(イ)債務処理に向けての取り組み


 ドイツでは、1994年1月国鉄改革が行われ、業績の悪化していた旧東西ドイツ国鉄は統合され、ドイツ鉄道株式会社(DBAG)が設立された。DBAGは、鉄道施設の所有者となり、その建設、維持、運営を行うとともに、これを担当する部門と区分された旅客輸送部門(遠距離と近距離に区分)と貨物輸送部門を有することとなった。鉄道施設保有・管理部門についてはDBAGの他の旅客輸送部門と貨物輸送部門及びこれらと同一の条件下で鉄道施設を借り受けるDBAG以外の鉄道事業者からの使用料をもって収入としている。DBAGの鉄道施設保有・管理部門、旅客輸送部門・貨物輸送部門等は将来的には1999年初までにそれぞれ部門毎に独立の会社として分割することが予定されている。
 1993年末で約660億マルク(約4.9兆円)にのぼる旧東西ドイツ国鉄の過去債務については、新たに設立された連邦の機関である連邦鉄道財産機構(BEV)に全て承継され、DBAGには承継されなかった。BEVは、債務の承継と併せてDBAGの営業上不要な不動産等(評価額約133億マルク(約9,842億円))も承継した。
 BEVが承継した約660億マルクの過去債務の償還に充てる財源としては、一般財政支出のほか、BEVの不動産の売却収入があてられており、償還のための借入れは実施されていない。
 この過去債務については、これまでのところ、その発生年度に利子の支払いが行われており、元本についても96年度から償還が開始されている。96、97年度各3億マルク(約222億円)、98年度以降は少なくとも年間28億マルク(約2,072億円)の元本償還を行うことが予定されていることから、過去債務は純減に向かう見込みとなっている。
 また、94年からは旧東西ドイツ国鉄の過去債務の償還等により一般財政需要が増大することから、鉱油税の引き上げが行われ、94年度では約77億マルク(約5,698億円)の増収があった。
 よって、国鉄改革に伴いBEVが承継した債務については連邦が無制限の責任を負うこととされているため、ドイツの過去債務処理の最終責任については連邦政府に帰属することとなっている。