(2) 新東京国際空港の整備に向けて


 未買収地問題を含む成田空港問題については、平和的に話し合いで解決するべく最大限の努力をはらってきたが、千葉県等の地元自治体や住民代表も参加して、空港と地域の共生の道を話し合うための「成田空港問題円卓会議」で真摯な議論が積み重ねられた結果、平行滑走路等の整備の必要性について理解が得られたところである。
 このような動きの中で、7年1月、円卓会議には参加していなかった空港建設反対派である小川派の農民から総理大臣及び運輸大臣宛にこれまでの空港づくりについて反省を求める書簡が発出され、国側としても空港建設にかかるこれまでの事態について改めて遺憾の意を表した書簡を閣議に報告の上発出した。これに対し、小川派は派としての反対運動の終了を表明し、7年7月には、元小川派の農民と国等との間で裁判を通じて争ってきた問題を解消するとともに、今後対等の立場に立ってこれからの空港建設の進め方について話し合うことに合意した。さらに8年4月には、空港用地内の地権者である元小川派の代表が空港内用地約3.2haを空港公団へ譲渡し、空港用地外に移転することに合意し、7月には売買契約を締結した。さらに11月には、同じく空港用地内の地権者である同氏の実弟も空港公団との間で空港内用地約1.9haの売買契約を締結した。
 また、7年6月には、成田空港第2旅客ターミナルビル南側エプロン部分に存する一坪共有地(いわゆる「梅の木共有地」)について、共有持分権が元地主に返還され、その元地主から当該土地の所有権を空港公団が取得し、7年12月よりエプロンとして供用されている。
 この他にも、8年1月には、元熱田派代表と国との間で畑の作物等の被害にかかる損害賠償請求事件について裁判上の和解がなされるなど、話し合い解決に向けて具体的な動きがでてきている。
 空港と地域との共生については、円卓会議の結論を受けて、7年1月に学者、地域代表等からなる「成田空港地域共生委員会」が設置されたが、同委員会は、騒音対策の充実をはじめとする円卓会議の合意事項の実施状況について点検等を行うことにより空港と地域との共生の実現に資することを目的としている。円卓会議の合意事項等共生策については、民家防音工事の再助成や失われた緑・林の回復等その多くの部分は既に実現に着手しているところであり、また、新東京国際空港公団法の改正により、8年7月には、地域との共生策の一層の充実をめざして空港公団の本社を成田空港内に移転した。
 共生委員会はその点検業務が一巡したことから、8年8月には、共生策の実施のほか、空港整備、地域整備の全体像とその手順を具体的に明示するよう国・公団に対し要請してきた。運輸省では、この要請を受けて、10月末に「今後の成田空港と地域の共生に関する基本的考え方」を提示したところであり、さらに年内を目途に空港整備、地域整備を含めた基本的考え方の全容を提示することとしている。また、9年度できるだけ早くその全体像をとりまとめることとしている。
 このように運輸省としては、成田空港問題の一日も早い解決をめざして、地域と共生でさる空港の整備に取り組んでいるところである。