2 豊かな国民生活を支え、発展させる社会資本整備


 競争的な市場環境を整備するためには、その前提として交通インフラの整備が必要である。交通インフラの整備が進まないと、例えば東京国際空港(羽田)や大阪国際空港(伊丹)の発着回数に制約があったため、東京、大阪関連路線のダブル・トリプルトラック化が進まなかったように、容量の制約から競争を促進できないという問題が生じる。
 また、ゆとりと豊かさの実感できる社会の実現のためには、都市部における通勤・通学混雑の緩和、国土の均衡ある発展、地域の活性化等が必要であるが、そのための交通インフラ等市場原理の活用のみでは整備が進まない社会資本の整備も求められている。

(1) 高速化、快適性の向上をめざす鉄道整備

 鉄道サービスの充実については、通勤・通学時の混雑緩和や都市間移動のスピードアップ、道路の混雑解消、環境負荷の小さい交通体系の構築の要請等の観点から国民の強い要望があり、これらを踏まえて幹線鉄道の高速化や都市鉄道の輸送力増強等を進めてきている。
 幹線鉄道では、北陸新幹線高崎・長野間が、9年10月1日に開業し、これにより、在来線の特急で約2時間40分かかっていた東京〜長野間が1時間20分程度と約半分に短縮された。また、新幹線と在来線の直通運転化を図った秋田新幹線は、9年3月に開業し、これにより、東京〜秋田間の所要時間は48分短縮され(最も所要時間の短い列車同士での比較)、盛岡駅での乗換えの必要がなくなった。
 都市鉄道では、東京圏の大手民鉄5社が、特定都市鉄道整備積立金制度を活用して複々線化等の大規模な輸送力増強工事を進めているほか、地下鉄やニュータウン鉄道の整備、JRによる鉄道整備、貨物線の旅客線化も進んでいる。
 今後、幹線鉄道については、国土の均衡ある発展と地域の活性化に資するため、整備新幹線をはじめとした高速鉄道ネットワークの整備が重要な課題となっており、整備新幹線の整備、在来線と新幹線との直通運転化、スピードアップのための線形の改良、新型車両の開発等を推進していく必要がある。
 また、都市鉄道については、通勤・通学時の混雑緩和が重要な課題となっており、大都市圏におけるラッシュ時の混雑率を150%(東京圏においては当面180%)にすることを目標として、新線建設、複々線化、列車の長編成化、列車本数の増加等による輸送力増強を進める必要がある。また、新しい住宅地の供給、通勤・通学時間の短縮等の観点からも、都市鉄道の整備が強く求められている。
 しかしながら、鉄道整備は、建設費の増大、用地確保の困難等から、ますます膨大な資金と長期の懐妊期間を要するものとなっており、投資リスクも大きくなってきている。したがって、鉄道整備を進めるためには、財政、政策金融、税制、運賃政策、地域社会の支援等について、あらゆる観点から検討を行い、鉄道事業者はもとより、国、地域社会、利用者等の関係者もそれぞれ応分な負担を行い、鉄道整備の推進のため一層努力していくことがますます重要となっている。

(2) 航空需要の増大に対応する空港整備

 我が国の航空輸送は、時間価値の上昇等に伴う高速ニーズの高まりや内外の人的・物的交流の拡大等を背景として、旅客・貨物ともに急速な発展を遂げている。
 6年9月に開港した関西国際空港は、開港以来、順調に利用者数が増加し、新規路線の開設、増便が続いている。特に、国際線については、同空港の開港前、大阪国際空港(伊丹)では1日当たり28便であったものが、関西国際空港では、9年9月認可便数で91便に増加している〔1−2−1図〕。特に、新東京国際空港(成田)の空港容量に制約があるためこれまで我が国に乗り入れていなかった国、都市との間を結ぶ路線の開設が多くみられる。
 また、名古屋空港の利用者はここ十年来、全国の伸びを上回る増加を示しており、特に国際線の利用者はこの10年間で年平均20%の伸びとなっている。さらに将来の国内、国際航空需要の伸びを勘案すると、滑走路等の処理能力は、21世紀初頭には限界に達するものと予測されている。
 今後、我が国が経済的・社会的に安定した発展を持続し、国際社会に一定の地位を確保していくためには、航空需要に対応した空港の整備、とりわけネットワークの拠点となる国際ハブ空港や国内拠点空港の整備を時機を失うことなく進め、空港がそのボトルネックとならないよう努めることが喫緊の課題である。このため、新東京国際空港の整備及び東京国際空港の沖合展開事業を引き続き推進するほか、関西国際空港の2期事業について上下主体分離方式により8年度から着工し、さらに、中部新空港については、定期航空路線の一元化を前提に、関係者が連携して、総合的な調査検討を進め早期に結論を得た上、その事業の推進を図る。また、首都圏における新たな拠点空港については、事業着手をめざし総合的な調査検討を進める。
 地域拠点空港及び地方空港については、継続事業を中心として整備を進めるとともに、需要への対応を基本としつつ、既存空港の高質化等所要の整備を図る。


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