交通分野では、路線バスにおいて、特定の走行環境条件で自動運行可能なレベル4の自動運転バスを導入し、大型二種免許を持つ運転手が乗車せずに、営業運行を開始している。
次に、国土交通分野における各取組について分野ごとに記述する。
(1)建設分野における取組
国土交通省では、建設現場の生産性向上を図るため、2016年度から、i-Construction注2を推進しており、ICT施工や設計・施工におけるデジタル技術の積極的な活用等の取組を進めている。
また、将来にわたって持続的にインフラの整備・維持管理を行うために、2024年4月に更なる抜本的な建設現場の省人化対策として、「i-Construction 2.0」を策定し、取組を加速させている。これまでの「ICT等の活用」から、「自動化」を推進し、「施工のオートメーション化」、「データ連携のオートメーション化」、「施工管理のオートメーション化」により、今よりも少ない人数で、安全に、快適な環境で働く生産性の高い建設現場の実現を目指すこととしている。
資料)建ロボテック(株)
資料)国土交通省
①施工のオートメーション化
施工のオートメーション化とは、各種センサやAI等を活用し、自動的に作成された施工計画に基づき、1人のオペレーターが複数の建設機械の動作を管理するものである。
「施工のオートメーション化」の実現に向けて、自動施工の標準的な安全ルール等の環境整備や、異なるメーカー間の建設機械を制御できる共通制御信号の策定、人の立ち入らない現場において安全かつ効率的な作業を可能にする遠隔建設機械の普及促進等を行っている。
また、様々なシステムが活用されている建設現場においては、異なるメーカーの建設機械であってもリアルタイムの施工データを円滑に取得・共有することにより、建設現場をデジタル化・見える化することができる。さらに、現場で取得したデータを建設機械にフィードバックするなど双方向のリアルタイムデータを活用することで、施工の自動化に向けた取組を推進する。
資料)国土交通省
②データ連携のオートメーション化(デジタル化・ペーパーレス化)
「データ連携のオートメーション化」は、BIM/CIM等のデジタルデータの活用により、調査・測量、設計、施工、維持管理といった建設生産プロセス全体をデジタル化、3次元化することで、必要な情報を必要な時に容易に取得できるものである。これにより、調査の一部や問合せ、資料を探す手間や待ち時間の削減が実現される。
また、設計データを直接、施工データに活用することや、デジタルツインによる施工計画の検討等、現場作業に関わる部分の効率化を進めていく。さらに、BIツール等の活用により、紙での書類は作成せず、データを可視化し、分析や判断ができるようペーパーレス化(ASP(情報共有システム)の拡充といった現場データの活用による書類削減)などバックオフィスの効率化も進めている。
資料)国土交通省
③施工管理のオートメーション化(リモート化・オフサイト化)
施工管理のオートメーション化は、施工の自動化やBIM/CIM等によるデジタルデータの活用に加え、部材製作、運搬、設置や監督・検査等のあらゆる場面で有用な新技術を積極的に活用することで、建設現場全体のオートメーション化を進めるものである。
これまで立会い等の確認行為において活用していた遠隔臨場を検査にも適用するとともに、コンクリート構造物の配筋の出来形確認においては、デジタルカメラで撮影した画像の解析による計測技術も適用している。
また、小型構造物や中型構造物を中心に活用していたプレキャスト製品について、大型構造物についてもVFM注3(Value for Money)の評価手法の確立等を進めながら導入することにより、リモート化・オフサイト化が図られる。
資料)国土交通省
(2)物流分野における取組
国民生活や経済活動に不可欠な社会インフラである物流も、人口減少の下で、トラックドライバーの長時間労働、物流の小口・多頻度化の進行、非効率な積載といった課題に加え、2024年4月からトラックドライバーへの時間外労働の上限規制の適用に伴い、輸送能力の不足が強く懸念されている。
こうした物流の危機への懸念から、政府として、抜本的・総合的な対策として「物流革新に向けた政策パッケージ」(2023年6月関係閣僚会議決定)を策定したほか、中長期的な対策として、「2030年度に向けた政府の中長期計画」(2024年2月関係閣僚会議決定)を策定するなど、物流の適正化・生産性の向上の更なる推進を図っている。また、デジタル技術を活用した物流の効率化、自動物流道路といった多様な輸送モードの活用等の検討を進めることとしている。
①自動運転トラック
トラックドライバー不足が懸念される中、担い手不足の解消や物流の効率化に向けて、トラックにおける自動運転の活用も進めている。
国土交通省は、高速道路事業者等と連携し、2025年3月から新東名高速道路の一部区間(駿河湾沼津SAから浜松SAまで)において、深夜時間帯に設定された自動運転車優先レーンを活用し、実証実験を行っている。実証実験では、自動運転トラックが安全・円滑な走行を行えるよう、高速道路における合流支援情報、落下物情報、工事規制情報等の情報提供を通じた路車協調等、道路インフラ側からの支援を行っている。
今後は、自動運転車両の開発状況や物流ニーズ等を踏まえつつ、道路インフラ側からの支援を全国展開するとともに、自動運転トラックによる幹線輸送実証事業を通じた物流の効率化を検証し、自動運転物流サービスの社会実装を推進していく。
資料)国土交通省
②自動物流道路
「自動物流道路」は、道路空間に物流専用のスペースを設け、クリーンエネルギーを電源とする無人化・自動化された輸送手段によって貨物を運ぶ新たな物流システムである。これは、物流危機やネット・ゼロの実現といった社会の変化に対応することを目的としている。
国土交通省では、2027年度までの実験実施、2030年代半ばまでの第1期区間運用開始に向け検討を進めている。
自動物流道路が実現することで、増加傾向にある小口・多頻度輸送に24時間対応することが可能になる。また、人手による夜間長距離輸送が減ることにより、トラックドライバーの労働環境の改善につながることも期待される。
資料)国土交通省
資料)国土交通省
③ダブル連結トラック
トラックドライバー不足による物流停滞が懸念される中で、少ないドライバーで、より多くの荷物を運ぶためにダブル連結トラック注4の導入が進められている。ダブル連結トラックは、1台で通常の大型トラック2台分の輸送が可能であり、これまでドライバー2人を要して運んでいた荷物を1人のドライバーが運ぶことで、トラック輸送の省人化につながっている。
資料)国土交通省
(ダブル連結トラックの普及)
ダブル連結トラックを扱う物流事業者は年々増加していることもあり、国土交通省では、2024年9月に、ダブル連結トラックの通行区間を約5,140kmから約6,330kmに拡充するなど、更なる普及に取り組んでいる。
資料)国土交通省
(駐車マスの整備)
高速道路事業者は、ダブル連結トラックの通行区間拡充に併せて、駐車可能な駐車マスの整備を推進しており、サービスエリア等に、ダブル連結トラックのドライバーが確実に休憩できる予約制の駐車マスを設置するといった取組も見られる。2025年3月末には、187か所357台分のダブル連結トラック駐車マスの整備が完了している。
(運行手続の見直し)
国土交通省は2025年3月に、ダブル連結トラックの通行区間の拡充や許可件数が増加している状況を踏まえ、手続の利便性を向上させるため、「特殊車両通行許可制度」に加えて、即時通行可能な「特殊車両通行確認制度」を利用可能とした。
④物流の効率化
(物流施設の自動化・機械化)
物流施設の自動化・機械化は、サプライチェーンの結節点として重要な役割を果たす物流施設において、物流の停滞が生じないよう、作業の効率化の推進を図るものである。これにより、トラックドライバーの荷待ち・荷役時間の削減や、物流施設の省人化・省力化等が推進されている。
そこで国土交通省では、物流施設におけるシステムの構築や自動化・機械化機器の導入を支援している。例えば、自動化機器による倉庫内作業の省力化やAIカメラによるスムーズな受付、トラック予約受付システムの導入による荷待ち時間の削減等により、効率的な物流が実現するよう支援している。
資料)国土交通省
(共同配送による積載率の改善)
トラックドライバーが不足する中で、少ない人員で物流を維持していくためには、貨物自動車輸送における低い積載率の改善が重要となる。
積載率を向上させる取組として、複数の荷主の荷物を1台のトラックに混載して運ぶ、共同配送が進められている。また、共同配送を行う際に、AI等を活用し、最適な積付け計算による積載率の最大化を図る取組も行われている。
⑤ドローン物流の実現に向けた取組
物流分野においてドローンを活用することで、地域における輸配送が効率化かつ迅速化される。また、住民の買い物支援や医薬品配送等での活用も想定される。
2023年12月には、国土交通省が、ドローンの事業化を推進するため、「レベル3.5飛行」 制度を新設した。これは、デジタル技術の活用(機上のカメラによる歩行者等の有無の確認)等の一定要件を満たすことにより補助者や看板の配置といった従来の立入管理措置を撤廃するとともに、操縦ライセンスの保有、及び保険への加入により道路や鉄道等の横断を伴う飛行を容易化する飛行形態である。
また、2024年10月に国土交通省が設置した「多数機同時運航の普及拡大に向けたスタディグループ」において、官民の関係者で検討を進め、レベル3.5飛行を念頭に置いた多数機同時運航の普及拡大に向け、2025年3月に「無人航空機の多数機同時運航を安全に行うためのガイドライン」(第一版)を策定・公表した。
資料)日本航空(株)
(3)交通分野における取組
地域公共交通においては、多くの交通事業者がバス・タクシーの運転手不足等の問題をはじめ、深刻な経営状況にあるため、路線等の撤退や縮小が進み、地域の移動手段の確保に懸念が生じている。
このような中、国土交通省では、地域の移動手段の確保を図るために、「地域の公共交通リ・デザイン実現会議とりまとめ」(2024年5月)を公表し、自動運転サービスの社会実装やAIオンデマンド交通、MaaS注5等の新技術・デジタル技術の活用により、生産性の向上による持続性の確保や、利用者の利便性の向上を進めている。
①自動運転バス等
ドライバー不足等が懸念される中、「デジタル田園都市国家構想総合戦略」(2022年12月閣議決定)では、2025年度を目途に50か所程度、2027年度に100か所以上で、地域限定型の無人自動運転移動サービスの実現を目指している。
これを踏まえ、国土交通省では、一般道の自動運転について、2025年度には全都道府県での通年運行の計画策定又は実施を目指しており、自動運転の社会実装・事業化を推進している。
資料)国土交通省
一方、自動運転の安全性に関する審査は専門的であり、行政手続が長期化している。また、開発・導入コスト等が高いこともあり、新規参入が容易でないという課題も見られる。
これを受けて、警察庁と連携し、伴走型の支援体制の構築による審査手続の迅速化を図るとともに、先行実装地域で認可された自動運転車両を別地域でも活用しやすくするといった取組も支援している。
(自動車における自動運転技術)
「自動運転車の安全確保に関するガイドライン」(2024年6月)は、一定の条件下においてドライバーの存在を必要としない「自動運転レベル4」での走行を行う車両について、システムの責任範囲及び判断のあり方から、安全水準を明確化することを目的として策定された。今後は、一般道でのレベル4の移動サービス実現に向け、道路状況の情報提供や走行環境の整備に関する取組を推進していくとともに、路車協調システムの実装に必要な技術基準類や走行環境の整備に関するガイドライン等の策定に向け、実証実験等の取組も推進していく。
資料)国土交通省
②鉄道における自動運転技術
鉄道分野では、担い手不足による運行本数の減便や廃線等が相次ぐ中で、運転士や係員が同乗しない自動運転の実現に向けた取組が進められている。鉄道における自動運転は、安全面の配慮から、人や自転車が容易に立ち入ることができない一部の新交通システム注6等で実現されているものの、これまで踏切道がある等の一般的な路線では、運転士が乗務しない自動運転の導入はされていなかった。
国土交通省では、一般的な路線を対象とした自動運転の技術的要件の基本的な考え方について、「鉄道における自動運転技術検討会とりまとめ」(2022年9月)を公表し、これを踏まえ自動運転の技術基準(解釈基準)を改正した(2024年3月)。
また、踏切道がある等の一般的な路線であるJR九州香椎線において、GOA2.5(運転士以外の緊急停止操作等を行う係員が列車の先頭車両の最前部の運転台に乗務する形態)による営業運転が開始され(2024年3月)、他の事業者においても自動運転の導入に向けた検討が進められている。
資料)国土交通省
さらに、自動運転の導入に向けた検討状況等を踏まえ、前方支障物検知システム等自動運転に関する要素技術の開発を支援している。
(4)航空分野における取組
空港業務では、担い手不足の課題を踏まえ、また、観光需要の増加も見込まれる中、先進技術等による空港業務の生産性向上が求められる。
特に、グランドハンドリングは、航空機の機体や旅客、貨物・燃料等の搭載物の取扱い等に関わる航空機の運航に不可欠な業務であり、国土交通省では、各業務における先進技術の開発・実装に向けた取組を推進している。
①グランドハンドリングにおける省力化・自動化
(ランプバス・トーイングトラクターにおける自動運転技術)
混雑空港において、ランプバス注7やトーイングトラクター注8は、短時間に多くの旅客の輸送や貨物・手荷物の搬送を行うため、多くの人手が必要であり、自動運転の導入による搬送作業の無人化が進められている。
国土交通省は、産学官の連携により、空港制限区域内における「自動運転レベル4」の実現に向けた取組を進めている。また、自動運転車両の導入に当たり、センサやカメラ等の共通インフラの整備や運用ルールについてのガイドラインを公表しており、さらに、自動運転の導入に向けた実証実験を進めている。
今後は、2025年中の空港制限区域内における自動運転レベル4の実装に向けて、共通インフラの整備等の取組を進めていくこととしている。
資料)国土交通省
②保安検査業務の量的・質的向上の推進
空港の保安検査業務において、保安検査の量・質をともに向上させるため、高度な保安検査機器の導入に取り組んでいる。自動で手荷物の仕分け・搬送が可能なスマートレーン、自動的に非接触で人体表面の異物を検知するボディスキャナー等の先進的な検査機器の導入により、検査精度の効率化や保安検査員の負担軽減が進んでいる。
資料)国土交通省
本節の■2で紹介した新技術を含め、国土交通省が推進する省人化・省力化に資する新技術注9については、以下の資料にまとめられているため、紹介する。
| インフラDX |
|---|
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| 地理空間情報 |
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| 建設マネジメント |
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| オープンデータ |
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| 治水・上下水道 |
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| 港湾 |
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| 自動運転 |
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| 物流 |
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| 技術研究開発 |
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資料)国土交通省、国土地理院
- 注2 i-Constructionとは、建設現場、すなわち調査・測量、設計、施工、検査、維持管理・更新までのあらゆる建設生産プロセスにおいて、抜本的に生産性を向上させる取組であり、建設生産システム全体の生産性向上の取組のことである。
- 注3 支払い(Money)に対して最も価値の高いサービス(Value)を供給するという考え方。
- 注4 単車トラックの後ろにトレーラーを連結させて走行する車両。2019年より社会実装。
- 注5 MaaS(マース:Mobility as a Service)とは、地域住民や旅行者一人ひとりのトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス。
- 注6 都市内の交通機関のうち、自動運転を行うような新しいシステムを取り入れた軌道系交通機関。主としてガイドウェイシステムやモノレール等がある。
- 注7 空港旅客ターミナルと離れた場所に駐機した航空機との間を輸送する車両。
- 注8 手荷物・貨物を収容した荷車・コンテナ等をけん引する車両。
- 注9 「資料名」(出典,公表時期) ウェブサイト等は随時更新されるため公表時期省略。