3 ゆとりと豊かさの実感できる社会をめざして


(1) 大都市圏における快適な交通をめざす取組み

 (ア) オフピーク通勤の推進

 (イ) 道路混雑の緩和

(2) 高齢者、障害者等にやさしい運輸サービスの実現

 我が国社会の急速な高齢化の進展、障害者の自立と社会参加の要請の高まりに適切に対応するため、今後一層、こうした利用者に配慮した公共交通機関の整備が求められている。
 このため、「公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者等のための施設整備ガイドライン」(6年3月改定)等に基づき、鉄道駅等におけるエレベーター・エスカレーターの設置、誘導・警告ブロックなど情報提供機器の導入、ノンステップバスの導入等の対策を進めるよう交通事業者に対して指導を行う。
 特に整備が急がれている鉄道駅における障害者対応型エレベーター等については、(財)交通アメニティ推進機構を通じ補助を行っているが、同財団は超低床式バス等の導入、鉄道駅等におけるエレベーター等の設置事業についても民間等からの出資を原資とした補助を行い、さらに一般利用者等への啓発広報、情報提供及び調査研究を行っている。
 また、ノンステップバス等の導入については、バス活性化総合対策補助制度による支援を行う。また、日本開発銀行による融資を通じて鉄道駅、旅客船・空港ターミナルにおける高齢者・障害者等のための施設整備を促進する。
 さらに、建設省と連携して、「駅内外歩行者快適化作戦」を実施し、鉄道駅のエレベーター・エスカレーターの設置やバスの総合案内システムの設置等に対する支援を行う。

(3) 利用者が安心して利用できる交通運輸の確保

 市場原理の活用によるサービスの向上が期待される一方で、例えば、過度な競争によるサービスの質の低下や、運賃の多様化による利用者の混乱を指摘する声もあり、市場原理の活用のみでは利用者利益の確保が必ずしも十分に図られないおそれがある。
 このため、例えば、鉄道及び航空運賃について、運賃の上限額の算定式及びその算定に必要なデータの公開等を行ってきている。また、主催旅行について、旅程保証制度を創設し、旅行者の保護を図っている。
 今後も、運賃の高騰防止、運転者の資質の低下の防止等利用者が安心して利用できる運輸サービスを確保するための措置を講ずるとともに、市場原理を有効に機能させるため、利用者が交通機関を自由に選択できるよう、その判断の基礎となる情報を容易に入手できるような情報公開を進めていく。

(4) 地域における生活の足の確保

 過疎地域等において運行しているバスや鉄道、あるいは離島航路や離島航空路は、過疎化の進行、マイカーの普及等により利用者の減少傾向が続いており、その経営は大変厳しいものとなっている。
 バスについてみると、効率の良い路線からの内部補助によって支えられているのが実態であるが、自家用車の普及等によってこれらの路線においても利用者のバス離れが進行してきており〔1−2−2図〕、大半の事業者が赤字経営を余儀なくされている〔1−2−3表〕。このため、内部補助や事業者の努力では経営を維持していくことが困難な路線で、生活の足として維持することが必要な路線については、運輸省においてもこれらバス事業者の経営努力を前提に所要の助成措置を講じている。また、離島航路等についても生活の足のみならず、生活の基盤ともなっている場合もあることを考慮し、同様に助成措置を講じて路線の確保を図っている。
 今後、需給調整規制が廃止された場合、競争の促進によりサービスの向上が期待される反面、内部補助によってサービスの維持を図ってきた比較的需要の少ない路線については、その存続が危ぶまれサービスの質の低下が懸念される。しかし、地域のバス、離島航路等公共交通機関は地域住民の生活の足として重要な役割を果たしている。
 このため、運輸政策審議会において検討が行われている今後の具体的な方策を踏まえ、今後とも生活に不可欠な足となっている地域におけるバス交通、離島航路等の生活交通の維持を図っていく。

(5) 観光を通じた地域振興

 国民が豊かさを実感し、ゆとりある生活を実現するためには、国と国、地域と地域の間といった国内外の人的交流の活性化による相互理解の増進を図るとともに、観光振興を通じて地域経済の活性化、雇用の創出等の地域振興を効果的に実施していくことが重要である。このためには、陸海空の交通システムの整備・充実に加え、地域の自然、伝統・文化等の観光魅力を活かした街づくり、受入施設等の社会的インフラの整備が必要である。
 以上の観点から、8年4月に提言された「ウェルカムプラン21(訪日観光交流倍増計画)」や、これを受けた「外国人観光旅客の来訪地域の多様化の促進による国際観光の振興に関する法律」(9年6月施行)に基づき、地域の特性を活かした観光ルートの形成等地方の観光地への誘客を通じた地域振興のための各種施策を講じる。
 また、国内観光を通じた地域の活性化を図るため、国内観光促進協議会、旅フェア、観光立県推進地方会議等の開催による観光需要の喚起や国際交流村、家族キャンプ村の整備等による魅力ある観光地づくりに取組む。さらに、国民生活のゆとりと活力の増進に資する充実した余暇活動の実現のため、「ゆとりある休暇」推進協議会を開催しつつ、連続休暇の普及拡大、充実した休暇を過ごすための環境整備を図る。

(6) 安全で災害に強い交通運輸の確保

 交通運輸の分野では、事故の発生が人命損傷につながる可能性が高いことから、従来より安全の確保は、最も基本的な課題である。したがって、交通施設・機器が安全度の高いものとして整備され、かつ良好に保守されるようにすること、交通従事者の運転技術とモラルを高い水準に維持すること、運行(航)管理等交通関係機関の業務管理が適切に行われることが不可欠である。
 このため、第6次交通安全基本計画(8年度〜12年度)に基づき、人命尊重の理念を基本に交通事故防止対策を中心として、具体的施策を推進するとともに、気象資料の収集の強化、適時・適切な予報・警報等の提供、救難体制の整備や被害者の救済対策などに取組む。
 また、阪神・淡路大震災等の大規模災害の経験等から、鉄道・港湾・空港等の耐震性の強化等による災害に強い交通システムの構築、情報伝達体制の整備、緊急・代替輸送の確保等の対策に取組む。


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