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国土交通白書 2025

第4章 心地よい生活空間の創生

第1節 豊かな住生活の実現
■1 住生活の安定の確保及び向上の促進

(1)目標と基本的施策

①「新たな日常」やDXの進展等に対応した新しい住まい方の実現

 働き方改革の進展やコロナ禍を契機として、多様な住まい方、新しい住まい方への関心が高まる中、地方、郊外、複数地域での居住等、国民の新たな生活観をかなえる居住の場の多様化を推進している。また、家族構成、生活状況、健康状況等に応じて住まいを柔軟に選択できるよう、既存住宅市場・賃貸住宅市場の整備を推進している。さらに、社会経済のDXの進展等を踏まえ、住宅分野においても、契約・取引プロセスのDXや生産・管理プロセスにおけるDXを推進している。

②頻発・激甚化する災害新ステージにおける安全な住宅・住宅地の形成と被災者の住まいの確保

 安全な住宅・住宅地の形成に向けて、ハザードマップの整備・周知をはじめとする災害リスク情報の提供、防災・まちづくりと連携し、ハード・ソフトを組み合わせた住宅・住宅地の浸水対策の推進とともに、地震時等に著しく危険な密集市街地の解消、住宅・住宅地のレジリエンス機能の向上等に取り組んでいる。また、災害発生時には、今ある既存住宅ストックの活用を重視して被災者の住まいを早急に確保することとしている。

③こどもを産み育てやすい住まいの実現

 こどもを産み育てやすく良質な住宅が確保されるよう、子育てしやすく家事負担の軽減に資するリフォームの促進とともに、若年世帯・子育て世帯のニーズに合わせた住宅取得の推進、こどもの人数、生活状況等に応じた柔軟な住替えの推進に取り組んでいる。また、良質で長期に使用できる民間賃貸住宅ストックの形成と賃貸住宅市場の整備を推進している。あわせて、子育てしやすい居住環境の実現とまちづくりに向けて、住宅団地の建替えや再開発等における子育て支援施設・公園・緑地、コワーキングスペースの整備等、職住・職育が近接する環境の整備とともに、地域のまちづくり方針と調和したコンパクトシティの推進等を行っている。

④多様な世代が支え合い、高齢者等が健康で安心して暮らせるコミュニティの形成とまちづくり

 高齢者、障害者等が健康で安心して暮らせる住まいの確保に向けて、バリアフリー性能や良好な温熱環境を備えた住宅の整備・リフォームを促進するとともに、サービス付き高齢者向け住宅等について、地方公共団体の適切な関与を通じての整備・情報開示を推進している。また、三世代同居や近居、身体・生活状況に応じた円滑な住替えが行われるとともに、家族やひとの支え合いで高齢者が健康で暮らし、多様な世代がつながり交流するミクストコミュニティの形成等を推進している。

⑤住宅確保要配慮者が安心して暮らせるセーフティネット機能の整備

 住宅確保要配慮者(低額所得者、高齢者、障害者、外国人等)の住まいの確保に向けて、公営住宅の計画的な建替え等やストック改善を推進するとともに、住宅確保要配慮者の入居を拒まないセーフティネット登録住宅(令和6年度末時点で943,143戸登録)の活用を進め、地方公共団体のニーズに応じて家賃低廉化等の支援を行っている。

 また、住宅確保要配慮者の民間賃貸住宅等への円滑な入居を促進するため、地方公共団体の住宅・福祉部局が居住支援法人(6年度末時点で1,029法人を指定)、不動産関係団体、福祉関係団体等、地域の様々な関係者と連携し設置する居住支援協議会の設立(6年度末時点で155協議会(全都道府県、117市区町村)が設立)を促進し、住まいに関する相談窓口から入居前・入居中・退居時の支援まで、住宅と福祉の関係者が連携した地域における総合的・包括的な居住支援体制整備を推進している。

 さらに、単身世帯の増加、持ち家率の低下等により、住宅確保要配慮者の賃貸住宅への居住ニーズが高まることが見込まれていることを背景として、「住宅確保要配慮者に対する賃貸住宅の供給の促進に関する法律等の一部を改正する法律」が6年5月に成立、同年6月に公布された。同法により、賃貸人と住宅確保要配慮者の双方が安心して利用できる市場環境の整備や、居住支援法人等が賃貸人と連携し、入居中のサポートを行う賃貸住宅(居住サポート住宅)の供給促進、住宅施策と福祉施策が連携した地域の居住支援体制の強化をより一層推進していくことで、誰もが安心して暮らすことができる居住環境の整備を進めることとしている。

【関連リンク】

住宅セーフティネット法等の一部を改正する法律について

URL:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000055.html

⑥脱炭素社会に向けた住宅循環システムの構築と良質な住宅ストックの形成

(ア)既存住宅流通の活性化

 既存住宅流通の活性化に向けて、基礎的な性能や優良な性能が確保された既存住宅の情報が購入者に分かりやすく提示される仕組みを改善し、購入物件の安心感を高めていく。具体的には、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づき、住宅の構造や設備について、一定以上の耐久性、維持管理容易性等の性能を備えた住宅(長期優良住宅)の普及を図ってきたところである(認定長期優良住宅のストック数(令和5年度末時点):159万戸)。また、既存住宅に関する瑕疵保険の充実、既存住宅状況調査や「安心R住宅」制度の普及、紛争処理体制の拡充等により、購入後の安心感を高めるための環境整備に取り組んでいる。

 加えて、既存住宅流通の活性化には、良質な既存住宅が適正に評価される環境を整備することも重要である。そのため、宅地建物取引業者や不動産鑑定士の適正な評価手法の普及・定着を進め、建物の性能やリフォームの状況が評価に適切に反映されるよう取り組んでいる。また、住宅ストックの維持向上・評価・流通・金融等の仕組みを一体的に開発・普及等する取組に対して支援を行っている。

(イ) 長寿命化に向けた適切な維持管理・修繕、老朽化マンションの再生円滑化

 適切な維持管理・修繕がなされるよう、住宅の計画的な点検・修繕と履歴情報の保存を推進している。加えて、耐震性・省エネ性能・バリアフリー性能等を向上させるリフォームや建替えに対して補助・税制面での支援を行い、安全・安心で良好な温熱環境を備えた良質な住宅ストックへの更新を図っている。また、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」に基づく管理計画認定制度等により、マンション管理の適正化や長寿命化、再生の円滑化を推進している。

 一方で、マンションを巡っては、建物と居住者の「2つの老い」が進行しており、外壁剥落等の危険や集会決議の困難化等の課題が深刻化する恐れがある。こうした状況を踏まえ、今後のマンション政策のあり方を検討するため、令和6年10月に「社会資本整備審議会 住宅宅地分科会 マンション政策小委員会」を設置し、7年2月に総合的な施策の方向性についてとりまとめが行われた。

 これを踏まえ、新築から再生までのライフサイクル全体を見通して、管理・再生の円滑化等を図るため、「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律案」を令和7年通常国会に提出した。

【関連リンク】

社会資本整備審議会 住宅宅地分科会 マンション政策小委員会

URL:https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/s204_mannsyonr601.html

(ウ) 世代を超えて既存住宅として取引され得るストックの形成

 2050年ネット・ゼロの実現に向け、2025年までにすべての新築住宅への省エネ基準適合の義務化を含め、より高い省エネ性能を有する住宅が市場において選択される取組を強化することで、ストックの質の向上を図っている。

 既存住宅については、省エネ改修への支援や、住宅の温熱環境と居住者の健康との関係を調査・周知しており、これらの取組によって、2050年にストック平均でZEH基準の水準の省エネ性能の確保を目指している。

 また、炭素貯蔵効果の高いCLT等の木材を利用した住宅・建築物の推進により、まちにおける炭素の貯蔵を促している。

⑦空き家の状況に応じた適切な管理・除却・利活用の一体的推進

 平成27年5月に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」に基づき、周辺の居住環境に悪影響を及ぼす空き家(特定空家等)の除却や、立地・管理状況の良好な空き家の多様な活用の推進等、着実に取組は進展してきた。

 しかし、使用目的のない空き家はこの20年間で約1.8倍に増加しており、今後も増加が見込まれている。これを踏まえ、空き家の除却等の更なる促進に加え、空き家が周囲に悪影響を及ぼす前の段階から有効活用や適切な管理の確保、所有者等の空き家の管理や活用を支援する「空家等管理活用支援法人制度」の創設等、対策を総合的に強化するため、「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律」(令和5年法律第50号。以下、「改正空家法」という。)が令和5年12月13日に施行された。

 改正空家法に基づく取組をはじめ、地方公共団体や民間事業者等による空き家の除却や活用等に係る取組に対して支援することにより、空き家対策を推進している。

【関連リンク】

住宅:空き家対策 特設サイト

URL:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/akiya-taisaku/

⑧居住者の利便性や豊かさを向上させる住生活産業の発展

 居住者の利便性や豊かさを向上させるために欠かせない住生活産業については、平時・災害時ともに担い手の確保・育成を図るとともに、更なる成長に向けて新技術の開発や新分野への進出等による生産性向上や海外展開しやすい環境の整備に取り組んでいる。

(2)施策の総合的かつ計画的な推進

①住宅金融

 消費者が、市場を通じて適切に住宅を選択・確保するためには、金利や家賃等に関する理解を深め、変動型や固定型といった多様な住宅ローンが安定的に供給されることが重要である。

 民間金融機関による相対的に低利な全期間固定金利型住宅ローンの供給を支援するため、独立行政法人住宅金融支援機構では証券化支援業務(【フラット35】)を行っている。証券化支援業務の対象となる住宅については、耐久性等の技術基準を定め、物件検査を行うことで住宅の質の確保を図るとともに、耐震性、省エネルギー性、バリアフリー性及び耐久性・可変性の4つの性能のうち、いずれかの基準を満たした住宅の取得に係る融資金利を引き下げる【フラット35】Sや、こどもの人数等に応じて融資金利を引き下げる【フラット35】子育てプラスを実施している。

 また、同機構は、高齢者が安心して暮らすことができる住まいを確保するため、住宅融資保険業務や証券化支援業務の枠組みを活用したリバースモーゲージ注1型住宅ローンの供給の支援(【リ・バース60】)を行っている。

②住宅税制

 令和7年度税制改正において、住宅ローン控除については、子育て世帯等の住宅取得環境が厳しさを増していること等を踏まえ、子育て世帯・若者夫婦世帯の借入限度額の上乗せ、及び床面積要件の緩和措置を令和7年も引き続き実施することとした。既存住宅の子育て対応リフォームに係る特例措置についても、住宅ローン控除と同様に、現行の措置を令和7年も引き続き実施することとした。

  1. 注1 所有する住宅及び土地を担保に融資を受け、毎月利息のみを支払い、利用者(高齢者等)が死亡したとき等に、担保不動産の処分等によって元金を一括して返済する住宅ローン商品。住宅金融支援機構の住宅融資保険業務や証券化支援業務の枠組み制度を活用する場合は、住宅の建設・購入等に関する融資に限られる。