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国土交通白書 2025

第2節 望ましい将来への展望

■2 みんなで支え合う活力あふれる社会が実現する将来の展望

 ここでは、「■1 国民の願う将来の社会像」における国民意識調査により得られた国民の願う将来の社会像を基に、我が国の将来予想について、3つの分野(働き方、省人化・省力化技術、サービス)ごとに記述し、より生産性が向上した社会についても言及する。

(1)未来の働き方

 活力あふれる社会では、サービスの供給主体間が連携した供給方法の見直しや労働者の処遇改善が進展し、効率的かつ柔軟に働ける「未来の働き方」が定着している。

(長時間労働に依存しない物流の実現)

 長距離輸送について、物流の中継輸送拠点の整備や輸送モードの適切な選定等を通じて、より効率的な輸送計画を策定することにより長時間労働が削減されている。

(建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用した処遇改善)

 建設技能労働者の経験や技能を業界横断的に登録・蓄積する建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用した建設技能労働者の処遇改善が期待される。

(マルチスキル化した労働者の活躍)

 人口減少した社会・地域において、限られた人員でサービスの供給力を維持するため、様々な工夫・やり繰りで総合的に取り組んでいる。

(2)未来の省人化・省力化技術

 活力あふれる社会では、省人化・省力化技術の開発・導入やICTを活用した業務効率化(DX)が進展し、インフラの建設・維持管理、物流輸送、地域公共交通における生産性が確保されている。

(先端技術によるインフラ維持管理の省力化)

 地方公共団体の技術系職員が減少していく中で、インフラの維持管理に係る生産性向上は喫緊の課題である。AIやIoT機器、カメラや各種センサを用いたインフラの診断技術等が開発される中、広範囲に敷設されている管渠の効率的なメンテナンスを安定的、持続的に管理していくため、衛星画像とAIを活用した取組が浸透している。

(複数の主体が協力した物流網)

 限られたトラックドライバーを効率的に活用する手段として、積載率の向上が挙げられる。国土交通省で実施する自動車輸送統計調査によると、常に満載で輸送した場合の輸送貨物の重量と輸送距離を掛け合わせたトンキロに対し、実際の輸送貨物の重量のトンキロを比較し、積載効率を算出したところ、営業用貨物自動車において積載効率は約40%であり、残る約60%は活用されていない状態であった。担い手不足が進む中で、より効率的な輸送が可能となるよう、AIによってより効率的な運行・配送計画を策定する試みが行われている。

(自動化される輸送)

 トラックに限らず、各輸送モードにおいて貨物輸送の担い手が不足する中で、新たな輸送手段として、貨物輸送を自動化する取組の検討が進められている。国内では「自動物流道路に関する検討会」において、既存の道路空間の利用を前提に、自動物流の目指すべき方向性、必要な機能や技術、課題等について検討が進められている。また、諸外国においても検討が進められており、米国では地下空間に配送管を展開し、その中で自動配送ロボットが配達を担う新たな輸送システムの実証実験が行われている。

(3)未来のサービス

 みんなで支え合う活力あふれる社会では、処遇改善や省力化技術だけでなく、サービスの供給サイドによる各種取組が需要者(国民)に受容され、サービス内容の合理化が図られている。

 人手を必要としない無人サービス、公共ライドシェア等による新たな担い手が活躍できるサービスや、よりコンパクトなまちづくりと公共交通網の再編等も実施されている。

(無人サービスの充実)

 人口減少した社会でも一定のサービス水準が確保されるよう、無人での商品の販売及び決済が行える店舗の実証実験等の取組が進められている。

(公共交通網を活かした持続可能なまちづくり)

 人口減少した社会では、地域の活力を維持するには、日常生活を支える医療、福祉、商業等の各種施設に加え、長距離の移動手段を持たない住民と施設をつなぐ公共交通網の維持が重要となる。地域ごとに異なる事情に合わせる必要があることから、地域住民を巻き込んだ熟議を通じ、持続可能なまちづくりが進展している。

(多様な移動手段)

 旅客の輸送をタクシーやバスに限定せず、自家用車や自動運転車両による輸送も含め、輸送手段を確保する取組が進められている。

(置き配やドローン等によるラストマイル輸送)

 中継輸送、ダブル連結トラックの利用やモーダルシフトが進むことで、都市圏間の長距離輸送が効率化されるなど、配達事業者の負担が軽減されている。

(国民、民間事業者、行政によるインフラメンテナンス)

 道路、橋梁、水道といった膨大なインフラストックのメンテナンスについては、地方公共団体単独で対応が難しいため、周辺地方公共団体との水平連携や、都道府県と市区町村の垂直連携が進み、より広域的で民間事業者のノウハウを活用した効率的なメンテナンスが行われている。

 また、自治会や町会といった住民で構成される任意団体が、橋や道路等の清掃等の美化活動に加え、軽微な修繕やチェックシートを用いた簡易的な点検の実施等、インフラ維持管理の一部を負担し、サービスの需要者自らサービスを提供する取組が実施されている。

(4)より省人化された未来

 人口減少した社会において、労働供給はもとより、様々なサービスが成り立たなくなるほど、需要が縮小することが確実視される。

 そのような状況において、各地域のニーズに沿ったサービスの供給が行われることが期待される。

(省人化・省力化が進んだ建設現場)

 デジタル技術を最大限活用し、少ない人数で、安全に、快適な環境で働く生産性の高い建設現場を実現することが期待される。

 ダム工事や河川整備等の大規模な土木現場における省人化・省力化技術として、i-Construction 2.0による取組が進んでいる。今後取組が更に進んだ現場においては、BIM/CIM等の技術を活かし、デジタル上での施工計画の検討が行われ、実際の建設作業では、自動化された建設機械によって、1人で複数台の建設機械施工の管理を現場外から行うことが可能となる。

 また、小規模な建設の現場においては、短い施工期間に工種が組み合わさった工事となることから、省人化・省力化技術の多くは導入コストに対して実運用期間が短く導入のメリットが小さいことから、導入しやすい器具の普及が必要となる。

(生産性向上と賃上げの推進)

 国土交通分野の様々な職業において、働き方改革が進められており、国土交通省においても働き方改革を下支えする施策を推進している。

 建設現場の自動化により、屋外作業や危険の伴う作業、厳しい環境で行う作業がなくなり、これまで真夏の暑い中、屋外で実施していた作業を、クーラーが効いた室内の快適な環境下に移行するなど、働く環境が大幅に改善されるとともに、生産性が大幅に向上している。

 これにより、賃金水準の大幅な向上が期待されるとともに、天候に大きく左右されず計画的に工事を進めることが可能となり、完全週休二日の確保など、他産業と比較しても遜色ない魅力ある就労環境の実現が期待される。さらには、働く環境の改善や、多様な人材が活躍できる場の創出により、多くの若者が、地図に残るものづくりに携わることができ、地域社会に貢献できる誇りとやりがいを感じる、新3K(給与がよく、休暇が取れ、希望が持てる)の建設産業の実現が期待される。