国土交通白書 2025
第2節 自然災害対策
(1)多重性・代替性の確保等
風水害・土砂災害・地震・津波・噴火・豪雪・原子力災害等が発生した直後から、救命・救助活動等が迅速に行われ、社会経済活動が機能不全に陥ることなく、また、制御不能な二次災害を発生させないこと等を目指し、高規格道路の未整備区間の整備及び暫定2車線区間の4車線化、高規格道路と代替機能を発揮する直轄国道とのダブルネットワークの強化、災害時の道路閉塞を防ぐ無電柱化等を推進し、災害に強い道路ネットワークの構築を進め、鉄道・港湾・空港等の施設の耐災化、地震を想定した代替海上輸送に関する訓練の実施や緊急輸送体制の確立を図ることにより多重性・代替性を確保するとともに、利用者の安全確保に努めている。
(2)道路防災対策
大規模災害時の救急救命活動や復旧支援活動を支えるため、災害に強い国土幹線道路ネットワークの構築、レーザープロファイラ等を活用した土砂災害等の危険箇所の把握及び防災対策や、令和6年能登半島地震を踏まえた盛土対策(法面・盛土対策等)、震災対策(耐震補強等)、雪寒対策(防雪施設の整備等)、道路施設への防災機能強化(道の駅及びSA・PAの防災機能の付加、避難路・避難階段の整備)等を進めるとともに、大規模地震に備えた道路啓開計画の実効性を向上するため、令和7年4月に改正された「道路法」(昭和27年法律第180号)等に基づき、令和7年度内に、法定協議会での協議を経た上で、地方整備局単位の道路啓開計画を策定する。更に、啓開計画策定の指針を示したガイドラインを策定し、必要な内容を盛り込んだ計画作りを推進し、計画に基づいた実践的な啓開訓練を実施する。また、平成26年11月の「災害対策基本法」の改正を踏まえ、道路管理者による円滑な車両移動のための体制・資機材の整備を推進している。
さらに、発災時には、道路管理用カメラ等による状況把握や官民のプローブデータ等も活用した「通れるマップ」により関係機関に通行可否情報の共有・提供を実施している。
能登半島地震においては、防災道の駅「のと里山空港」(石川県輪島市)が支援物資の集配拠点や道路啓開活動の拠点として機能したほか、停電や断水状況下でも使用可能な防災コンテナ型トイレを防災道の駅「うきは」(福岡県うきは市)より被災地へ派遣するなど、「道の駅」が防災拠点としての役割を果たした。
また、令和6年3月までに、近年の自然災害の頻発化・激甚化を踏まえ、災害時に防災拠点としての利用以外の禁止・制限等が可能となる防災拠点自動車駐車場として、道の駅366か所、SA・PA146か所を指定した。能登半島地震においては、防災拠点自動車駐車場に指定されている道の駅「千枚田ポケットパーク」の駐車場の一部で道路法に基づく一般利用の制限を行い、道路復旧作業に活用した。
このほか、地方公共団体のニーズを踏まえた、津波や洪水による浸水から避難するため、道路の高架区間等の活用が可能な箇所において、避難階段等の整備を推進している。また、津波被害を軽減するための対策の一つとして、標識柱等へ海抜表示シートを設置し、道路利用者への海抜情報の提供を推進している。
【関連リンク】
令和6年1月8日プレスリリース
「水道施設の早期復旧を支援するため地方整備局等の職員を被災地に派遣」
URL:https://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo13_hh_000549.html
【関連リンク】
令和6年1月5日プレスリリース
「水道施設の早期復旧を支援するため職員を被災地に派遣」
URL:https://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo13_hh_000548.html
(3)無電柱化の推進
道路の防災性の向上や安全で快適な通行空間の確保、良好な景観の形成、観光振興の観点から、無電柱化推進計画に基づき無電柱化を推進しており、道路事業等実施時の原則無電柱化、狭隘道路等への占用制限の拡大、既設電柱の占用制限等の取組を行う。
今後は市街地等で防災上重要な区間を優先しつつ、観光地等にも配慮し整備を推進する。また、「無電柱化のコスト縮減の手引き(R6.3)」の活用、新技術・新工法の導入促進によるコスト縮減や設計・施工・関係者調整等を一体的に実施する一括発注等によるスピードアップに取り組む。
(4)各交通機関等における防災対策
空港については、平成30年の台風第21号や北海道胆振東部地震や令和元年房総半島台風により空港機能やアクセス機能が喪失し、多くの滞留者が発生したことを踏まえ、このような大規模自然災害による多様なリスクに対し、アクセス事業者を含めた関係機関が一体となって対応する「統括的災害マネジメント」の実現による自然災害に強い空港作りを目指している。
そのため、耐震対策や浸水対策等のハード対策に加え、ソフト対策として「統括的災害マネジメント」の考え方を踏まえ、各空港で策定された空港BCP注11に基づき、災害時の対応を行うとともに、訓練の実施等による空港BCPの実効性強化に取り組んでいる。
鉄道については、旅客会社等が行う落石・雪崩対策等の防災事業や、開通以来30年以上が経過する青函トンネルについて、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構が行う先進導坑や作業坑に発生している変状への対策等に対し、その費用の一部を助成している。
また、風水害・雪害等からの鉄軌道の安全確保を図るため、トンネル、雪覆、落石覆そのほかの災害等防止設備等の点検や、除雪体制の整備、災害により列車の運転に支障が生ずるおそれのある場合の当該路線の監視等の適切な実施、適切な計画運休等の実施等、災害に強く安全な鉄道輸送の確保のために必要な対応を行っている。加えて、近年、豪雨災害が激甚化・頻発化していることを踏まえ、貨物鉄道ネットワークも含めた豪雨対策等を推進している。
さらに、令和2年12月に取りまとめられた「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づき、豪雨対策や浸水対策、耐震対策、老朽化対策を7年度までの間に集中的に実施することとしている。
被災した鉄道に対する復旧支援については、「鉄道軌道整備法」に基づく災害復旧事業費補助により、地震や豪雨等の災害で被災した鉄道の早期復旧を支援している。また、特に大規模な災害で甚大な被害を受けた鉄道において、事業構造を変更し、公的主体が鉄道施設を保有する場合に、国の支援を手厚くし、復旧を強力に支援している。
港湾については、「令和6年能登半島地震を踏まえた港湾の防災・減災対策のあり方」(令和6年7月交通政策審議会答申)において、災害時の海上からの円滑な輸送のため、災害時の海上支援ネットワークの形成のための防災拠点機能の確保を進めていくことが必要とされたところ、港湾施設の耐震化の更なる推進や、大規模災害時でも港湾機能を維持するため、関係機関と連携し、地方港湾を含めた港湾BCP・広域港湾BCPの策定・改訂やそれに基づく防災訓練の実施、衛星・ドローン・カメラ等を活用した港湾における災害関連情報の収集・集積の高度化等、災害対応力強化に取り組んでいる。
(5)円滑な支援物資輸送体制の構築等
首都直下地震や南海トラフ巨大地震等の広域かつ大規模な災害が発生し、物流システムが寸断された場合、国民生活や経済活動へ甚大かつ広域的な影響が生じることが想定される。被災者の生活の維持のためには、必要な支援物資を確実・迅速に届けることが重要であることから、災害時における円滑な支援物資物流を実現するため、引き続き、地方ブロックごとに国、地方公共団体、物流事業者団体等の関係者が参画する協議会等の開催、物流専門家の派遣を含む地方公共団体、物流事業者団体等との災害時協力協定の締結の促進、「ラストマイルにおける支援物資輸送・拠点開設・運営ハンドブック」の活用促進に向けた周知、新たな民間物資拠点のリストアップの促進を行った。また、災害時等におけるサプライチェーンの維持、円滑な支援物資の流通確保のため、非常用電源設備の導入を推進し、物流施設の災害対応能力の強化を図るため、非常用電源設備導入の支援を行っている。
- 注11 空港全体としての機能保持及び早期復旧に向けた目標時間や関係機関の役割分担等を明確化した空港の事業継続計画(A2(Advanced/Airport)-BCP)。

