(ア)過去債務問題の背景


 ドイツは1990年に統一されたが、統一前の旧東西ドイツには、ドイツ帝国鉄道(DR:東ドイツ国鉄)、ドイツ連邦鉄道(DB:西ドイツ国鉄)が存在していた。DRに関しては、旧東独時代は自動車の入手困難さ、計画経済体制下での一定の鉄道需要の保証等の事情から鉄道依存度が高かったものの、ドイツ統一による自由経済体制への移行に伴い、自動車との競争にさらされることとなり、これにコストの急騰などの要因も加わって、急速に業績は悪化した。1991年には旅客、貨物ともに輸送量は1990年に比べほぼ半減し、43億マルク(約3,182億円:1マルク=約74円で換算(平成8年9月末現在)。以下同じ。)の欠損を計上していた。また、DBに関しても、1970年から1990年までの20年間で旅客輸送シェアについては8.4%が6.2%に、貨物輸送シェアについては39.9%が24.7%ヘそれぞれ低下するなど輸送実績が低迷を続けたため、1973年以降の西ドイツ政府によるDBに対する利子補給措置にもかかわらず、累積債務額は135億マルク(約9,990億円)から440億マルク(約3.3兆円)に増加していった。
 以上のように、DB及びDRの債務については、さらに1994年に約700億マルク(約5.2兆円)と見込まれた債務がその後10年間に少なくとも約3,800億マルク(約28兆円)に達する見込みであったことから、将来的に鉄道が交通機関として再生を遂げ、連邦財政の危機を回避させるという背景の下に、1994年、過去債務についての抜本的な処理を含む国鉄改革が実施されることとなった。