(イ)JR株式の処分

〜JR東日本、西日本を皮切りに早期売却を推進


 

(a)清算事業団のJR株式の保有

 国鉄改革により新たに発足したJR各社の株式については、債務処理に充てるため清算事業団で保有することとされた(株式数919万株、額面評価額約0.5兆円)〔1−4−6表〕

 

 

(b)JR株式基本問題検討懇談会と株式処分の基本方針の確立

 JR株式の処分については、2年3月から、JR株式の処分に関し、運輸省としての指針を得るため、「JR株式基本問題検討懇談会」が開かれ、3年5月には、できる限り早期に効果的な売却を行うこと、売却に当たっては、公正な価格決定を行うとともに、広く国民に購入機会を提供し得るよう公正かつ簡明な手続き、方法によること、証券・金融市場の動向へ十分に配慮すること等を内容とする「JR株式の売却に関する意見」が運輸大臣に提出された。

 

(c)JR東日本株式の売却・上場

 運輸省では、4年8月には、4年度の株式売却の対象会社をJR東日本に決定するなど、準備を進めたが、株式市況は、日経平均株価が元年末にピークに達した(3万8,915円)後急落し、2年末には2万5千円を割り込み、3年末から4年春まで、株価低迷のため新規公開は事実上停止しており、4年8月には日経平均株価が1万4先円台にまで下落する等低迷した。このため、経済対策閣僚会議により出された「総合経済対策」において、証券市場の活性化対策の一環として、政府保有株式の売却の凍結等が示され、JR東日本株式の4年度の売却は見送られた。
 5年度に入り、日経平均株価は、2万円から2万1千円の間で推移する等回復し、株式市場の動向も落ち着きを見せたため、JR東日本株式の売却が行われ、10月26日に東京証券取引所等4証券取引所における上場が実現した。このときの売却株式数は、発行済株式数400万株中250万株、売却収入は1.1兆円であった。

 

(d)JR西日本株式の売却・上場への取り組み

 JR東日本に続く新規株式売却対象会社については、6年6月の資産処分審議会答申を踏まえ、同月、JR西日本とすることが決定され、同社株式の売却・上場に向けての手続きが進められたが、日経平均株価が6年9月頃には2万円を割る等株式市場をめぐる状況等から、JR西日本株式の6年度内の売却上場は見送られた。
 翌7年度においても、7年1月の阪神・淡路大震災により、JR西日本が6年度決算で上場基準を達成することができなかったこと等のため、前年度に続き株式の売却・上場の断念を余儀なくされた。
 一方で、売却方法について検討を行い、7年12月の資産処分審議会答申において、株式の新規売却については、現行の入札と売出しの組合せ方式に改善を講じた「入札と売出しの並行実施方式」が、適切であるとされた。

 

(e)JR西日本株式の売却・上場の実施

 8年度においては、JR西日本株式の売却について、7年12月の答申を踏まえて「入札と売出しの並行実施方式」で行うこととし、所要の準備を進め、同年10月8日、東京証券取引所等6証券取引所に上場を果たした。売却株式数は発行済株式数200万株中136.6万株の売却、売却収入は0.5兆円となった。

 

(f)JR株式売却のための今後の取り組み

 JR株式の処分は、JR各社の完全民営化と同時に、清算事業団の債務償還を図る観点からも、売却・上場のための条件が整い次第、速やかに進めていくことが必要である。
 運輸省・清算事業団としては、今後JR東海株式の売却・上場及び既に上場を果たしたJR東日本及びJR西日本の残株式の売却について検討・準備を進めていくこととしている。その際には、6年6月の資産処分審議会答申を踏まえ、完全民営化に至る段階が3社間でできるだけそろうよう配慮することとしている。
 一方、JR北海道、JR四国、JR九州及びJR貨物会社の各会社は、厳しい経営状況の中で現時点において直ちに株式上場手続を進めることは困難であると考えられるが、本州3社と同様、完全民営化及び国民負担軽減の観点から、なるべく早期に売却を行う必要があり、そのため、その前提となる経営基盤の強化の方策について検討を行っているところである。