国土交通白書 2025
第1節 国土交通分野における施策の新展開の萌芽
労働者の「処遇改善、担い手の拡大」の推進により、労働市場から、サービスの担い手として新たな労働参加を得ることが期待できるが、生産年齢人口が減少する中では、併せて省人化・省力化の推進も不可欠であり、先述のとおり、「省人化・省力化技術の利活用」の取組も推進している。
あわせて、労働需給が逼迫していく中、サービス供給の現場では、サービスの廃止・撤退といった最悪の事態を回避し、持続可能なサービスを維持していくために、努力が続けられており、やむを得ずサービスの低下等を国民に受容してもらうケースもあり得る。例えば、地域の実情に合わせて、サービスの供給方法を見直したり、サービス内容を合理化したりするなど、サービスの需要者・消費者(エンドユーザー)側の理解にも配意しつつ、様々な工夫・やり繰りで総合的に取り組む事例が見られるようになっている。
本白書では、以下の7つの類型に分け、それぞれの具体的な取組を紹介するとともに、併せて、国民の理解、受容の度合い等を見ていくこととする。
(1)限られた自治体人材が広域・多分野をまとめて対応
(2)官民の役割分担を見直し、民の活動領域を拡大
(3)民間の収益事業の中でインフラを整備・管理
(4)類似業務に拡張してより幅広いサービスを提供
(5)地域にある既存資源の協力を得てサービス提供
(6)重複排除を目指した役割分担や広域化
(7)ユーザー側の協力を得てサービス供給を一部縮小
(1)限られた自治体人材が広域・多分野をまとめて対応
我が国の公共インフラは、高度経済成長期以降、一斉に整備され、現在、老朽施設の割合が加速度的に高まる中、その適確な維持管理や更新の重要性が増している。
一方で、市区町村が抱える財政面、体制面の課題や、人口減少、DX進展等の社会情勢の変化に応じて適確にインフラ機能を発揮させる必要があることを踏まえると、個別インフラ施設のメンテナンスを継続するだけではなく、発展させた考え方のもと、トータルコストの縮減・平準化等を図りつつ、計画的・効率的なインフラの維持管理・更新を進める必要がある。
埼玉県八潮市において発生した流域下水道管に起因すると考えられる道路陥没事故も踏まえ、インフラの老朽化対策は喫緊の課題である。
①地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)
小規模自治体では、老朽化対策に必要な技術者が不足しており、これを支援することも重要である。市区町村の財政面・体制面の課題を踏まえ、地域に必要なインフラの機能・性能を維持していくためには、個別インフラ施設の計画的な修繕に加え、広域・複数・多分野のインフラを「群」として捉え、効率的・効果的にマネジメントしていく「地域インフラ群再生戦略マネジメント(群マネ)」を推進していくことが求められる。群マネでは「自治体の束」や「事業者の束」、「技術者の束」が重要であり、取組を通じ施設管理者が一定規模のインフラ施設を一体的・効率的にマネジメントすることが可能になるとともに、民間事業者にとっても地域建設業の経営安定化や体制確保(人員、資機材等)につながることが期待される。2023年度に選定したモデル地域(11件40地方公共団体)において取組を進めており、今後はモデル地域における検討により得た知見等を手引きに取りまとめ、全国展開につなげていく。
資料)国土交通省
(2)官民の役割分担を見直し、民の活動領域を拡大
多くの地方公共団体にとって、人口減少や公共施設の老朽化等に適切に対応しつつ、活気に溢れる地域経済を実現していくことは喫緊の課題となっている。PPP(Public Private Partnership)は、公共施設等の建設、維持管理、運営等を行政と民間が連携して行うことにより、民間事業者の創意工夫を活用し、財政資金の効率的使用や行政の効率化を図るものである。
国土交通分野においても、財政負担平準化や不足する地方公共団体職員の補完を目的として、各地域の実情に合わせ、官民連携事業が検討・実施されている。
また、地域に必要なインフラの機能・性能を維持するため、複数の地方公共団体で連携するなど、既存の行政区域にこだわらない総合的かつ多角的な視点をもって、インフラマネジメントに取り組む事例も見られる。
なお、国土交通省「国民意識調査」によると、官民連携(PPP/PFI)のように、行政の責任の下、行政の業務の一部を民間事業者に担ってもらう取組について国民の受容度をたずねたところ、「行政によるサービスの維持が望ましいので、サービスの維持に必要な範囲に限り担ってもらうべきである」(34.9%)、「民間事業者のノウハウを活かし効率的に業務を実施することが期待できるので、積極的に担ってもらうべきである」(33.5%)という結果であった。利用料金の値上げといった不安(14.5%)、住民に寄り添った運営が行われない不安(11.8%)、行政の業務実施のノウハウが失われる不安(5.3%)から反対する意見もあるが、約7割の回答者が、行政の責任の下、行政の業務の一部を民間事業者に担ってもらう取組について賛同していることが分かった。
※回答者総数3,000人(国内在住の18歳以上)。グラフは選択した回答者の比率を示している。
資料)国土交通省「国民意識調査」
①包括的民間委託
「包括的民間委託」とは、公共施設の管理・運営を受託した民間事業者が創意工夫やノウハウの活用により効率的・効果的に実施できるよう、複数の業務や施設を包括的に委託することである。包括的民間委託の導入により、市区町村にとっては、発注業務等の効率化が図られ、職員の負担軽減が期待できる。事業者にとっては、包括化により一定規模の業務を一定期間にわたり安定して確保できることから、 経営の安定化、新規投資や技術力向上への意欲をもたらすことが期待できる。
多摩市では、橋梁の維持管理において、複数年の包括的民間委託を活用し、長寿命化計画の改定等、一部行政業務を民間に委託している取組が進められている。
資料)国土交通省
②ウォーターPPPの推進
上下水道分野のウォーターPPPは、コンセッション方式注10(レベル4)と管理・更新一体マネジメント方式(レベル3.5)の総称であり、職員不足、施設の老朽化、水道料金や下水道使用料収入の減少等、地方公共団体の抱える課題を解決し、上下水道分野の持続性を向上させるためのひとつの有効な手段である。
レベル3.5は、レベル4に準ずる効果が期待できる官民連携方式として、また、水道、下水道、工業用水道分野において、レベル4に段階的に移行するための官民連携方式として、長期契約で管理と更新を一体的にマネジメントする方式である。
また、ウォーターPPPは、2022年度から2031年度の10年間で、水道・下水道ともに100件、工業用水道で25件の事業件数がターゲットに掲げられている注11。
さらには、水インフラの管理や更新を広域的・分野横断的な受け皿に一括して任せる広域型・分野横断型ウォーターPPPの形成を促進している。
資料)国土交通省
資料)内閣府
(3)民間の収益事業の中でインフラを整備・管理
①公募設置管理制度(Park-PFI)
公募設置管理制度(Park-PFI)とは、都市公園において、飲食店、売店等の公園施設の設置又は管理を行う民間事業者を公募により選定し、民間事業者が設置する施設から得られる収益を公園整備に還元することを条件に、民間事業者には都市公園法の特例措置がインセンティブとして適用される制度である。
Park-PFIの活用により、公共部分の整備に収益を充当させる仕組みが法定化されたことで、公園管理者は、効果的・効率的な公園の再整備が期待できる。また、民間事業者にとっても、公園という立地環境を活かしつつ、長期的な戦略をもって安定的な施設運営を行うことが可能となる。さらに、住民等の公園利用者側にとっても、公園の利便性が向上し、公園の周辺を含めたエリアの魅力向上につながる。
資料)国土交通省
②港湾環境整備計画制度(みなと緑地PPP)
港湾環境整備計画制度(みなと緑地PPP)は、官民連携による賑わい空間を創出するため、港湾における緑地等において、カフェ等の収益施設の整備と収益還元として港湾緑地等のリニューアルを行う民間事業者に対し、港湾緑地等の貸付けを可能とする制度である。
港湾管理者の厳しい財政制約等により、港湾緑地等の十分な維持管理や更新がなされず、老朽化・陳腐化が懸念されている中、みなと緑地PPPの活用により、良好な港湾環境の形成と港湾管理者の負担の軽減が期待される。
資料)国土交通省
③河川敷地の更なる規制緩和(RIVASITE)
原則として、民間事業者による河川敷地の占用は認められていないが、一定の要件を満たす場合に特例として民間事業者も占用が可能な「河川空間のオープン化」が推進されている。この取組は全国的に拡大しているものの、占用許可期間の上限が10年以内となっていることや占用許可が施設ごととなっていることで長期的な経営戦略がたてられないといった課題を有していた。こうした中、2023年5月に、更なる規制緩和として「RIVASITE」の社会実験を開始している。
「RIVASITE」では、民間事業者が、河川管理施設の整備や占用区域外の清掃・除草等を行うことを条件に、占用期間が最大20年まで保証され、占用範囲も施設ごとではなく、エリア一体の占用に拡大される。このような、河川敷地の官民連携による更なる「地域の活性化」と「河川管理の効率化」を進めていくこととしている。
資料)国土交通省
(4)類似業務に拡張してより幅広いサービスを提供
自動車運送事業者における人流・物流サービスの「かけもち」や、建設現場における建設技能労働者の作業範囲拡大等、従来のあり方とは異なる新しい事業展開により、限られた人材でより幅広いサービスを提供する取組が進められている。
①貨客混載
物流・人流サービスの持続可能性を確保するため、運送事業者が、旅客又は貨物の運送に特化してきた従来のあり方を転換し、空きスペースを活用して旅客と貨物を同時に運ぶといったサービスの「かけもち」を可能とする貨客混載の導入が進められている。2023年には、過疎地域に限定されていた貸切バス、タクシー、トラックについて、地域の関係者による協議が調ったことを条件として全国で貨客混載が可能となった。
貨客混載は二つの輸送を同時に行うため、到着に時間がかかるといったデメリットもあるが、担い手が限られた中でサービスを維持していくために、このような業種を横断した取組も進められている。
資料)国土交通省
国土交通省「国民意識調査」によると、「配達業務に併せて貨物車両の助手席等を利用した旅客を輸送する貨客混載の実施」について、目的地への到着に時間が掛かる可能性がある点を踏まえつつ、国民の受容度をたずねたところ、「問題なく受け入れられる」(6.2%)、「受け入れられる」(19.9%)、「やむをえず受け入れる」(47.0%)という結果であった。これに対し、「あまり受け入れられない」「到底受け入れられない」を含め、「受け入れられない」と回答したのは、全体の26.9%であった。
※回答者総数3,000人(国内在住の18歳以上)。グラフは選択した回答者の比率を示している。
資料)国土交通省「国民意識調査」
②多能工化
建設業における生産性向上の取組として、複数の異なる作業を連続して実施できる多能工(マルチクラフター)の活用が進められている。
多能工化によって、作業工程の中で工種の入替が発生しないことによる工期の短縮、手戻りの縮小、人材の有効活用等が実現される。建設技能労働者にとっては、能力を活かせる場が拡大し、適切な評価システムの下で、取得した資格等に応じた給与・地位の向上が期待できる。
多能工化への取組は、建設業だけではなく物流分野でも、一部で実施されている。例えば、労働時間の短縮に向けて、フォークリフト作業員が大型免許を取得し、ドライバーと互いの業務を補う取組が実施されている。また、倉庫内作業では、入荷・ピッキング・積込み等、多くの工程に対応できる多能工の活用も見られる。遅れている工程に多能工を集中させることで、倉庫作業全体の手待ち時間削減につながっている。
資料)国土交通省
③航空整備士制度の見直し
航空専門学校の入学者数が減少する中、今後の航空需要の増加に対応するため、国土交通省では、整備士の担い手確保に資する裾野拡大だけでなく、整備業務の生産性向上に向けた、リソースの有効活用や整備士養成・整備業務の効率化といった取組を進めている。
具体的には、運航整備士注12と航空整備士注13の整備現場の実態や、電子化等による最近の機体整備の変化などを踏まえ、我が国の整備士制度を大幅に見直し、資格の業務範囲の拡大や型式別資格の共通化など、整備人材の有効活用を推進している。
資料)国土交通省
(5)地域にある既存資源の協力を得てサービス提供
行政・民間・個人が所有する車両や人材等の地域資源を活用し、地域の足の確保やモビリティハブの機能強化等の取組が進められている。
①スクールバスの活用
本来、スクールバスは学生専用であるが、バス事業者の担い手不足を背景に、地域の輸送資源と捉え、通学時間帯における地域住民の混乗や空き時間の有効活用が、本来の用途を妨げない範囲で推進されている。
通学時間帯は学生優先であるため、地域住民にとって利用の一部制約とはなるものの、バスの減便・廃止が進む地域の足の確保につながっている。
国土交通省「国民意識調査」によると、「スクールバスや事業者の送迎バスの活用によるコミュニティバスの運行」について、時間によって利用できなかったり、車内の混雑が生じたりする不便がある点を踏まえつつ、国民の受容度をたずねたところ、「やむをえず受け入れる」(47.4%)が最も多く、「問題なく受け入れられる」を含め、「受け入れられる」と回答したのは全体の約8割であった。これに対し、「あまり受け入れられない」「到底受け入れられない」を含め、「受け入れられない」と回答したのは、全体の約2割という結果であった。
※回答者総数3,000人(国内在住の18歳以上)。グラフは選択した回答者の比率を示している。
資料)国土交通省「国民意識調査」
②公共・日本版ライドシェア
地域の足、観光の足を確保するため、公共ライドシェアや日本版ライドシェアの導入を進めている。
公共ライドシェアは、バス事業やタクシー事業によって輸送手段を確保することが困難な場合に、市町村やNPO法人等が自家用車を活用して運送サービスを提供する有償の旅客輸送である。
日本版ライドシェアは、2024年3月に、タクシー事業者の管理の下で、自家用車・一般ドライバーを活用した運送サービスの提供を可能とする、自家用車活用事業として創設されている。タクシー配車アプリデータ等により、タクシーが不足する地域・時期・時間帯を特定し、地域の自家用車・一般ドライバーを活用して不足分を供給している。
資料)国土交通省
③モビリティハブの機能強化
モビリティハブとは、複数の交通手段が集まる場所(結節点)のことである。バスや鉄道を待つ際、多くの高齢者が利用するほか、パブリックスペースとして周辺住民の憩いの場ともなり得ることから、利便性・快適性の向上が求められる。そこで、バス停や駅を整備する際、その場で買い物や郵便サービス等も利用できるような整備が求められる。地方公共団体と事業者が連携し、コンビニ店内にバス接近情報を表示するデジタルサイネージ等を設置し、店内のイートインスペース等で、雨や風の影響を受けることなく、快適にバスを待つことができる取組も、一部で開始されている。
資料)国土交通省
(6)重複排除を目指した役割分担や広域化
サービスの供給主体側で重複しているサービスについては、主体同士が連携・協働し、全体最適の観点から、適切な役割分担の下、サービスの一部廃止や統合等により、省力化を図る取組が見られる。また、事業者間で協力しサービスのエリアを広域化するなどの事例もある。
①幹線とフィーダー等による公共交通網の再編
複数拠点が利便性の高い公共交通で結ばれた「コンパクト・プラス・ネットワーク」によるまちづくりにおいては、適切な公共交通軸の設定が必要であり、地域の特性に応じた幹線交通や地域内フィーダー交通等の再編が見られる。公共交通軸とは、路線バスや地域鉄道等、定時定路線で運行される地域交通のことであり、「幹・枝・葉の交通」の考え方のうち「枝の交通」を担っている。
資料)国土交通省
国土交通省「国民意識調査」によると、「集約された路線バスの幹線と支線への乗換えを前提とする移動」について、移動の時間や手間が増える不便があることを踏まえつつ、受容度をたずねたところ、「やむをえず受け入れる」(51.7%)が最も多く、「問題なく受け入れられる」を含め、「受け入れられる」と回答したのは全体の約7割であった。これに対し、「あまり受け入れられない」「到底受け入れられない」を含め、「受け入れられない」と回答したのは、全体の約3割であった。
※回答者総数3,000人(国内在住の18歳以上)。グラフは選択した回答者の比率を示している。
資料)国土交通省「国民意識調査」
(エリア一括協定運行事業)
エリア一括協定運行事業とは、交通事業者が一定のエリアを一括して運行(エリア一括協定運行)する場合に、行政が長期・安定的な支援を行うもので、2023年4月に、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」(地域交通法)の改正に伴い新設されたものである。路線再編や重複路線を統合することにより、運行の効率化やアクセス時間の短縮等が図られ、安定的な運行を確保できる。
長野県松本市(松本地域)では、路線バス、市街地を走る周遊バス、郊外のコミュニティバス等、エリア全体の交通サービス事業形態を、松本市が一括でマネジメントし、重複路線の廃止・統合や交通空白地帯の解消、地域ニーズに応じた増便やルートの新設を進め、民間事業者が運営運行を担う「公設民営」体制注14へと移行している。この取組は、2023年9月に全国初の「エリア一括協定運行事業」に認定されており、利便性や持続可能性・生産性の高い公共交通ネットワークへの「リ・デザイン」を実現している。
資料)国土交通省
②交通事業者間の連携・共同経営
乗合バスの事業維持が困難となる中、複数の交通事業者が、共同経営計画の認可を受け、運行事業者間で重複する区間の便数やダイヤの効率化を図り、待ち時間の短縮や平準化等に取り組む事例がみられる。
資料)国土交通省
熊本県においては、域内の交通事業者と地方公共団体が連携して共同経営を実施し、交通の利便性を維持しつつ運行体制の効率化を実現している。一部で乗換えの必要性が生じたが、社会的影響も少なく事業者の省力化が図られている。
また、統合により新たに生み出した資源で路線の延伸も実現している。
資料)産交バス(株)
③乗合オンデマンド交通
新幹線の駅や空港等の主要交通結節点と観光地を結ぶタクシーや路線バスといった二次交通は、需要の季節・時間帯変動が大きく、繁忙期には多くの供給が必要となる。一方で、二次交通を担う交通事業者は、担い手不足により、二次交通そのものの維持が困難になっている。
このような担い手不足の中、先行的に課題の解決を図る交通結節点として、全国58か所の鉄道駅・空港等において、観光の足の確保・改善に向けたオンデマンド交通注15(乗合タクシー等)の取組・準備が進められている。また、オンデマンド交通のエリアを広域化することで、路線バスのエリアを新たにカバーし、一事業体制での運行を可能にし、効率化へ寄与している例もある。
乗合型のオンデマンド交通は、需要が多い場合には、配車までに時間がかかることや他の利用者の乗降場所によっては目的地まで迂回するという難点があるが、交通空白地や観光地における移動手段として、取組が進められている。
資料)国土交通省
(乗合タクシー)
乗合タクシーとは、タクシー車両(定員10人以下)を使用した乗合型の交通モードのことであり、主にバスが運行できない交通空白地域等において、区域運行型や路線不定期型のオンデマンド交通によって運行されている。観光スポットや宿泊施設・飲食店等を巡ることが可能な乗合オンデマンド交通は、MaaSとの連携等も見られ、外国人旅行者を含む多くの観光客に利用されている。
(事業者の連携)
一部の地域では、地方公共団体と鉄道事業者等が連携した二次交通サービスが導入されており、駅や主要観光施設等を結ぶオンデマンドバスの実証運行が見られる。また、鉄道事業者とタクシー事業者が連携し、鉄道の車内から降車駅の到着時刻に合わせて二次交通で利用するタクシーを予約できるサービスの実証実験も行われている。
事業者が連携することで、二次交通への乗継ぎの利便性が向上するとともに、観光の足の確保につながっている。
(7)ユーザー側の協力を得てサービス供給を一部縮小
担い手不足の影響により、従来のサービス供給の維持が難しい場合に、サービス供給を縮小し、縮小されたサービスの一部で需要者と協力して取り組む事例が見られるようになっている。
①荷物の多様な受取り方法
ECサイト等の普及によって、急速に増加した宅配個数は、宅配事業者の負担の増加につながっている。このような中で、宅配サービスを維持するために、受取り側(消費者)が多様な受取り方法を活用して、再配達の削減につなげることや、宅配を取り巻く関係主体間の更なる連携等が推進されている。
資料)国土交通省
(宅配ボックス等の活用)
宅配便が到着する日時に対面での受取りが難しい場合、各戸に設置された宅配ボックスや宅配バッグを活用することで、再配達を回避することが可能になる。宅配ボックスは、設置に費用がかかるといった課題もある一方で、置き配バッグは工事不要で比較的安価なため取り入れやすい。どちらも導入に費用がかかるものの、受取り側(消費者)の理解によって導入が進んでいる。
(共同ロッカーの活用)
共同住宅においては、各住戸の玄関前に宅配ボックスの設置が難しく、またオートロック機能のエントランスの場合には、住民不在時に配達員が玄関前に置き配をすることが難しい。そうした背景から、共同玄関等に設置された宅配ロッカーの活用が進んでいる。
戸数に対し、宅配ロッカーの数が十分でなく、荷物の長時間放置による満杯の状態で再配達になってしまわないよう、受取り側(消費者)が頻繁にチェックするなど共同住宅の住民同士の協力が求められる。受取り側(消費者)は、宅配ロッカーから自宅までの荷物の運搬といった負担があるが、不在時でも受取り可能な取組である。
(置き配等の推進)
再配達削減に向けた受取り側(消費者)の協力として、不在時にも荷物を受け取ることが可能な指定場所への置き配が挙げられる。置き配は悪戯や誤配、汚損等のリスクがあるが、受取り側(消費者)がリスクを受容することで成り立っている。また、共同住宅においては、オートロック機能を備えたマンション等であっても置き配ができるよう、担当の配達員のみが一時的にオートロックを解除し、入退出可能となるセキュリティシステムの開発・展開も進められている。
(自宅以外での受取り)
自宅以外の場所で受取りが可能となるよう、駅やコンビニ等に宅配ロッカーを設置する取組も進められている。このような誰でも利用可能なオープン型のロッカーを利用することで、再配達削減につながっている。
また、宅配事業者からコンビニエンスストアへ配達してもらい、店舗で受け取るという取組も展開されている。これにより、受取り側(消費者)は24時間いつでも、希望した場所で荷物を受け取ることが可能になる。
受取り側(消費者)が店舗等から荷物を運搬する必要があるが、負担を受容することで、再配達削減につながっている。
国土交通省「国民意識調査」によると、「自宅以外の場所での宅配便の受取り」について、受取場所へ出向く負担がかかることを踏まえつつ、受容度についてたずねたところ、「やむをえず受け入れる」(38.7%)が最も多く、「問題なく受け入れられる」を含め、「受け入れられる」と回答したのは全体の54.3%であった。これに対し、「あまり受け入れられない」「到底受け入れられない」を含め、「受け入れられない」と回答したのは、全体の45.7%であった。
資料)Packcity Japan(株)
※回答者総数3,000人(国内在住の18歳以上)。グラフは選択した回答者の比率を示している。
資料)国土交通省「国民意識調査」
(関係主体間の連携)
宅配事業者と受取り側(消費者)が情報共有するといった、関係主体間の連携も再配達削減に効果的である。一部の宅配事業者では、受取り側(消費者)に会員登録といった手間がかかるが、メールやアプリで事前に配達予定日を通知するサービスを行っている。これにより、受取り側(消費者)が、配達時間に合わせて在宅することが可能になり、荷物が届くことを認知しておらず、不在にするといったケースが解消される。また、メールやアプリから配達日時の変更も可能であり、一度で受け取れるよう受取り側(消費者)が選択できる。
国土交通省「国民意識調査」によると、サービスを維持するために需要者(サービスの利用者)が協力する取組の中で、「置き配やコンビニ・営業所受取りといった再配達を減らす取組」について、認知度・利用度をたずねたところ、「知らない」(31.0%)、「知っているが利用・参加したことがない」(30.8%)と過半数が利用したことがないという結果であった。
※回答者総数3,000人(国内在住の18歳以上)。グラフは選択した回答者の比率を示している。
資料)国土交通省「国民意識調査」
②住民参加型インフラメンテナンス
職員が不足している地方公共団体では、橋等の点検に人員が充てられないこともあり、一部の地方公共団体で、住民参加によるインフラメンテナンスの取組が進められている。
国土交通省「国民意識調査」によると、地域住民の手による橋等のメンテナンスについて、手間や労力の負担がかかる不便があることを踏まえつつ、受容度をたずねたところ、「やむをえず受け入れる」(44.9%)が最も多く、「問題なく受け入れられる」を含め、「受け入れられる」と回答したのは、全体の72.1%であった。これに対し、「あまり受け入れられない」「到底受け入れられない」を含め、「受け入れられない」と回答したのは、全体の27.9%であった。
※回答者総数3,000人(国内在住の18歳以上)。グラフは選択した回答者の比率を示している。
資料)国土交通省「国民意識調査」
③住民が検針サービスを代行する取組
一部の地方公共団体では、水道メーターの検針員不足が懸念されることから、スマートフォン等を活用して、検針業務を住民が代行する仕組みが導入されている。
- 注10 利用料金の徴収を行う公共施設について、施設の所有権を公共主体が有したまま、施設の運営権を民間事業者に設定する方式。
- 注11 内閣府「PPP/PFI推進アクションプラン(令和6年改定版)」より。
- 注12 日々の運航間の点検等を念頭に置いた資格(養成期間:約2~3年)。
- 注13 機体のすべての整備が実施可能な資格(養成期間:約5年)。
- 注14 締結した長期運行協定に基づき、行政が主体的に設定したエリア全体での交通サービスの提供について、市が5年間にわたり負担金(交通サービス購入費)を支出する「公設民営型」のバスネットワーク。
- 注15 運行経路・乗降地点・運行時刻が定められている一般的な路線バスとは異なり、経路・乗降地点・時刻のいずれか、あるいは、すべてに柔軟性を持たせることで、利用者の要求に応えて運行する乗合型の公共交通サービス形態。